ショートショート#14「お化け屋敷で働く男」
男はお化け屋敷で働いていた。
ミイラ男の着ぐるみを着て、お化け屋敷の中を歩いているお客さんを驚かせることが仕事だ。
お化け屋敷の中は基本暗くてひんやりしているので、突然大声を出して現れると大抵の人は驚く。
中には意地悪なお客さんももちろんいて、全然驚かないどころかミイラ男の着ぐるみを脱がそうとしてくる人もいるが、それはそれで楽しかったりする。
男は毎日楽しくミイラ男として、お化け屋敷の中に入ってくるお客さんを驚かせて、もてなしていた。
しかしながら、そのお化け屋敷の評判はすこぶる悪かった。
口コミのランキングサイトで最低の評価がつけれていたのだ。
このお化け屋敷自体が昔からのオーソドックスなものだったので、もっと工夫して作り込んだ仕掛けを用意しなければならない、ということなのかもしれない、、、と経営者陣は考えた。
お化けの数を増やすことから始まって、井戸から貞子が出てきたり、壁から突然無数の手が出てきたり、出口を出る直前でドライアイスが噴射してきたりとこれでもかと最新の仕掛けを施してお化け屋敷はリニューアルされた。
ミイラ男もこれまで通り、お客さんが入ってきたら突然現れては驚かしていた。
自分が出てくるとお客さんは悲鳴を上げて逃げていった。
ただ壁の隙間から出てきただけなのだが、みんなものすごく怖がってくれたので、男は(ミイラ男としての)やりがいを感じていた。
新しく作った仕掛けもすこぶる好調で貞子が井戸から出てくると悲鳴が上がり、壁から無数の手が出てくる仕掛けでも悲鳴が上がり、最後のドライアイス噴射では泣き叫ぶ人さえいた。
みんな大げさだな、全部作り物なのに、とミイラ男は思った。
このお化け屋敷はリニューアルしたことにより評判が良くなり連日大盛況だった。雑誌やニュースに取り上げられるほどになっていた。
口コミサイトのランキングでも1位をとっているはず、、、そう思っていたが、口コミサイトの評価は以前にも増して散々だった。
連日大盛況なのにもかかわらず、評価は最低、、、
わけがわからなかった。
どうして?
理由を探すべく経営者陣はコメント欄を読んでみることにした。
コメント①「壁から無数の手が出てくる仕掛けで1本だけ2メートル近くある腕があったんですけど本物ですか?」
コメント②「貞子の後頭部にもう一つ顔があったんですけど見間違いでしょうか?」
コメント③「ミイラ男が背中に血だらけの女をおんぶしていて怖かったです」
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