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ある戦いの話
戦いは長く続かなかった。
圧倒的な粘り強さのおかげで私の勝利に終わった。今思えば戦っていると思っていたのは私だけで向こうは何も気にせず自由に生きていただけなのかもしれない。
それは半年前のこと。
私はいつも通り、勤務している飲食店に出勤した。
私の仕事はお店の掃除から始まる。
トイレ掃除、掃除機、テーブルの水拭き等一通りの仕事をルーティン化している。
私の敵というのは、カウンターの窓側に居住している蜘蛛だ。
でも目には見えない。一度も姿を見たことはない。
いつもその存在を感じさせるのは蜘蛛の糸。
テーブルをアルコールスプレーをかけて水拭きをして、蜘蛛の巣を掃除。
土日以外の平日は基本的に出勤しているので週5回私が掃除しているのだ。
来る日も来る日も蜘蛛の巣は新しく張り直されていて またか。とうんざりして蜘蛛の巣を掃除する。
そんなこんなで半年が過ぎようとしていた時、呆気なく決着はついてしまったのだ。
10月も終わり11月を迎え出勤していつも通り掃除をした時、そこにいつもある糸がなかった。
最初は特に気にすることもなく明日にはまた出来てるかも 程度にしか思わなかったが
次の日もまた次の日ももう蜘蛛の巣が出来ることはなかった。
冬の気配を感じて、引っ越して行ったのだろうか。それとも寒さに負けて息絶えてしまったのか。
あんなに敵対視し、残酷にも家を壊していたのに、蜘蛛の糸が、なくなってしまったあのカウンター席が少し寂しく感じた。
見たこともない蜘蛛を想像して今日もまた窓越しに秋空を見る。
この話はノンフィクションです。
ずっと蜘蛛の糸の話を書きたくて書いていたら短編小説のようになりました。
ある朝の一コマが平凡でなんだか儚くて。
何事もない日常も物語のようだななんて思ったのでした。
クワガタが活発に動く時間になりましたので私の1日が終わります。
ではでは、また。
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