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タンゴは盆踊りでありソーラン節である

書き手 Haruna

アルゼンチンタンゴ=官能的・情熱的ってわけじゃないのです。サラリーマンが仕事帰りにフラっと出かけて友達と飲みながら踊る、クラブっぽい要素もあるし、公園でスニーカーとジーンズで踊ることも可能です。今回は、タンゴを知らない人が考える「タンゴ」のイメージをどこまで転換できるか、挑戦します。



「明日のタンゴ」を始めた頃に考えていたことの一つに、アルゼンチンタンゴに対する世間のイメージを覆したい、というのがあります。そもそもアルゼンチンタンゴって何?っていう人の方が多いので、「アルゼンチンのブエノスアイレス発祥のペアダンスです。男女が抱き合って、女性はヒールを履いて踊ります」くらいの説明をいつもしています。実際に記事でもタンゴを趣味にするとはどういうことか、私なりに解説もしてみました。

先日友人にタンゴ文化について説明していたとき、

私「タンゴのダンスパーティをミロンガって呼ぶんだけど、例えば仕事終わって友達と軽く食事に行って、、、」

友人「その後SEXする感じか!」

私「全然違う。カラオケに行ったりダーツに行ったりする感じ。音楽がかかっていて踊れるから、クラブが一番近い。男女で出かける人もいるけど、同性同士とかグループの方が多いかも。」

友人「え?そうなの?想像してたのと違う!」

私「お酒飲むし、DJもいるし、音楽がタンゴ縛りなだけで、やってることはクラブと同じだよ」

草の根ですが、すこーしずつ、世間の「タンゴ」に対するイメージを転換させている途中です。


タンゴを踊る人が増えてほしいと常々思っているので、友人に薦めることもあります。私がタンゴを踊っていると話すと、「おー、すごいねー」「見てみたいー」と反応してくれるのに、誘ってみると大体の返事はこんな感じ。

・色気のない自分には無理だ

・体型に自信がないから露出の多いドレスを着るのは嫌だ

・運動は苦手

・異性と触れ合ったり抱き合うのは無理

上の3つについては、「ステージタンゴ」と「サロンタンゴ」の違いを説明することで解決すると思います。


「ダンス」という言葉で思い浮かべるのは、バレエとかヒップホップとか、AKBとかジャニーズとか、、、身体を鍛え抜いたダンサーや容姿に恵まれたアイドル達が華やかな舞台で魅せるものかと思います。タンゴにもステージタンゴというものがあり、ブエノスアイレスの路上やバーで観光客向けにパフォーマンスがあります。


それに対し、「サロンタンゴ」というのはミロンガと呼ばれるダンスパーティに出かけ、友人同士または初対面の人と即興で踊るものです。人に見せるための踊りではなく、自分と踊る相手が楽しむためのダンスです。本来はサロンタンゴが元祖で、ステージタンゴはその商業活用型と考えておけばよいと思います。(というか「サロンタンゴ」という呼び名は元来存在しなかったはずですが、)私が薦めたいのはこのサロンタンゴの方。踊りと言っても前述した華やかな舞台というものではなく、日本の盆踊りとかソーラン節に近いのです(ソーラン節は近年かなりステージ化している気はしますが)。人が集まってお酒を飲んで、音楽に合わせて身体を動かして、なんとなく楽しくなる、アレです。振り付けを作ったり演技をするものではなくて、人間2人が身体で会話しながら即興で踊るだけです。なので、色気がある人もいればない人もいるし、好きな服を着ておしゃれを楽しめばいいし、ステップの基本は「歩く」ことなので特別な身体能力も不要です。文字通り「老若男女」が楽しんでいます。


女性がタンゴを踊るというと周りは「素敵」「おしゃれ」と反応するのに、男性の場合だと変な目で見られることもあるようで、おそらく頭の中にあるバレエとかジャニーズ的な煌びやかなダンスと目の前の中年男性がリンクしないからだと思います。


繰り返します。タンゴは盆踊りでありソーラン節なのです。厳しい鍛錬の末に出来上がった芸術の結晶を観客に見せるというより、万人の心にある音楽と踊りを楽しむ欲求を満たすものです。おっちゃんもおばちゃんも踊ります。(盆踊りに詳しいわけではないので過言かもしれないけど、「クラブ」と言ったらそれはそれで敬遠する人、いるでしょ?)


ブダペストのショッピングモールで一般の人(遊びでダンスを楽しむ人)が盆おど・・・タンゴを楽しんでいる動画があったのでぜひこちらを見てください。ベテランの人も完全な初心者も混ざってなんだかとっても楽しそう。フラッシュモブというタイトルになっていますが、3:32以降はみんな即興で踊っています。



最後に一つ残った、「タンゴを踊らない理由」

・異性と触れ合ったり抱き合うのは無理

もうこれについては「人と抱き合うのって理屈抜きに気持ち良いものだよ」としか言いようがないというか。まぁ騙されたと思ってやってみ、フリーハグとかあるやん、オキシトシンが分泌されて幸福度が上がり、損はないです。

「無理」の内容が「恥ずかしい」であれば、大丈夫、下心があるのも人間です、自分自身を受け入れて。私の友人達も、誰の胸が大きいとか、影では下世話なな会話もします。相手を不快にさせる言動さえしなければ問題ないのです。とりあえず両腕を広げて抱きあってみると、無条件に心地よいことがわかります。タンゴにハマると、数日踊らないだけで人肌恋しくなりますよ。



以上、私なりに「タンゴを踊らない理由」を撲滅したつもりです。

・色気不要、ある人は出せばいいし、ありのままの自分でいい

・体型は関係ない、好きな服を着ればいい

・特別な筋力や身体能力は不要、「歩く」ことを極めるのがタンゴ

・抱き合えば無条件で幸せになれる


私自身はサロンタンゴもステージタンゴも大好きで、レッスンに練習にガツガツと打ち込んでいますが、楽しみ方は人それぞれ。100歳まで続けられるものを今から見つけておきませんか。




タンゴのイメージ、少しは覆せたかな、、、。「タンゴとは」論は個々にこだわりがあるので私のようなヒヨッ子が文章を書くと不快に思う人もいるかもしれないけど、結局小さなコミュニティの中にいると外界の感覚とどんどんずれていくから、多少極論でも発信していくことで世界と繋がれたらいいなぁと思う今日この頃。

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