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何が芽生えたのか

 私の大好きな映画作品の一つ「美女と野獣」。その中に雪の中でベルと野獣が遊び、次第に心惹かれていくシーンがあります。
 その際、二人が歌う挿入歌はこちら。

英語版“Something There”

日本語版「愛の芽生え」


 Spotifyのリンクを貼っているので、歌詞もあわせてぜひお聴きください。
 雪山の中、狼の集団に襲われそうになったベルを身を挺して守った野獣。ベルは野獣の優しさや心の美しさに触れていきます。野獣も、自分の姿に恐れおののいて離れていった人たちと違うベルに惹かれていきます。そんな二人の気持ちの距離感を表す歌なのです。

 二つの曲を聴き比べて私は思ってしまいました。

「愛」って言ってしまってる!!

 英語版“Something There”のタイトルを直訳すると「何かがそこにある」と二人の間の感情を「何か」とぼやかしているのに日本語では「愛の芽生え」と言ってしまっている!! 風情がないじゃないか……とちょっと思いました。

 しかし、「愛の芽生え」を歌詞に注目して聴くと「愛」とは一回も言っていないのですね。むしろ

(ベル)二人でいると 何かが彼の中に見える
(コグスワース・ルミエール・ポット夫人)何かが芽生えているから
(コグスワース)今までになかった何かが芽生えているから
(チップ)何が?
(ポット夫人)何かが芽生えているのよ

 しきりに「何かが芽生えている」と繰り返しています。ベルをはじめ、彼らがそれが何なのかわはまだ断定できないけれど「芽生え」と表現しているあたり、前向きなものであると感じとれます。

 以上のことから、「愛の芽生え」とは俯瞰的に、第三者的に、未来の視点から「あの時に生まれていた感情は愛であった」という意味でつけられたタイトルなのかと感じました。

 ちなみに余談ですが、美女と野獣の舞台であるフランスの「愛の芽生え」は“Je ne sais pas”と言い、直訳すると「私は知らない」という意味らしいです。初めて芽生えた感情ということなのでしょうか。これもこれで素敵ですね。

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