占星術で見る『ザ・バットマン』

映画を題材にして占星術を考えるシリーズです。
会社のことを占星術的に見る場合、会社ができた日時のホロスコープを作ることになるのですが、それだけではなく会社の設立者の図も参考になると考えられます。やはりその組織のトップが持つ性質は、組織全体に影響を及ぼします。
それについては映画も同じで、全体を統括する監督のホロスコープの影響は大きいのです。ハリウッド映画のエンドロールはバカみたいに映画に関わった大勢のスタッフの名前が流れてきますが、やはりもっとも重要なのは監督のチャートだろうと思います。ちなみにエンドロールが長くなりすぎるのは、組合か何かの規定があり、制作に関わった人の名前の表記を省略してはいけないからということです。

最近『ザ・バットマン』という映画を配信で見ました。
監督のマット・リーブスという人は、リブートされていた『猿の惑星』シリーズを監督した人。僕としては、CGの猿が人間のように知性を持って行動するというのは、人間を猿に投影しただけで、猿自体を描いている訳でもなく、何が面白いのかよくわからないのでちゃんとは見てはいません。ただこのシリーズは興行成績も良かったらしく、監督の手腕も評価され、有名シリーズの大作であるバットマン映画の監督にマット・リーブスが抜擢されたようです。

マット・リーヴス監督のチャート。時間は分かりません。
映画監督とか映画が好きな人の図では、魚座や海王星の影響が強いことが多いように思います。この人の場合も、魚座に金星と土星があり、それらに蠍座の海王星がトラインということで、映画に関してはこれらの天体の影響が出やすいと思います。魚座や海王星は幻想的なイメージを作り出すことになり、映画というメディアはそういうものを表現するのに適しています。ホラーやファンタジー、SFなどは映画でも人気のジャンルであり、魚座と海王星の働きの吐口になりやすいものです。ヴィジュアル的な表現に強いのは、金星と天王星のアスペクトや乙女座と考えられます。天王星が支配する水瓶座の古い支配性は土星であり、天王星はトランスサタニアンとしては土星と対応します。土星は物の輪郭をはっきりさせる作用があって、例えば絵やイラストを描くにしても、細かいところまではっきり線を引かないといけません。いい加減に誤魔化すことができないのです。
土星の作用としては、形に落とし込むことですが、天王星は形態に新しい視点を持ち込んで修正していきます。土星にも天王星にも厳密さを求めるという共通の性質がありますが、土星は土の元素として物理的形態に拘るのに対して、天王星は風の元素として物の形の周囲に漂う空気感や印象によりフォーカスします。であるので、例えば彫刻を作るのはより物質性が高いという意味で土星と金星のアスペクトが適していますが、ヴィジュアル表現においては、それを見る時に得られる効果を重視するという点で、天王星の方が活用させやすいのかもしれません。これは形態化させる土星に対して、形から印象に広がっていくという土星とは反対の天王星の作用に着目しています。そもそも最近では絵を描くときにデジタル機器が使われることが多いですし、天王星力が関わってくることになります。
乙女座の1度から10度あたりには漫画家やイラストレーターが多いと言われています。乙女座は土のサインであり、細部まで描き込む能力を示しています。乙女座とオポジションの魚座が映像表現に適しているのは、乙女座は固定された絵やイラストであるのに対して、水のサインの魚座はその絵が流動して映像になるということになります。水の元素は感情との関わりが深いし、情感を刺激するメディアとしては、絵画よりも物語性を表現しやすい映画が好まれるというのもあるでしょう。土の元素は動きが少ないですが、それに比べて水の元素は動きや変化に反応しやすいのです。
『ザ・バットマン』では腐敗した街の改革が大きなテーマになっていました。マット・リーヴス監督のホロスコープにおける、乙女座の天王星と冥王星のコンジャンクションは改革による大掃除のイメージを反映しています。秘密クラブのようなところで虐げられている女性たちは、魚座の金星、キロン、土星のコンジャンクションと結び付けられます。その中の一人はキャットウーマンというキャラクターになりますが、魚座は動物と関係が深いサインです。これらの天体に蠍座の海王星がトラインですが、全体に映画のトーンは暗く怪しげで、水の元素の質感が強く表現されています。
太陽と火星が牡牛座でコンジャンクションになっています。サビアンシンボルでは、牡牛座の6度から10度は生まれ持った資産や遺伝的素質の格差に気づくことがテーマであると考えられています。この映画でも、格差がテロの要因になっていました。戦いの火星はフィジカルな牡牛座ということもあって、今回のバットマンは拳で戦う風であるというか、無敵のスーパーヒーローではなくて、殴られるとダメージを受けるし、殴った自分の拳も痛そうで、等身大の身体で戦っている感じがあります。『ダークナイト』シリーズのクリストファー・ノーラン監督のホロスコープでは、太陽と火星が獅子座のコンジャンクションであり、この牡牛座の天体とはスクエアの関係にあります。ノーラン監督のバットマンは獅子座らしく派手さがあって、爆発力もあります。両者の映画で描かれているバットマンの雰囲気を比較すると、牡牛座と獅子座の違いを体感することができるでしょう。いずれも太陽と火星はコンジャンクションであって、戦闘や暴力に関することが自己表現をするときに浮上してくるテーマになります。

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