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Astronauts Guitarsという実験①

ギター工房は作れる


2007年にRetroTonePickupsを始めて、2013年にAstronauts Guitarsの工房を作った。毎年自分で確定申告を行なっている。

レトロトーンはHOSCOの2019年の海外向けのカタログに丸々1面使ってもらえたし、アストロノーツは2018年にはリットーミュージックのムック本に登場し、工房を武蔵新城から二子新地に引っ越した。2月には店舗をオープンする予定で、なにかと大変だけど、まだしばらくギターの製作を続けていける見通しだ。

最初の1本目

僕は最初のジャズマスターを2011年の後半から作り始めた。翌2012年4月に完成したバーガンディ・ミスト・メタリックのジャズマスターは、5月19日から渋谷のスタジオ・ファミリアでレンタル試奏を行い、12月24日に販売開始しして2013年の春に売れた。買ってくれたのはSZKNのボーカルギター川元くんで、彼はそのままフジロックのルーキーまでこのギターを連れて行ってくれた。

Astronauts Guitarsのロゴはレトロトーンのお客さんだったデザイナーの加藤積さんがデザインしてくれたものだ。ロゴのデザインについてはまた別の場で書こうと思う。
ファミリアでのレンタル試奏は今一緒にアストロノーツを一緒にやってるLuckySound山本さん(以下ラッキーさん)がバイトをしていたからだ。

ジャズマスターの販売開始を告知したTwitterのリツイートは7件、ふぁぼ(今の「いいね」)は2件。たったこれだけだった。

このギターの後、僕は抹茶のエスクワイヤーを一本作り、ラッキーさんは黒のエスクワイヤーをアストロノーツ名義で三本作ってくれた。
抹茶のエスクワイヤーは賃貸マンションのベランダに園芸用のビニールハウスを建てて塗装をした。このビニールハウスは紫外線による劣化と強風の影響でボロボロになった。黒のエスクワイヤーはラッキーさんが実家のベランダで塗装したらしい。ピックアップやパーツは共有していたけれど、それぞれ自宅での作業だった。

Astronauts Guitarsが本格的に動き出したのは2013年の5月。僕が自宅の近くに工房用の物件を契約してからだ。工房作りについてはアストロノーツのブログに書いたが、沢山の人が手伝ってくれた。

工房作りは大変だったけれど、おかげで僕はベランダの倒壊しかけたビニールハウスを片付けられたし、ラッキーさんは普段のリペア仕事を実家から工房に移すことができた。相変わらずライブハウスでギターを預かってくることが多そうだったが、そのうち持ち込み相談や郵送も増えた。

シェア工房という実験

ギター製作にはなにかと道具が必要だが、加工時に発生する粉塵や塗装時に発生するシンナー臭、ひたすら増え続ける治具、作ったはいいが売るのははばかられる試作品、修理完了後、不幸にもずっと引き取りに来てもらえないギターたちといった、ギター作りや修理をとりまくリアルな状況を加味すると、一番必要な道具というのはギター製作専用の場所、つまり工房そのものだったりする。(次に必要なのは何でも格安で処分してくれる産廃業者)

色々な道具はギター製作の個々の工程では必須であるものの、朝から晩までずっと使うものではないため、大型工具や塗装ブースは複数の職人でシェア可能だ。

そんな工房をシェアするというアイディアを、確か2010年か11年頃にWaltz Guitarsの柳さんとラッキーさんと3人で相談していた気がする。ただ僕は後述するリハスタの事業計画の話を考えていたり、僕らと柳さんが住んでいる場所が少し離れてしていたこともあり、実現には至らずお蔵入りになった。ほどなく柳さんは別の場所に工房を作り、僕らも少し経って武蔵新城の物件に出会う。

柳さんとはその後、ハンドクラフトギターフェスで2年間ブースをシェアさせてもらった。この時の話もまた機会があれば書いてみたい。


貯蓄がゼロになったらやめる

工房を借りるにあたって家族の心配が無いわけではなかった。
我が家には長女が生まれたばっかりだったし、2011年には地震もあった。

実はこれ以前に僕はリハーサルスタジオの経営をやろうと思って、数千万の借金をする事業計画を作って実家の両親にかなり心配をかけていた。工房を作ることは実家には言わなかったが、もちろん妻は心配した。

・レトロトーンの売上で工房は維持できる。
・生活費とは口座は別にして、お金の状況は把握できるようにする。
・アストロノーツ / レトロトーン用の貯蓄がゼロになったら工房はたたむ。

という条件が工房を契約する条件だった。
ただ、実はちょっとしたカラクリもあり、確定申告で返ってくる税金はアストロノーツ / レトロトーン用の口座に振り込んでもらうようにしていた。つまり、赤字だった場合でも口座上は赤字幅が少し軽減されて見えるわけだ。

口座を分けて管理するようになって、自分が生活にいくら使っていて、趣味にいくら使っているのかがはっきりと分かるようになった。自分の趣味のうちお金のかかるものは9割方ギター製作に関するものだったので、それらは全てアストロノーツ / レトロトーン口座から引かれるようになった。

ちなみに、実際の貯蓄状況は実は2019年1月現在の今が一番辛い。
工房の引っ越しのおかげで、家賃が新旧両物件で発生しているからだ。この2月で武蔵新城の物件を引き払うので、ギリギリ底を付かずセーフという状況ではあるが、2月に店舗の営業がスタートするので、そこでさてどうなるか。

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