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BOSS OD-2でディスクリートなOD-1を作る

今回はいつもと違う感じのコンセプトです。トランスペアレント系に飽きてきたということもあり、OD-2でOD-1のサウンドが出せるか?というチャレンジをしてみました。

回路図を見るとわかりますが、OD-2はオペアンプを使っていないディスクリートな回路を採用しています。OD-1を求めるならSD-1を改造した方が早いので、この企画は「ディスクリート回路でOD-1ぽさが出るか?」というただの好奇心を満たすためのものです。

これまでに比べて変更箇所多めですが、ほとんどがパーツの取り外しやジャンパーだったりします。


OD-2の回路

OD-1リスペクト

正直、全部理解できたわけではありませんが、回路図を追っていて強く感じるのはOD-1へのリスペクトです。回路図上のトレースではなく、おそらく特定のOD-1を計測して定数を吟味し、同じ状態をどうやってディスクリート回路で安定的に再現するかを考えて作られていそうです。

4種類の電圧

OD-2は9Vの電源から8.2V、4.1V、5.6V、2.6Vの4種類の電圧を作って回路を動作させています。OD-1が9Vと4.5Vを基準に動作していることを考えると、ACアダプターの利用を前提としつつ、OD-1の電圧が下がった状態を作り出そうとしているようにも思えます。

2種類のモード

ターボ「OFFモード」と「ONモード」が切り替えられます。
OFFモードはダイオードを使ってクリップさせており、8.2Vと4.1Vで動作していることを除けばとてもシンプルな回路です。
ONモードはダイオードを使わず多段で増幅している凝った回路になっており、EQもかなりいじっています。電圧も5.6Vと2.6Vを使った珍しいもので、ここはかなりこだわった設計になっているように思います。

音が小さい

色々やりすぎていて全体的に音が小さいのがユーザーの不満につながっていると思います。

参考にしたOD-1はET-23D(デュアルオペアンプ期)

改造編

モード共通

ACAをPSA対応に変更する(R2:Jump、D1:Jump)

PSAタイプのACアダプターが使えるように回路を変更します。2つの部品を取り外してジャンパー線に置き換えるだけの簡単な改造になります。ただしこの状態で12Vのアダプターとかを使うとペダルが壊れますので気をつけて。

電圧を9V基準に(Q1:Jump、R8:Remove、C7:Remove、Q6:Jump、R17:Remove、C19:Remove、D6:Remove)

設計者のこだわりの詰まった4種類の電圧を作るのをやめて、OD-1同様の9Vと4.5Vのシンプルな電圧に統一します。
Q1とQ6のジャンパーは写真の2箇所をつなぐ形になります。

Q1とQ6のジャンパーは間違えないように気をつけます

入力バッファ回路の変更(R1:1k、C1:0.047UF、R10:470k、C31:0.0047UF、C33:0.0047UF)

OD-1に倣って定数を変更します。R1を10kから1kに変えることで音量が少し改善します。
C1(0.022UFから0.047UFに変更)、R10(1Mから470kに変更)の変更は入力インピーダンスに少し影響します。この変更は私の所有するOD-1に合わせたおまじないみたいなもので、そのままでも大きな影響はありません。
C31とC33はR46(100k)とR41(100k)との組み合わせでカットオフ周波数338Hzのハイパスフィルターを形成します。ここで低域がバッサリ切られますので、OD-1のサウンドを目指す上ではとても重要な箇所です。ペダルをオンにしたら低域がガッツリ減ることになるので、OD-1のサウンドを目指すのでなければC31とC33はもっと大きな値を選択した方がよいと思います。

ボリューム回路の変更(R62:Jump、C35:0.33UF)

R62(47k)の抵抗をジャンパー線に変更することで音量が少し改善します。この抵抗はメインの基盤とは別の基盤(4つのポットがくっついている基盤)の方にありますので気をつけて。
C35周辺はバッファ回路です。値を大きくして低域まで通すようにしています。

なんども開け閉めすると基盤同士を繋いでいるケーブルがちぎれたりして大変。

ターボ「ONモード」

OD-1のサウンドを目指します。参考にしたOD-1はET-23D、1979年頃のデュアルオペアンプ期の個体です。

増幅回路の変更1(R38:2.2k、C28:Jump)

1段目の増幅回路です。R38を小さくすると音量が大きくなります。今回4.7kから2.2kに変更しています。またR38とC25はカットオフ周波数723Hzのローカットになります。
C28は発振防止のコンデンサですが、OD-1に無い要素は今回極力外してしまいます。

EQ変更(C29:Jump、C23:Jump、R37:Remove、C24:Remove、R33:Remove)

ONモードのややこしいEQ部分を全部すっ飛ばすという変更です。設計者のこだわりを台無しにしている自覚はありますが、OD-1を目指すために必要な犠牲です。

増幅回路の変更2(R30:3.3k、R35:180k、C22:1000pF、R39:3.3k)

2段目の増幅回路です。R30を4.7kから3.3kにしてここでも少し音量を稼いでいます。C21との組み合わせで321Hzのローカットになりますが1段目の増幅回路で723Hz以下をカットしているので大きな効果はないと思います。
R35とC22はハイカットです。884Hzで切るようにしています。
R39とR32は後段に送る音量を決める重要な抵抗です。ここではR39だけを変更して少し音量を減らす方向にバランスを取っています。R39を増やせば音量が下がり、減らせば音量が上がります。

歪みのニュアンス調整(RT1)

もともとは5.6Vの電圧から2.6Vのバイアス電圧を作るためのトリマーポットでしたが、9Vにしたのでジャンパーで飛ばしてしまっても良い部分です。ただ、ここをプラスドライバーで微調整することで歪みのニュアンスが若干変わりますので自分の耳を頼りに追い込んでいきます。

このペダルではトーンはMAXが基本設定

ターボ「OFFモード」

こちらもOD-1を目指してしまうと、ターボオンオフの面白さがなくなってしまいますので、ゲルマダイオードを使ってOD-1と似て非なるサウンドを作ってみました。

増幅回路の変更(R47:470、C30:0.47UF)

R47を1kから470Ωに変更することで音量を上げています。R47とC30で作るローカットの周波数は720Hzになります。
ゲルマダイオードは結構音量を下げてしまうので増幅回路で少し大きめにブーストしています。

クリッピング回路の変更(D9,11:1N60、D10:1N456A、C37:Remove)

回路がシンプルなので、ダイオードに頼るところは大きいです。D9とD11はゲルマダイオード1N60を使います。D10はいつもの1N456Aです。
C37は発振防止のコンデンサですが、取り外してしまいます。

音量とハイの調整(R48:1k、C32:0.15UF)

R48を10kから1kに変更することで音量が少し大きくなります。
R48とC32で1kHzのハイカットを形成しています。耳に痛い帯域を削りつつ、OD-1よりカラッとしたニュアンスになっています。

回路図に鉛筆と消しゴムで地道にメモしながら改造していく

完成

OD-1はトーン回路がないため、同じようなニュアンスを出すためにトーンはMAXが基本です。
OD-1を目指したターボONモードは、ツマミのあらゆる位置でOD-1と同じというわけにはいきませんが、かなり肉薄した、OD-1の個体差の範囲ぐらいに収まるサウンドになったと思います。ディスクリートで作ったOD-1と呼べる代物になったかと。

OFFモードも基本的に低域をバッサリ切ったOD-1的なEQをベースにしているので、ゲルマニウムダイオードの歪みとよくマッチしてOD-1の亜種的なサウンドに仕上がったと思います。

作ってみて思ったのは、OD-2は音量問題だけ解決すれば普通に良いドライブペダルとして復権できるんじゃないですかね、ということ。

あとはOD-1が欲しいならSD-1を改造しなさい。ってことですね。なかなか大変なので。

ようやく完成!

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