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[Episode.32] 2nd CD 「ORIENTAL FUNK」

「SUBJECT RECORDSの次のリリースは、ハードテクノ/ハードミニマルにフォーカスした作品や!!」と決意した僕は、新しいCDリリースの企画構想に入った。

マリオさんとdj yukiと僕の3人で曲を出し合って、3人でひとつ名義にすることとし、そのユニット名は「COSMIC CUBE」とした。しかし、マリオさんから「COSMIC」というワードがハードミニマルな作風に合っていないとの意見があり、別の名義を考案することとなった。

ミニマル(反復)に合ったワードを色々と考えている中で、ふと「螺旋階段」が僕の頭の中に浮かんだ。

グルグルと同じ位置を回りながらも上昇していく螺旋階段というのが、自分たちのサウンドに合っているのではないかということで、「SPIRAL」というワードを採用して「SPIRAL CUBE」というユニット名に決定した。

次に、アルバムタイトルは分かりやすさを重視して「ORIENTAL FUNK」とした。

正直、自分たちの作風がファンキーかと言うとそうでもないのだが、当時は「ファンキー」というワードがかなりキャッチーに使われていたため「FUNK」というワードを採用した。「ORIENTAL」は「FUNK」と合わせた時の音感の良さから採用したため、こちらもあまり強いこだわりは無かった。

当時のノートに僕が書き留めた「ORIENTAL FUNK」の販促文には、このようなことが書かれていた。

『SUBJECT RECORDSが誇るハードミニマルプロジェクト ”SPIRAL CUBE” の1st CDアルバム。メンバーは神戸在住のAlteredg Exp-Art Systemsとdj yuki、そして3つの海外レーベル(ANALOG、ZET、SHEEP)と契約を交わした京都在住のMidrangeをフィーチャー。100曲に及ぶ完全フロア対応のハードエッジトラックから13曲をセレクト。2~3曲ごとに "beat-break" と題したショートピース的なロービートも収録。関西から世界に誇るミニマルプロジェクトが待望のデビュー!!』

また、このノートの別のページには「野獣派DJによるハードエッジなミニマルキューブがあなたのサイクルを変化させる!!」というキーフレーズも書かれていた。

※このプロジェクトでは曲(トラック)のことを「キューブ」と称していた。

このキーフレーズが、CDのジャケット(表面)のタイトル部分の背景にうっすらと漢字で書かれていることに気づいている方は少ないだろう。。。
「野獣派選曲人創造強烈刃反復踊音 貴方此盤体感貴方周期変化!!」

ちなみに、このCDジャケットの表面は縦に4分割されて、左からdj yuki、僕、作品タイトル、マリオさんが写っており、ジャケット裏面は新開地のメトロ神戸の古本街で古本を立ち読みする3人を撮影した写真を加工している。

そして裏面には、またキーフレーズが英語で記されているのである。
「fauviste-DJ's hardedge minimal-cube in this CD changes your cycle!!」

【写真:ORIENTAL FUNKジャケットメモ】

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ジャケットは全てvinlworks(vinylman、富ちゃん、7072ちゃん)が手掛け、CDプレスのためのマスターDAT作成は、おなじみQKレコード縄文人スタジオで行われ、QKレコードを通じてCDのプレスを発注した。

【写真:ORIENTAL FUNKのジャケット】

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これまで「雑多なサウンド」や「色モノ」のイメージがあったSUBJECT RECORDSが初めてチャレンジした、特定のジャンル(ハードミニマル)に焦点を定めたこの作品は、そのコンセプトが明確であったこともあり、プロモーションも進めやすく本格的にテクノシーンへ参入した実感を得た。

前作のCDと同様に、Oui Distributionの山崎さんの協力を得て、全国のCDショップに流通を行っていただけることとなり、1998年1月26日に一斉リリースされた。

また、様々な雑誌にプロモCDを送りまくった結果、以下の雑誌で「ORIENTAL FUNK」について取り上げていただいた。

「LOUD(1998年2月号、3月号)」
「GROOVE(1998年2月号、3月号)」
「キーボードスペシャル(1998年3月号)」
「Cazi Cazi(1998年3月号)」
「ぴあ 関西版(1998年2月16日号)」

「LOUD」の1998年3月号にいたっては、ありがたいことに電話での取材を受けた上でブチ抜き1ページでインタビューを掲載していただいた。

【写真:各種雑誌に掲載された記事のコレクション】

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このCDで儲かったとまではいかなかったが、製作費をきちんとカバーできるほどの売上が出たことで、SUBJECT RECORDSのレーベルを運営していくことに自信が湧いてきた。


最後に、収録曲についても少し触れておこう。

このCDの1曲目(cycle 1)に収録されている「SPIRAL THESE(スパイラルテーゼ)」は、『時代は廻る 螺旋階段のように 欲望と充足のポジティブフィードバックによって』というリリックをChiharuさんという方に朗読いただき、その声を深いディレイで重ねに重ねて30秒ほどカオスな状態を作り上げた瞬間に、いきなり2曲目の「REPLUGED」を投入するというオープニングとなっており、個人的にはこのアルバムの一番の見せ場であると思っている。(決して他の曲に見せ場が無いというわけではないが・・・。)

3曲目の「Exel(rmx)」は、SUBJECT RECORDSの1st LP「Love Sonic Strategy 4」に収録された「Exel」のセルフリミックスであり、The Advent の「It One Jah (Steve Bicknell re-edit) 」みたいなサウンド感を出してみたく、真似事のように作ってみた。

【The Advent - It One Jah (Steve Bicknell re-edit)】
https://www.youtube.com/watch?v=dHHycbgo4fg

5曲目の「FAUVIZM」は僕が制作した曲であり、このアルバムのために制作した曲の中では一番気に入っており、GYROTRAXから(Episode.35参照)のASTROID名義のデビューEPにもこの曲を収録させてもらった。(GYROTRAXからのリリースにあたって、曲のタイトルは「Fauvisme」に変更)

【Astroid ‎– Strong Style EP】
https://www.discogs.com/Astroid-Strong-Style-EP/release/95374

同じく、15曲目の「PATCHWORK」もマリオさんが制作した曲であるが、この曲も後にGYROTRAXからリリースされることになる。

【Mario Tanaka ‎– Private Territory EP】
https://www.discogs.com/Mario-Tanaka-Private-Territory-EP/release/63744

10曲目の「PURGWAY」は、このアルバムの中ではちょっと異質なお気楽ハウスっぽいサウンドであり、今更言っても仕方が無いのであるが、この曲ではなくもっとハードミニマルな別の曲を入れておけば良かったかな~、と少しだけ後悔している・・・。

最後の17曲目の「STEADY OF LIFE」は僕が制作した曲であり、この頃にめちゃくちゃ大好きだったJeff Millsの「Detached(「Mix-Up Vol.2」のSegment1の終盤に収録)」みたいな曲を真似事っぽく作ってみた。

【Jeff Mills - Detached】
https://www.youtube.com/watch?v=FIbj5zJWq6w

ハードサウンドを基調にしつつも「あ~、何かこれで終わりだな~」という寂しげな感じを出してみた。

【写真:収録曲リスト】

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