[Episode.33] 異種ジャンル混合イベント「COCK TAIL」

Love❤Kitchenのvinylmanはサウンド制作は行わないが、DJおよびアートワーク面で欠かせない存在であった。

そして、もうひとつ重要な役割としてイベントオーガナイザーも担っていた。

vinylmanの抜群のコミュ力によって、神戸界隈のテクノ人脈はどんどんと拡がっていき、Love❤Kitchen主宰のイベントだけではなく、他で主宰されたイベントにも多く呼んでいただくことになった。

1996年にはvinylmanをオーガナイザーとした「CYBERLOVE」というテクノイベントを開始し、テクノのイベントスペースとしてお馴染みとなった元町ZONNEで隔月に近いペースで開催していた。

　1996/03/09 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE
　1996/05/11 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE
　1996/06/01 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE
　1996/08/10 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE
　1996/11/26 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE
　1996/12/27 『CYBERLOVE』 ＠元町ZONNE

【写真：CYBERLOVE 1回目の時のフライヤー】

また、1997年8月2日にAqua di Maya (JUNX)で開催された『RE-ALIVE』という大規模クラブイベントだったり（Episode.30参照）、1997年11月8日に大阪梅田のKARMAで開催されたファッションショー 『VITAMIN STYLE』にLove❤Kitchenとしてライブで出演させていただいたりと、自分たちのコミュニティに留まらず、vinylmanが開拓した新しい境地にどんどんと活動の幅を拡げていくこととなった。

また、SUBJECT RECORDSの盟友であるughさんやFranzさんの旧来の音楽仲間とも交流が深まっていくなど、神戸を中心にひとつの音楽シーンとまでは言わないが、コミュニティができあがりつつあった。

そのコミュニティはテクノやハウスに留まらず、ロックやジャズやブルースなども含め、様々なジャンルを奏でるバンド、ユニット、DJが揃っていた。

そうしたメンバーを一堂に会した「異種ジャンル混合イベント」をvinylmanは立ち上げる。

イベント名は「COCK TAIL（カクテル）」。お酒のカクテルのように、様々な音楽ジャンルが混ざって新しい何かを生み出すようなコンセプトでそのイベント名は名付けられた。（今思い起こしても素晴らしいネーミング！！）

主宰はvinylmanということもあり、僕自身はイベントの企画そのものにはほとんど携わっていないが、SUBJECT RECORDSもイベントのサポートとして関わることとなった。

1997年12月6日(土) 神戸三ノ宮のライブハウス「STAR CLUB」において、異種ジャンル混合イベント「COCK TAIL」は開催された。

出演者は、SUBJECT RECORDSに関わりのある方は少なく、初めてお会いする方が多かった。

【写真：COCK TAILのタイムテーブル（エヒノコックスは出演せず、Satanicpornoshopのライブに変更となった）】

『afro☆star』は、vinylmanを中心としたエレクトロニックミクスチャーロックバンドであり、この頃にはvinylman既に純テクノのサウンドから離れており、より刺激的なサウンドを次々に求めていた。

なお、SUBJECT RECORDSの2nd CD「ORIENTAL FUNK」の中でジングルのような位置づけで収録されたブレイクビーツサウンドは、クレジットはafro☆starとなっているが、実態は僕(Alteredg E.S.)が楽曲を制作した。
僕自身はafro☆starのメンバーでなかったが、なぜafro☆star名義で楽曲を作成したかは覚えていない・・・。

『ニンゲン飛来筒』は、SUBJECT RECORDSの1st CDにも参加いただいた「人間ロケット」である。読み方は「にんげんろけっと」で同じあるが、一時期このような表記にしていた。

『オリオン座』は、現在のNu NuLAX NuLANクルーに欠かせない存在である、日本初のJuke/Footworkバンドとして活躍中の『ORRORINZ（オロリンズ）』の当時のバンド名である。（2012年に改名ではなく「名義を増やす」という形でORRORINZとして活動を開始した。）

SUBJECT RECORDSからはであるLove❤Kitchenがライブとして参加し、DJではvinylmanがvanguard（当時vinylmanと意気投合していたヤタニさん）とのタッグDJで参加した。

お祭り的なイベントということもあり、Love❤Kitchenを知らないお客様も多く来てくださることを踏まえて、ベストなライブを披露しようと相当な気合いを入れていた。

ライブ機材もフルセットのハードウェアで臨もうと、総重量30kg近くの機材をカートやバッグに積んで、自宅から最寄り駅となるJR塩屋駅まで歩いて運んで行った。

これまでも何度かライブ機材を電車移動で運んだことはあったが、今回は恐らく史上最重量の機材セットであったためか、かなり体力的にキツかった・・・。

JR塩屋駅について電車に乗り込んだ瞬間、視界が変に歪み出し、目の前がサーーッと真っ白に・・・。

気分が悪くなって気を失いそうになったため、脂汗をかきながら次の停車駅であるJR須磨駅で電車を降り、ベンチでしばらく休憩を取った。

幸い大事に至らず、休憩した後は特に同じような症状に見舞われることは無かったが、これがちょっとしたトラウマとなり、この出来事以降は電車移動で機材を運搬する時には、機材は少な目にしていくことにした。

「COCK TAIL」のイベント自体は、当初の期待通り様々なジャンルの刺激的なサウンドが会場を大いに盛り上げることとなった。

しかし、このイベントが僕自身にとっては一つの大きな転機となったのである・・・。