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秋・冬にお薦め。 濃くて薄い占星術洋書3冊+α

古典の敷居が高いのに、英語でさらに…というダブルパンチですが、占星術を深掘りする書籍を 「実用性」と「薄さ」と独断で選びました。特にふたつめは重要。占星術書は電話帳並みの本が多数あり「ちょっと読む」という体裁ではありません。今回の3冊+αは「内容が濃く薄い本」です。

薄さを比較

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比較対象はベンジャミン・ダイクス博士著のアブ・マシャール占星術大序説、ザエルとビシャール、バーバラ・ダン著のホラリー占星術。4冊積んでもこの薄さ。

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和書4冊と比較。やはり薄い。

紹介する3冊+α
1:The Houses, Temples of the Sky(ハウス・空の神殿):デボラ・ホールディング著(全168ページ)
2:The Book of Nativities and Revolutions(出生図の書) :イブン・エズラ著 メイラ・エプシュタイン、ロバート・ハンド訳(全98ページ)
3:Horary Astrology, Step by Step(ホラリー占星術 ステップ・バイ・ステップ):ペトロス・エレフセリアディス著(全99ページ)
α:On The Fixed Stars(恒星について):ヘルメス著 ルーメン・コレブ訳(全64ページ)

1. The Houses, Temples of the Sky
ハウス・空の神殿

デボラ・ホールディング著(168ページ)
ハウスを扱った名著。12ハウスの意味、由来、用法を簡潔にまとめ、ハウスの全貌を解き明かします。対向ハウスをワンセットで紹介し、占星術の技法別〜ホラリー、マンデイン、医療占星術で担う意味、用法や読み方を紹介。歴史的背景、ハウスの根源的な意味づけ、季節性、年齢との関連、ハウスが有する力の序列、アングル(1、4、7、10ハウス)の重要性、不運の6、8、12ハウスの解釈。ここにきて再び売れているハウス理解に必読の書。

2. The Book of Nativities and Revolutions
出生図の書

イブン・エズラ著/メイラ・エプシュタイン、ロバート・ハンド訳(98ページ)
原著はユダヤ教の学者、占星術師。生まれは1089年。出生図に始まり、出生図に終わる古典名著。ヘブライ語写本の英訳には独得な言い回しが多く「ザ・古典」の雰囲気満載。わかりにくい箇所はロバート・ハンド氏が註釈でフォロー。文中に「知恵の始まり」を見よ…というくだりが何度か出てきます。これは著者の別著作のこと。また頻出する「エノクによれば…」は聖書外典に登場するエノク、また同時にヘルメスを指します。トレミー説への反論や〇〇という学識者の本は火にくべよ、など毒舌を交える箇所も。水星が示す精神性、生命の源泉を表すHyleg(*1)の導き方に始まり、中盤がメインで各ハウスに在室する惑星による判定ガイド、後半は出生図の年運占断法まで網羅。内容の濃さで他2冊の追従を許しません。

3. Horary Astrology, Step by Step
ホラリー占星術 ステップ・バイ・ステップ

ペトロス・エレフセリアディス著(99ページ)
ここまでホラリー占星術の解き方を具体的、且つ、曖昧さを排した解説をする著作は他にありません。内容は極めて明快簡潔。ステップ・バイ・ステップのタイトル通り四段階(1. チャート有効性、2. 表示星-シグニフィケーターの選定 3. 表示星の評価 4. 判定)で手順を直伝。占星術はフワっとしたものでしょ?そんな風に読むとちょっとショックを受けるかも知れません。「占星術は何が起きるかを示すが、何をすべきかのアドバイスはしない」という著者の大前提から「それが起きるか?」の判定に注力する姿勢を貫いています。つまり本書は占星術で楽しい時間を過ごすために書かれたものではなく、ひとえにプロの占星術師がホラリーチャートで判定を下す方法を伝える内容です。

α. On The Fixed Stars
恒星について

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ヘルメス・トリスメギストス著/ルーメン・コレブ訳/著(64ページ)
ヘルメス・トリスメギストスが残したとされる写本「恒星について」。そのラテン語版を入手した訳者による書籍。ラテン語と英語を並記し原典に註釈を加え、ルネッサンス時代の「ベヘニアン恒星」に加え全31の恒星の意味、惑星との関係を書いています。前半17ページは訳者による古代の恒星と恒星の力についての解説。後半10数ページは著名人の恒星占星術解説。現代に伝わる意味と大きく異なる恒星もあり、古代/古典占星術の深みを堪能できる一冊です。欠点は入手が困難なこと。こちらのサイトの注文システムは動いていないため、コンタクトフォームからコレブ氏にメールし、氏からの返信メールに指定されるペイパル経由で支払う必要があります。

読み方提案

さて、英語は僕たち日本人に圧倒的な障壁として立ちはだかります。これまで講座を通して様々な悩みを聞きました。そこで英書占星術書の読み方二つを提案します。

1. 気になる箇所だけを読む。通しで読もうとしない

全てを通しで読もうとすると高確率で挫折します。なにより好奇心とモチベーションが重要。目的は英語習得ではなく、得たい知識を得ることです。ですから、まず興味がある箇所に注力すること。「ホラリー占星術、ステップ・バイ・ステップ」は通しで読む必要がありますが、他の二冊はこの方法が使えます。分厚い占星術書も同様です。たいていはセクションごとにテーマが区切られています。分厚い和書を読破したとしても、しっかりと記憶に残る箇所は限られています。外国語なら尚更です。先ずは興味がある箇所の制覇。仮に1ページに1日かかったとしても、内容が理解できれば満足度は上がります。満足度が上がれば次につづくモチベーションも生まれます。モチベーションが消えてしまっては、肝心の目的は達成できません。もういちど言います。英語習得は目的ではありません。目的はあくまでも占星術知識の習得です。

2. DeepL翻訳最強説

方法はどうあれ目的の達成が重要です。そこでつぎの提案は、昨年世に出たAI翻訳サービス「DeepL」の使い倒しです。無料自動翻訳サービスのなかで最も優れています。DeepL以前はGoogle翻訳が主役でしたが、現在は比べものになりません。きちんと書かれた英文は高精度で読める日本語に翻訳します。DeepLは利用者が増えるほど翻訳語彙が増え、翻訳内容も進化します。昨年、占星術用語の誤訳は酷いものでしたが、1年経たずして飛躍的に進化しました。もちろん、おかしな表現や間違った翻訳をすることもあります。無料版は5,000文字を都度翻訳の制限としています。だからといって文字制限いっぱいには使わないでください。現状は最大でも1,000文字以下が良いです(※継続調査中 2021/11/9)。一度に翻訳させる分量が多いほど誤訳の確率が上がります。理由はわかりません。原文の5割が分からない人は特にそうしてください。英語に自信がある人は構いません。あやしい訳文をみつけたら、その文章だけ別途検証ができるからです。

古典占星術書の絶対数は海外でもそれほど多くはありません。モダン占星術書籍が圧倒的に多い。でも、種類と販売部数が少しずつ増えているのも確かな様です。たとえば、2006年に初版が出された「ハウス・空の神殿」はここにきて急激に販売部数を伸ばしているとのこと(版元The Wessex Astrologer代表談)。それでは良い旅を!

*1: Hyleg(ヘレニズム占星術)出生図で重要な5つの箇所(太陽、月、アセンダント、幸運のロット、出生前のシジギー〜出生に最も近い新月・満月)で最も高いエッセンシャル/アクシデンタル・ディグニティを得るものから選ぶ。算定方法は著者によって異なる。

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