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グレートコンジャンクション〜風の時代と貨幣の変容

割引あり

目次

  • グレートコンジャンクションと元素サイクル

  • 古典占星術からきた「大会合」のすがた

  • 元素サイクルの変容と千年

  • 風の時代の変容とは何か、変容するお金の未来像

  • パワーバランスの大変化を境に激変する情報通貨

  • 補記 お金の変容が起きる条件

  • 特別資料 BC999〜2159年 大会合詳細版

  • 暗号通貨・ゴールド

執筆にあたり、福本基さん(@Motoy_Fukumoto)、M.N.さんの協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

更新録
2022/1/19 13:00 [補記更新]お金の変容が起きる条件
2022/1/12 20:37 [補記] 市中銀行でのお金の発行
2021/01/17 22:30 トレミーの宇宙観と惑星の動きを示す動画
2020/12/28 13:00 期間価格 350円(12月28日〜1月4日)
2020/12/28 13:00 [追記] 補記 暗号通貨・ゴールド、観測方法
2020/12/20 11:00 早割価格終了 350→500円(12月20日 20:00から)
2020/12/20 00:00 [追記] 参考文献 Money creation in the modern economy
2020/12/16 10:00 [追記] 補記 お金の変容が起きる2つの条件

参考文献
- 三品利郎, 木星と土星の大接近について, 2020年12月6日改版
- 龍 粛訳, 吾妻鏡(五),岩波書店, 1944
- Benjamin Dykes, Astrology of the World II, Cazimi Press, 2014
- 福本基, 基礎からわかる伝統的占星術, 太玄社, 2000
- K. Yamamoto & C. Burnett, Translation, Abu Ma'Sar on Historical Astrology: The Book of Religions and Dynasties on Great Conjunctions Islamic Philosophy, Theology, and Science, Brill Academic Pub, 2000
- 鏡リュウジ, 占星綺想, 青土社, 2007
- 安木新一郎, 13世紀後半モンゴル帝国領雲南における貨幣システム, 国際研究論叢 25(2):123〜132,2012
- レイ・カーツワイル, スピリチュアル・マシーン―コンピュータに魂が宿るとき,翔泳社, 2001
- Bank of England, Money creation in the modern economy, 2014

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グレートコンジャンクションと元素サイクル

2020年の木星/土星会合がことさら注目されている理由はふたつある。
ひとつめは二つの星の距離がとても近くなること。0度以下、正確には0度6分差という距離。多くの人の肉眼にはひとつの星に見える可能性がある。有名な木星の4衛星(ガリレオ衛星)と殆ど同じ距離にまで土星が近づく。しかも、それが約800年ぶりの出来事なのだから、天文ファンにはたまらない。ふたつめは、西洋占星術でいう「大会合(グレートコンジャンクション)」。古典占星術書にも記される二大惑星の合。土星は約2年半でひとつのサイン(黄道帯の30度分)を移動し、木星は約1年で移動する。このサイクルのズレが20年毎の会合を生む。そして占星術ではこの会合を重視する。さらに20年のサイクルを8〜12回繰り返す度に、サインが属する元素(エレメント)を変えていく。元素から別の元素への変遷、これをミューテーション(変容)と呼ぶ。160〜280年の周期で、四元素の交替サイクルを繰り返し、現在は「地」の元素から「風」の元素のサイクルに移行している最中だ。

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図:1940〜2060年の大会合と元素サイクル(ミューテーション)の順序

さて、大会合が今回の様に6分差の距離に迫ることはあまりない。

2020年(6分)
1623年(6分 観測不可)
1226年(2分)
1107年(2分)
0769年(5分 観測不可)
0372年(2分)
BC 86年(4分)
BC 424年(1分)
BC 940年(6分)

1623年と769年の大会合は太陽に近すぎて観測は出来ない。1623年、日没後の木星は見えた可能性があるが、土星の目視は厳しい。だから、直近では1226年が大会合を肉眼で観測できた年ということになる。

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図:1226年3月5日の大会合がどの様に見えたのか。この時も大会合は水瓶座の前半(2度)で起きていた。双眼鏡や望遠鏡ではこの様に見えるが、肉眼で2つの星を判別することは難しい。

1226年当時の観測記録は見つけることは出来なかった。だが、本邦の「吾妻鏡(あづまかがみ)」に片鱗が残されていることを知り、自書(吾妻鏡(五)、岩波文庫、P79-80)でこれを確認した。詳しくはこちらのサイト(三品利郎, 木星と土星の大接近について)をご覧いただきたい。要約すると、木星・土星・金星が合となるため、祈祷の必要性ありとの陰陽師の進言に従い、二度にわたる加持祈祷を行ったという記録だ。当時は合を「犯」と呼び、不吉の前触れとした。国勢に関わる祈祷のため、大規模に行われたと考えられる。
シミュレーター(Stellarium)で確認したところ、確かに大会合の直前、2月後半に木星・土星・金星は三角形を描いている。この姿はとても美しいと思うのだが、時代が時代なら、今回の大会合でも加持祈祷を行っていたのだろう。

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図:1226年2月26日早朝東の空

古典占星術からきた「大会合」のすがた

さて、イタリアの大占星術師グイド・ボナッティ、ペルシャの占星術師(アブ=マシャール、マーシャアラーなど)は、四元素が一巡する期間を960年と残している。会合が20年ごと。20年の会合を12回繰り返し、ひとつの元素サイクルを終えるまで約240年。240年を4回(四元素分)繰り返し960年という計算だ。
だが実際に計算をすると960年には足りない。四元素の一巡に要する年数は790〜850年というところだ。この違いは何故起きるのか。彼らの計算が大雑把で間違っていたのだろうか。
そうではない。
実は当時の大会合計算方法と、現代の僕たちが使う方法には大きな違いがあるのだ。

会合タイミングにはふたつある。実質会合(True Conjunction)と中間会合(Mean Conjunction)だ。前者は実際に起きる会合。後者は土星と木星の離心円を別に設けた点を使う。僕たち現代の占星術師は、同心円で動く天体を無意識にイメージする。太陽系モデルを知っているからだ。当時は地球を中心とする天動説モデルが前提。だがこれでは惑星の逆行や速度の変化を説明できない。そこで作られたのが、地球の近くに中心がある別の円。この円に中心を置く周転円で惑星が運行するというモデルだ。土星の周転円と木星の周転円の重なる点を基準とするのが中間会合(平均会合)。
ペルシャの占星術師は、この技法をインドやゾロアスター教から導入した。そこで使われていたのが、サイデリアル方式。
中間会合とサイデリアル方式の採用によって現代の計算方法との間にズレを生み出す。
彼らが使った方法を使うと元素サイクルに入るタイミングが一定となり、各元素サイクル約240年×4で「960年」が算出される。以上はベンジャミン・ダイクス博士著「Astrology of the World II」に詳述されているので興味のある方にはお薦めする。

トレミー(プトレマイオス)の宇宙観と惑星の動きを示す動画。アラビアの天文学者達は観測と計算を続け、このモデルをさらに高度化した。コペルニクスはアラビアの研究書を読み解き、1534年に地動説を導き出す。

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図表:BC999〜2159年の大会合一覧(実質会合、トロピカル方式)「R」は逆行によって会合が3回起きる年の最初の会合。

さて、アブ=マシャールは大会合そのものより、大会合の前に起きる春分図を重視していた様だ。重要度順で並べるとこうなる。

・おひつじ座の大会合が起きる前の春分図(太陽が春分点0度に入った瞬間のホロスコープ)
・新たな元素サイクルに入った大会合が起きる前の春分図
・20年毎の大会合前が起きる前の春分図

おひつじ座での大会合が最も重要で、その後の時代に多大な影響を与える。その次が新たな元素サイクルに入る大会合。最後が20年毎に繰り返される大会合。直近では最初のおひつじ座大会合は1702年。新たな元素サイクルに入ったのは1980年だ。

さて、ホラリー占星術の大家ウィリアム・リリーは大会合のサイクルが風の元素に入る時代は、優れた学者、数学者、占星術師が生まれると残している。1980年の会合で、地のサインのサイクルから、風のサインへと移動した。2000年に再び地のサイン(おうし座)で会合をするが、2020年12月に起きる会合から、本格的な風のサインでの会合へと移る。そこで、元素の交替は時代性や精神性を写すのかという疑問が出てくる。前出のグイド・ボナッティも元素の交替は世界中に対して影響を及ぼすと述べている。
トロピカル方式の実質会合を3000年分の一覧として出してみたものの、世界史や宗教史にそれほど明るくないために断言ができない。感覚的に想像ができるのは、せいぜい生きている範囲から100年前くらいまでが限界だ。火元素の時期に戦いが盛んになり、地では物質的充足、風は知識や知性がテーマといった解釈については疑いもあった。たとえば、人類史において戦争は常に起きているが、ローマ帝国が君臨した「平和と繁栄の200年(パクス・ロマーナ)」では戦争が消えた。日本史から長期間にわたり戦争が消えたのは江戸時代だ。パクス・ロマーナは前27年から五賢帝時代の終わり180年までの200年。火の時代だった。江戸時代も火の時代に始まり260年つづいた。戦争との相関は見られない。だがウィリアム・リリーが残した「火の時代は偉大な君主が生まれる」という言葉はローマ五賢帝、徳川家康と符合する。また精神、意識活動においては検討の余地がある。たとえば、火は創造性を表す。人類史での芸術や文学史に明るい人ならば、表現活動に現れる変化・変遷と四元素サイクルとの間に相関性を見出すことが出来るかも知れない。

では、実際に生まれた技術や生活様式の変化と元素サイクルに相関は見つけられるだろうか。現代式の大会合一覧表を見ながら、千年間の変遷を大雑把に紡いでみよう。

元素サイクルの変容と千年

平安時代(794〜1185年)は火と地の時代だった。その後期、地の時代は唐文化をアレンジした国風文化が生まれ、沢山の和歌や物語が残された。海の向こうイギリスでは地の時代にノルマン=コンクエスト(1066年)が起きている。ノルマン人による統治はその後のイギリスを大きく変えた。同時期に始まったのが十字軍遠征。1096年から1270年、風の時代中盤まで続く。

風の時代(1186〜1345年)
風の時代の覇者と言えば、ヨーロッパにまで攻め入ったモンゴル帝国だ。貴金属を担保としない国家紙幣を発行し、東西の流通を活性化させ西欧や中東に与えた影響は大きい。帝国は1206年、風の時代と共に生まれ、地の時代初期に起きた紅巾の乱(1365)を境に没落した。
本邦では平清盛の独裁政権が滅ぼされ、源頼朝が鎌倉に居を移したのが1190年。鎌倉幕府も風の時代に生まれ、地の時代の後半まで続く。この時期に起きた変化は貨幣経済の浸透、外国軍襲来(元寇)、そして民衆に広がった仏教だろう。

水の時代(1365〜1583年)
日本は室町時代(1394〜)の始まりと戦国時代(1467〜1573年)にあたる。西欧では、水の時代はペストの流行から始まる。そしてスペイン帝国の隆盛と没落。目立つのはイタリアでのメディチ家の台頭。美術・文芸で豊かな表現が花開くルネサンス時代だ。キリスト教の教義に縛られない自由な表現、技法が発展した。教皇レオ10世が販売した免償符をきっかけに宗教改革運動が起きる。そして、中国に遅れること500年、活版印刷の誕生。当時の「メディア革命」活版印刷は、ルターが推し進める宗教改革の最重要武器となった。

火の時代(1603〜1782年)
スペイン帝国が力を失い、火の時代に台頭したのはイギリスだ。東インド会社が設立されたのは、まさに火の時代の始まり1600年。やがて全世界の陸地と人口の4分の1を版図に収めた史上最大の帝国となる。そしてアメリカ大陸への進出とアメリカの独立戦争へと続く。特筆すべきは、火の時代後半に起きた「産業革命」だろう(1760年代〜1830年代)。火力(石炭)による蒸気機関は産業と仕事の在り方を根こそぎ変えてしまう。また、電気の基礎研究が進んだ時代でもある。静電気発電機やライデン瓶の発明、ベンジャミン・フランクリンの電気実験などが後の電気実用化への土台となった。地動説が採用され、ニュートンが万有引力を発見し、天文学と占星術が分かれたのも火の時代だ。科学の在り方が変化し、後に「産業革命」とならび「科学革命」と呼ばれる様になる。
そして、お金の変化。それまで銀や金に根ざしていた貨幣が借用書(約束手形)に変わり、信用創造(貨幣創造)が始まった。誰かが借金をすると、その約束手形がお金となる仕組みだ。借りた人の「信用」が担保となるお金の誕生である。

火力と電気はともに火の元素に象徴される。2つの相関性は高い。現代のネットやITも、占星術の四元素分類では「火」に対応する。

地の時代(1802〜1961年)
近代。地の時代前半は、心理学、神智学、人智学が誕生する精神世界再興の時期。前世紀で小康状態となった占星術も復活する。そして260年の鎖国を終えた日本政府の誕生。米国の勃興。ロシア革命とソ連の誕生。人類は2つの世界大戦を経験し、原子力の実用化と共に大量殺戮兵器の開発を始めた。大英帝国は殆どの植民地と世界覇権を失い、米国がそれにとって変わった。電気が完全実用化され、石油と共に人類の生活様式を根本から変えた。交通手段、通信手段の進歩は目覚ましく、それまでの物理的距離感を一変させ、インターネットの基礎技術もここで育まれる。
信用創造(貨幣創造)が定着し、覇権国である米国は1971年(地の時代後半の10年)ついにドルと金の交換停止を宣言。お金は物質的担保を必要としない「記録情報」へと変容した。

こうすると時代性と元素サイクルの間に相関が浮き上がる。特に覇権国家の変遷は際立っている。また過去千年でその後の日常に最も影響を与えた変化が、火の時代に起きたことも見えてくる。とりわけ科学と産業の進歩は大きい。火の時代で生まれた革新的技術進歩は地の時代で確固たるものになる。また、現在の生活基盤を支える産業、IT/AIの基礎技術も地の時代に整備されている。特に象徴的なのは経済の血液、お金の位置づけだ。ニクソン・ショックと呼ばれる金ドル交換停止宣言以降、お金の発行量に対する物質的な制限は消えた。貸し借りの記録が約束手形として流通したことは過去にもある。しかし、政府と中央銀行、市中銀行の裁量で自由に発行できる仕組みはその後の経済を大きく変えた大事件だろう。その仕組みが火の時代に生まれている点も興味深い。

それでは風の時代とは何を示すのだろうか。

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風の時代の変容〜流通・情報・知

風の時代の象徴「情報と知」の変容については、「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉を世に出したレイ・カーツワイル博士の「スピリチュアル・マシーン―コンピュータに魂が宿るとき」をお薦めする。漠然としたIT/AI論ではなく、実に理路整然とまた具体的に高度情報化社会の将来像を描き出している。

これからお話しするのは、日常に浸透し流通する存在「お金」だ。
お金は物々交換から貨幣、貨幣から紙幣、紙幣から電子情報へと変わり、風が示す「流通・情報・知」とつながりがとても深い。
お金を一例に、風の時代が何を変容させ、どこに向かっていくのかを描いていこう。

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