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皆既月食0526

2021年5月26日(水)、日本では約3年ぶりに皆既月食が見られます。もう3日前なので、かなりメディアにも取り上げられるようになってきました。せっかくなので、ここでも皆既月食について書いてみましょう。

と言っても、実はポスターは作ったので、ここではいっさい図を使わずに今回の月食について説明してみたいと思います。

月食は、月が地球の影に入って、月が見えなくなる現象です。月は太陽の光を反射して光っています。そして月は地球のまわりを回っています。そのため、月が地球の真後ろにくると、地球の影に入って太陽の光が月に当たらなくなるわけです。地球の影に入っていくにつれて月が欠けて見えるのが部分月食で、月が地球の影にすっぽりと全部入ると皆既月食となります。つまり、月食は必ず満月の日に起こるわけです。ただし、満月のたびに月食が起きるわけではありません。月が地球のまわりを回る軌道は5度ほど傾いていますし、月は地球から平均38万kmほど離れているので、細まりゆく地球の影の中に月が入る確率はけっこう低いのです。

皆既月食は月全体が地球の影に入るため、月が見えなくなってしまうと思いますよね。実は、そうはなりません。皆既中の月は赤銅色に鈍く光って見えます。これは、地球に大気があるからです。光は基本的に直進するのですが、宇宙空間から地球の大気に光が入ると屈折して、地球の影の中に入り込んで月まで届くようになります。ただその過程…つまり太陽の光が地球の大気を通過している間に、地球の大気をつくる分子によって波長が短い(青っぽい)光が散乱してしまいます。つまり、月には赤っぽい光だけが届くようになるのです。そのため、地球大気中に光を散乱する粒子が多いと、赤っぽい光さえ散乱されてしまって、真っ黒な…ほとんど見えない皆既食になってしまいます。皆既食中の月の色は月食によって変わるのです。実際、1982年12月30日に起きた皆既月食はエルチチョン火山(メキシコ)の噴火で噴出した火山灰などが地球大気中に広がり、かなり暗い皆既食となったそうです。今回の月食はどんな色になるでしょうか?皆既食中の月の色はダンジョンの尺度(ダンジョンスケール)というもので表されます。皆さんも自分の目で確かめてみてください!

さて、肝心の日食が見られる時刻や方角ですが、月食は日食と異なり日本各地で同時に進んでいきます。ただ月の高さや見える方角が地域によって違います。北海道の東部、東北地方の太平洋側、関東地方などを除いて、月が欠けた状態で昇ってくる=月の出より前に部分食が始まる月出帯食となります。部分食が始まるのは18時44.6分、皆既食が始まるのは20時09.4分、皆既食が終わるのは20時28.0分、部分食が終わるのは21時52.8分です。月はおおよそ東南東から南東に見えます。ただ高度は低くて、皆既が終わる時点でも20度に達しません。東から南東方向が開けた場所で見るようにしましょう。なお、前述の時刻とは違う時刻を紹介しているウェブサイトや書籍もあると思います。地球に大気があるために地球の影の輪郭ははっきりしません。そのため、地球の影の大きさをどう見積もるかで、月食の進行時刻が少しですが変わります。前述の時刻は国立天文台の計算に基づいていますが、例えばNASAの計算では国立天文台よりも影の大きさを小さく見積もっています。

ところで、月は地球のまわりを楕円軌道を描いて公転しています。つまり、地球と月の間の距離は一定ではないのです。5月26日は、この一年で月が地球に最も近づく日でもあります(具体的には10時50分に月が近地点を通過)。そのおよそ半日後に月食となり、その最中に満月の瞬間を迎えるわけですから、5月26日の満月は2021年最大の満月ということになります。巷ではスーパームーンと言われますね(正式な天文用語ではないですが最近はかなり浸透してきました)。つまり、いつもよりちょっと大きい満月で皆既月食が起きるわけです。さしずめスーパーレッドムーンでしょうか。

とにもかくにも、5月26日の20時前後は、ぜひ月を見てみてくださいね。そしてなにより晴れないと見られません。晴天祈願!

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