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満天NAGOYA

昨日は、仕事をちょっと早退して、コニカミノルタプラネタリウム満天NAGOYAに行ってきました。恐ろしいことに17時に職場を出て向かって、2投影を見て、そして家に帰れちゃうんですよね(終電ですが)。それはさておき、業界で話題のプラネタリウム、ようやく見に行くことができました(実は10月28日に行く予定でチケットまで買っていたのにいけなかった…そう、ラブストーリーと子どもの病気は突然にやってくるのです…)。

さて、まずは同プラネタリウムの概要をご紹介しますと、今年(2021年)10月27日に正式オープンしたばかりの新設館で、名前の通りコニカミノルタプラネタリウム株式会社の直営館です。直営館としては東京のコニカミノルタプラネタリウム満天 in Sunshine Cityコニカミノルタプラネタリウム天空 in 東京スカイツリータウンコニカミノルタプラネタリアTOKYO(いずれも東京都)に続く4館目の直営館。「ノリタケの森」という複合施設の中にあります(愛知県名古屋市西区)。

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ここのプラネタリウムは、光学式投影機がありません。では、月光天文台(静岡県田方郡函南町)や富山市科学博物館(富山県富山市)のようにプロジェクターのみで投影するのかと言えば、それも違います。なんとドームが”光る”のです。ドームスクリーン一面にLED素子を配置し、そのLEDが発光して映像を映し出します(LEDドームシステム「DYNAVISION®-LED」と言うそうです)。かんたんに言えば、ドームスクリーン全体が電光掲示板になっているようなものです。従来の投影方式では映像が反射光なので、特に輝度(映像の明るさ)に難がある場合がありました。私が勤めている平塚市博物館のようにドーム径が小さければ(当館は10 m)、高スペックなプロジェクターを使うことで輝度を稼ぐことができますが(実際、当館の映像はかなり明るいと自負しています)、ドーム径が20 mを超えるような大型館ですとプロジェクター2台をスタックして映像を重ねることで輝度を稼いでいることが多いです(多摩六都科学館など)。DYNAVISION®-LEDはそれを克服するシステムと言えます。

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では、実際に見てどうだったのか?今回は現在投影中の2番組、「宇宙のオアシスを探して―奇跡の星への旅― Music by 葉加瀬太郎」と「Dog Star 君と見上げる冬の星座たち」の両方を見ました。番組の感想等はここでは書きませんが、前者が太陽系の惑星や系外惑星を扱った番組、後者が星空を背景にした高校生の青春物語番組、と言った感じでしょうか。
まず、入場中の映像からして、その圧倒的な明るさと色の鮮やかさに驚きました。LED素子間の隙間は映像を見ている分にはほとんど気づかず、言われなければドームスクリーンが光る方式だとはわからないかもしれません。番組中に星空のシーンはもちろんあり(特に後者の番組では地上から見た星空が頻繁に登場)、星像の鋭さは光学式に負けていません。映像部分の美しさはさすが、と言ったところでしょうか。

一方で、残念なところもいくつかありました。まず、その明るさが仇となって、ドームスクリーンの反対側が照らされ、LED素子のユニット(?)が模様となって見えてしまうのです。なかなか文字だけでは伝えづらいのですが、例えば宇宙空間に地球が浮かんでいるシーンを想像してみてください。前方(南)に地球が大きく見えているとき、180度後方(北)の空を中心にかなり広い範囲が地球に照らされてしまい、本来であれば漆黒の宇宙空間に広がる星が見えていなければならないはずが、白黒のまだら模様が見えてしまうのです。前の地球だけを見ていれば気にならないかもしれませんが、没入感という点ではかなり残念な感じになってしまいます。
加えて星空の表現です。「宇宙のオアシスを探して―奇跡の星への旅― Music by 葉加瀬太郎」では、恒星同士の輝度差が小さく1等星が目立ちませんでした。例えば、みなみのうお座のフォーマルハウトとみずがめ座ζ星(いわゆる三ツ矢マークの真ん中の星)がほとんど同じ明るさに見えていました。ただ、これは番組の演出上、再現性を重視していないだけの可能性もあります。と言うのも「Dog Star 君と見上げる冬の星座たち」ではそんなことはなかった、むしろ1等星が明るすぎるくらいだったからです。星の明るさの違いを恒星原板の穴の大きさや像の大きさでしか表現できない光学式/デジタル式と違って、LED式の場合は個々のLEDの輝度で星の明るさを表現できるはず。今回は番組的にそこまで再現しなかっただけなのかもしれません。星の色もちょっとどぎつかったですしね。いつか、LED式が本気で再現した星空を見てみたいものです。おそらくLED式が苦手なのは天の川ではないでしょうか。LED素子の配列が解像度の限界を決めてしまうので、メガスターのように双眼鏡で覗いて星の集まりだと認識できるような天の川にはならない気がします。

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プラネタリウム施設で働く人間としては、気になるのが耐久性とメンテナンスのしやすさ、です。LED式の場合、個々のLEDが死んでしまうと、映像に穴が開いてしまうわけですね。数個レベルなら大したことなさそうですが、星空を映すときにたまたま死んだLEDに当たってしまうと、星が消えてしまいかねません。個々のLEDはどれくらい”もつ”のか、そして寿命に極端なばらつきはないのか、交換は容易なのか、使う側からすると重要です。

とはいえ、今回コニカミノルタプラネタリウム満天NAGOYAがLED式初導入の施設。来年3月には同様の施設(やはりコニカミノルタプラネタリウム株式会社の直営館)が横浜市みなとみらい地区にオープンする予定です。映像の美しさでは群を抜いていますから、今後の推移を見守りたいと思います。皆さんもぜひ見に行って、実際に体験してもらえればと思います。

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