見出し画像

宮沢賢治と宇宙(64) 「天気輪の柱」ってなあに? ChatGPTに聞いてみた

宮沢賢治が残した謎の言葉「天気輪の柱」

宮沢賢治の感性は凄い。そのため、謎の言葉も多い。その中で、最も有名なのは「天気輪の柱」だろう。童話『銀河鉄道の夜』に出てくる言葉だ。このnoteでも、この言葉について考えてきた。

賢治はこの言葉の説明をほとんどしていない。そのため、どんなに考えても、謎は謎として残り続ける。それでも考えるのが人間、ということか。

人工知能の時代がやってきた

最近は、AIブームだ。AIはartificial intelligence。人工知能のことだ。AIの開発は1950年台から始まったが、コンピューターの発展と共に、AIの能力は格段に上がってきた(表1)。だんだん、人間の出る幕は減りつつあるのかもしれない。

 

天文学の動向

天文学にもAIの流れが押し寄せてきている。

まず、1980年代中葉、検出機に革命が起きた。それまで主流だった写真乾板(ガラス板に乳剤を塗ったもの)から半導体撮像素子(スマホで使われているCCDカメラなど)に変わった。感度の向上(数十倍)もさることながら、アナログからデジタルへの変化がデータ解析の世界を一変させた。これにはコンピューターの発展も追い風になった。

2000年代に入ると、大規模なサーベイ観測がさまざまな波長帯で行われるようになった。ビッグデータの時代に入ったのである。2010年代になると、それらを用いたディープラーニング(深層学習)が流行しだした。そして生成AIの時代がやってきた。どんな新たな展開があるか、注目が集まる。

ChatGPTならどう考えるのだろう?

近話題のAIは生成AIである会話型のChatGPTである。このツールは、アメリカのAI研究所であるオープンAIが開発したものだ。聞くところによると、かなりの能力を発揮するらしい。
ふと思いついたことがある。

賢治の謎の言葉「天気輪の柱」。ChatGPTならどう考えるのだろう?

そういえば同僚のY先生がChatGPTを使い始めたと聞いた。Y先生の専門は化学だが、物理、数学、なんでも深く理解している教授だ。
そこで、Y先生にお願いしてChatGPTに「天気輪の柱」について聞いてもらうことにした。

ChatGPTの回答

そういえば同僚のY先生がChatGPTを使い始めたと聞いた。そこで、Y先生にお願いしてChatGPTに「天気輪の柱」について聞いてもらうことにした。回答は以下の通り。

Q. 宮沢賢治の童話に出てくる天気輪の柱はなんですか?
A. 宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に登場する「天気輪の柱」は、作品内で重要な象徴として描かれています。この天気輪の柱は、空に向かって立つ柱で、天気の変化や星の動きを観察するためのものとされています。宮沢賢治の作品において、この柱は宇宙や自然とのつながり、人々の心の純粋さや希望を象徴するものと解釈されています。
「銀河鉄道の夜」の物語の中で、主人公のジョバンニとカムパネルラが天気輪の柱のそばに立ち、夜空を見上げる場面があります。このシーンは、二人が現実の世界から夢の世界へと旅立つ前の象徴的な瞬間として描かれており、物語の幻想的で詩的な雰囲気を強調しています。
具体的な描写としては、天気輪の柱は一種の天文観測装置として、天体や星座を観察するための場所とされていますが、その機能以上に、宮沢賢治の文学世界では、象徴的な意味合いが強調される要素となっています。

Y先生はさらに次の質問もしてくれた。
Q. 天気輪の柱が何であるかについて色々な説があると思いますが,それらをいくつか教えて頂けませんか?
A. 天気輪の柱については、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」における象徴的な存在として、さまざまな解釈がされています。以下にいくつかの説を紹介します。
• 天文観測装置説:
• 天気輪の柱は、星空や天体を観測するための装置、あるいは天文台のような施設を指しているという説があります。賢治が描く星や宇宙のモチーフと関連付けて考えると、この説は自然なものといえます。
• 気象観測装置説:
• 天気輪の柱は気象観測装置であり、気象予報や天気の変化を観測するためのものと解釈する説もあります。この場合、天気輪の柱は自然現象と人々の生活を結びつける象徴とされます。
• 宗教的・霊的象徴説:
• 天気輪の柱は宗教的な象徴であり、天と地をつなぐ「天の梯子」や「世界樹」のような存在として解釈されることもあります。これは、作品全体が持つ精神的・哲学的なテーマと関連付けられます。
• 詩的・幻想的象徴説:
• 賢治の詩的な表現として、天気輪の柱は具体的な物体ではなく、夢や希望、宇宙への憧れを象徴する詩的なイメージとされています。この場合、柱の具体的な機能や形状はあまり重要ではなく、その存在そのものが持つ幻想性が重視されます。
• 物語の舞台設定の一部としての解釈:
• 天気輪の柱は、物語の中で幻想的な舞台設定の一部として登場し、主人公たちの冒険の始まりを示すランドマークと解釈されることもあります。物語の展開において、現実と夢の世界をつなぐ重要なポイントとされています。
これらの説は、いずれも宮沢賢治の作品の多義的な性質を反映しており、どれか一つが正解というわけではなく、読者それぞれの解釈に委ねられています。


なるほど、凄い。今までに提案されたアイデアがラインアップされている。これらの結果がほぼ一瞬で出てくるのだから、なんだか調べ物をする元気がなくなる。

Y先生のコメントに学ぶ

「ChatGPTは何かを学習した結果のパターン認知なので,オリジナルな答えを新たに導くものではないと思います。この説はどうですかときくと、この観点から重要と思われますみたいな答えをいくらでも出してきます。その意味では,明確な答えは知らないけれどもうまく追従してくれる話し相手みたいなものだと思うべきです。」
私は心配になってY先生にこう聞いてみた。
「自分でいろいろ考えることは無駄になっていくのでしょうか?」

Y先生の答えは救いだった。

「そんなことは全くないのではと思います。ChatGPTには知りたい,謎を解きたいという明確な意思が欠けています。」

そうなのだ。ChatGPTはネットに出ている情報を集め、手際よくエッセンスをまとめてくれる。しかし、ChatGPTにはそもそも問題意識がない。Y先生の説明は正しいのだ。
しかし、いずれ生成AIが知能を持つときが来るかもしれない。そのとき、世の中の流れは大きくシフトするだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?