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太陽(Hα)スケッチのススメ

今年(2023年)5月末にHα太陽望遠鏡HELIOS1を譲り受け、太陽の眼視観望を始めました。そして7月中旬からスケッチを始めました。太陽眼視とスケッチは相性いいですよ。プロミネンスの変化をより体感できます。オススメです。

昨年から気になっていたHα太陽望遠鏡を手に入れ、よろこんで飽きずに1時間も2時間も見ています(註:適宜日陰で涼んで冷たい飲み物飲んでます)。すると太陽の周囲に上がるプロミネンスの形が変わってきているような気がしてきました。ほんとうに変わっているのか、あるいは見間違い・記憶違いなのか、それを確かめようとスケッチを始めました。

めんどくさそう、絵下手だし、って躊躇しますよね。わかります。私もそうでした。眼視中に変化に気づく手段、前の形がどうだったか自分が思い出せればOK、と割り切ってやってます。画材もダイソーで買ったスケッチブックと色鉛筆でやっていて、小さい投資で太陽眼視観望がより一層楽しめます。

1時間とか30分経ってちょっと形が変わってきたなということもあれば、10分くらいで変わってくることもあったり、1度だけですが描いてる間にあれ?いま描いたのと違う、描くの間に合わない、描いてる場合じゃない見なきゃ!ってなったこともあります。これ、描いてないと変化の速さに気づいてないと思います。変化に気づくと面白いですよ〜。ライブ感爆上がりです!


やり方

自己流ですが私がやっているやり方を紹介します。

用意するもの

・スケッチブック(ダイソーでA4サイズのものを買いました)
・色鉛筆(ダイソーで12色セットを買い、その中の赤、橙を使っています)
・鉛筆(HB)
・消しゴム
・丸定規(私は3Dプリンタで作りましたが厚紙で作ってもいいと思います)

手順

1日1ページ使っています。真ん中に丸定規をおいて円を描きます。これが太陽の大きさになります。始めた頃は直径7cmの円でしたが、いまは10cmにしています。こうすると私が使っている太陽望遠鏡・アイピースで見ている大きさと手元で描いている大きさがだいたい同じになり描きやすくなりました。
周りにたくさん余白がありますが、プロミネンスの変化を周りに描き足していくために使っています。変化を描かないなら半分のA5サイズのスケッチブックの方が使いやすいです。

丸定規を使って太陽の外形を描きます

右上に今日の日付と描き始めた時刻を書きます。そして黒点、ダークフィラメント(暗い線)を黒鉛筆で描きます。プラージュ(主に黒点の周りにある明るい線・面)があれば橙色で描いています。何時方向にあるか、黒点なら大きいか小さいか、形はどうか(丸、楕円、三角)、1個か複数のあつまりか、を意識して描いています。ダークフィラメントは見えづらくて、なんとなーく、描いてます。
私が使っているシングルスタックのHELIOS1では黒点を含めこれらは見えづらく、確認にちょっと時間がかかりますが、あまり変化しないので最初に描いています。
このときは太陽の東西南北は気にせず、見えたまま描いています。最初のころ上を太陽の北にして描こうとしたんですが、まあ描きにくいこと。なので見えたまま描くことにしました。

まず黒点、ダークフィラメント、プラージュを描きます(上記はプラージュなし)

次に赤鉛筆でプロミネンスを描きます。何時方向にあるか、黒点やダークフィラメントとの位置関係はどうかを意識して描き始めます。描くときは、どんな形か、まっすぐ、曲がっている、細い、太い、三角、アーチ、V字型、縦縞、横縞、太陽の縁にくっついている・離れている、1本・2本・・・、などを意識しながら描いています。これを意識しておくと、少し時間が経ってもう一度太陽を見たときに、変化しているかどうかが気づきやすくなります。
描き終えた時刻を右上に追記します。私はだいたい15分くらいで描いています。だいたいと言うのは「描きっぷり」も含めてです。

赤鉛筆でプロミネンスを描きます

私は赤道儀を使っていますが、描き終えた後、赤緯軸をグイグイと動かしてその方向(南北方向)を描き加えています。アイピースを覗きながら動かして、動く方向と並行になるようにスケッチブックに鉛筆を置き、それを定規にして両端に線を書き込んで、N・Sと書いています。

太陽の方向を確認して
南北を書き加える


プロミネンスの変化の追記

少し時間をおいて見たときにプロミネンスが変化してるなと思ったら、そのプロミネンスだけをさっき描いた太陽の周りに追記します。やり方は、まずさっき描いたところの上に丸定規で円弧を描きます。

丸定規をあてて円弧を描きます

そしてその時間のプロミネンスを描きます。描き上がった時刻を円弧の近くに書いておきます。1つのプロミネンスをだいたい1分くらいで描いてます。

プロミネンスを描きます

1つの円弧に複数のプロミネンスを描くと、私の場合、ついつい中心から最初に描いたプロミネンスの延長線上に描いてしまい、プロミネンスの間隔が広まったりプロミネンスをより大きく描いちゃうんですが、まあ、そんなの気にしたら負けです(笑)。自分が変化に気づければOKなんですから。とはいえ、あまり違いすぎて変化してないものが変化しているように感じられるとそれは困りものなので、多少は正しく描くように心がけた方がいいですが(笑)。

これを繰り返して完成です。最初、太陽の全体(フルディスクと言うそうです)を描いたとき、小さいプロミネンスが2〜3個あるだけだと、今日は地味だなと思っちゃうんですが、スケッチしながら追ってみたら変化しているプロミネンスに気づいて、次はどうなるかな?なんて楽しくなってきます。スケッチは太陽観望の楽しさの増幅器です。

プロミネンス変化の1日分(昼過ぎに始めたので正確には半日分)

言語化の試み

言語化とか言うと難しく聞こえますが、要はプロミネンスを絵に描くだけじゃなく、まっすぐとか三角とかそういうことを書いておこうと言うことです。形の記憶がより明確になって変化に気づきやすくなりますし、なにより絵が下手でも文字情報が補ってくれます(笑)。そんなことをtwitterでつぶやいたらTrestan Simonさんがアメリカではこんな感じだよと教えて下さいました。

教えていただいたURLをたぐるとアメリカのAstronomical LeagueのHYDROGEN ALPHA SOLAR OBSERVING PROGRAM(Hα太陽観測プログラム)のページにプロミネンスの形状と名称が書いてありました。
これを参考に自己流の記号を作りました。太陽の縁からまっすぐ伸びているのは直線状ピラーでPsと言った感じです。先のスケッチにもこの記号を振っています。「まっすぐ」とか書くより楽ですからね。

自己流の記号


さてさて、いかがでしょう?面白そうだな、と思っていただけたでしょうか?繰り返しになりますが、スケッチは太陽観望の楽しさの増幅器です。一度お試しあれ。

ご近所公園遠征

太陽観望が楽しくってしょっちゅう見たいんですが、自宅は西向きベランダで仕事もあるので平日は難しい。ってことで自宅近くの公園に明け方から出没してます。犬の散歩をされてる方とかに、何やってるんですか?と、ときどき声をかけられ太陽を見てもらうんですが、見えているまんまるの太陽が太陽だと理解できないことに気づきました。
多くの方は双眼鏡とか顕微鏡を覗いたことはあるので視野が丸いことを知っています。で、まんまるの赤い太陽が見えるので、視野全体が真っ赤だと思うようです。視野はもっと大きくて、その中に赤く丸い太陽があり、周りは暗いとは思わないようです。そりゃ明るい空をみているんだから、周りが真っ暗だと空だと思わないってことなんでしょうね。
ここでスケッチの登場です。描いたスケッチを見せて、こんなふうに見えますよ、黒点があって、周りにあるこんな形の炎のようなものがプロミネンスですよ、と言うと太陽を理解してもらえるようです。
私も夜の普通の観望会ででかい反射望遠鏡などで星雲とか見せていただく機会がありますが、どんな形かぜんぜん知らないので、まったく見えない(恒星は見えてるけど、星雲があるのを理解できない)ことがあります。同じですね。


参考情報

天体観測でスケッチと言うのはmituさんに教えていただきました。すばらしいクレーターのスケッチを描かれています。これを見知っていたので太陽のスケッチと言うアイデアに至りました。ありがとうございます。

太陽スケッチ始めたので、月もやってみるか?と思いましたが、いやこれは難しいです。私の画力では無理っ!mituさんの凄さを体感しました(笑)。

太陽スケッチは変化を捉えるために一時記憶用の言語、象形文字ですね。デフォルメ上等!

太陽観望に限りませんが、じろーさんにはいつもお世話になってます。じろーさんのダブルスタックのHα太陽望遠鏡はダークフィラメントががっつり見えてすごいんですよ。お値段もすごいので到底真似できませんが(笑)。
デフォルメ上等といいつつも、正確な方がいいのは間違いないのでときどき画像をお借りして答え合わせしてます。まあ違っても、デフォルメ上等!って言ってるんですが(笑)。

太陽スケッチを始めたときにいろいろ検索しても情報がなく自己流で始めたんですが、つい先日、先人がいらっしゃることを知りました。ココナッツウォーターさんです。2014年から始めて200枚以上スケッチされているとのこと。いわく、これまで他にやっている人を見かけなかったとのこと。そうすると私は日本だけに二本の指に入ってる?(ダジャレがいいたいだけ、笑) スケッチする人が増えると楽しいですね。


おまけ

丸定規を3Dプリンタで作ったときのモデルです。目玉型というか、D型になってますが、直径10cmの円のまわりに直径15cm、20cmの円弧をつけた定規にしています。1つのプロミネンスを拡大して描くときに使うかな?と思ってそうしたんですが、結局10cmの円しか使ってません(笑)。

まずSTLファイルです。

変更したい方はFreeCADのファイルをどうぞ。

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