小三治の思い出

落語家の人間国宝・柳家小三治さんが7日に心不全で死去、81歳

最初に小三治を小三治としてはっきりと認識したのは、TVで「金明竹」をやってるのを見たときでした。
たぶん「日本の話芸」。

これがもうメチャクチャ面白かった。
まくら(本編に入る前の導入の雑談的なもの)も面白ければ、本編も面白い。
噺の中に出てくる「坊さんがいて、屏風があって、坊さんがいて、屏風があって、坊さんがあって…なんでしょう?」に一時期ハマりまくって、全然落語を知らない人にも言いまくってた時がありました(笑)

同じ週に再放送があるのを知って、録画した物がいまでも手元にあります。
(そしてYoutubeにも同じ物が上がっています)
https://www.youtube.com/watch?v=hQ5YJIVEzsE

で。
そこから少しあと。
2011年の3月のアタマに初めて寄席で落語を見てからと言うもの、寄席に行くことの心理的なハードルがほぼ無くなりまして、まあまあ気軽に行くようになっていました。

そんな中、新宿末廣亭の2011年の6月の下席(21~30日)の夜の部の主任(最後に喋る人)が小三治だと知ります。
末広亭は、当時俺が勤めていた会社から徒歩で15分ぐらい。
21日は火曜日だったんで仕事の後で定時ダッシュで行ったんですが、当然の様にほぼ満席。
2階の端の方の席に通されました。(たぶんもう少し遅いと立ち見だったと思います)

マクラは「東京やなぎ句会」でのお題が「桜餅」だった話。
落語家になったばかりの頃に、桜餅ってのは葉っぱも食べるのが正しいと言われて、それをずっと守ってきた。
でも、少し前に気がついたら葉っぱを残していた自分がいた。
ああ、俺は粋だなんだって理由で葉っぱをを食べていたけど、実は葉っぱなんか食いたくなかったんだなぁ。
と、いう気持ちを読んだ「葉をとって 食べてしまった 桜餅」(うろ覚えなので微妙に違ってるかもしれません)について話したあとに続けて「その次の回のお題が、『柏餅』なんですが…」

みんなが「どっ!」と笑い、一拍置いたところで「植木屋さん、ご精が出ますな」と完璧な間で始まったのが「青菜」と言う落語でした。

これが、もうメチャクチャ面白い。
比喩でもなんでも無く、涙流して笑いました。
「金持ちってのは、良い所に住んでるとか、良い物を食ってるとかじゃなくて、ああいう知識と品を兼ね備えてこそなんだ」っていう発見をした植木屋さんが「ちょっと、あれ、真似してみたいな」ってなる楽しさ。
それにつきあわされる奥さんと辰公(友人)の人の良さ。
それが完璧な間と、完璧なスピード感で上演される。
なるほど、これが名人って奴かと。

そっからはもう出来るだけ見に行くようになりまして、特に正月の上野鈴本と、6月の新宿末廣亭は出来るだけ行くようにしていました。
毎回満席なんで、眠い病気を患ってる俺としては、調子のいい日を選んで行かないと座れなかった人にちょっと申し訳ないってのがあって、そんなに全部って訳でも無かったんですが、「趣味:落語鑑賞」って言ってない人の中では、まあまあ行ってた方だとは思います。

寄席で見た噺を思い出せる順で書いていくと…(後で思い出したら追記します)
・青菜
・天災
・お化け長屋
・厩火事
・馬の田楽
・船徳
・初天神
・野ざらし
・小言念仏
・一眼国
・千早ふる
・道灌
・転宅 
・粗忽長屋
・宗論

どれも面白かったですけど、まくらで有名な方なんで、まくらが印象に残ってるのがやっぱり多いですね。
出てくるなり「これといってしゃべるような事はないんですが」って言いながら話し始めて、それだけで場内が湧く。
そして、お茶を一口飲んで「ここ来ていきなり飲むぐらいなら、楽屋で飲んでから来いって話なんですが」でまたひと笑い。 

まくらで特に印象に残ってるのは、とある有名な方(芸能人じゃないけど名前が知られてた人。名前出してました)が、末広亭の近くの元赤線だった辺りで急死した話。
「なんであんな人が、あんな場末で?」という様な人だったんですが、「ああいう人だからこそ、こういう所に来ていたのかも」と話してました。
ちなみに新聞での発表は、病院での逝去ということになってたそうです。(救急車を呼んで病院に行ったらしいので、実際にそこに嘘は無いのかもしれませんが)

あと、噺の中で訛る時が上手いんですよね。
ご両親が宮城出身で、本人も疎開してたそうなので、その影響もあるのかもしれませんが、元宮城県民にとって凄く自然な訛り方をしていました。

まあ、なんにせよ、メチャクチャ面白い方でした。
もし、今まで興味なかった方がいらっしゃって、「そこまで言うならちょっと観てみようかな」って方は、ぜひ観てみてください。
ちょっと大きめな図書館とかだと、DVDがあって無料で借りられたりするかもしれません。

#落語  #柳家小三治 #小三治

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