高校2年 春④悲しすぎる定期公演
合宿での手応えを感じた僕は、通常の部活に戻ってからどうしてもダンスをしたくてたまらなかった。
そこで、定期公演ではダンスをしようと熱弁。
無事受け入れられることになった。
僕らにとっては2回目となる定期公演。
せいこちゃん先輩が脚本と演出を担当。
妖精たちを主役にした、おそろしくファンタジーな冒険ストーリーになった。
3年生が配役を行い、それぞれのポジションも決定。
僕は妖精(ダンサー)と、音響になった。
普通に考えたら、台詞のない役は嫌だった。
でも、脚本を読んだ時の直感がぼくを支配していて、まったく演者へのこだわりがなかった。
直感"この舞台は失敗する"と。
形にできる人
と
感動させる形にできる人
は違う。
なにも知らなかった時は脚本を書けることが才能だと思っていた。
でも僕らは短時間に全国クラスの舞台と、自分たちの差を知ってしまったおかげで、
形に出来たら終わりじゃないことに気付いてしまっていた。
それを知ってしまっていたから、ここに集中する気がどうしてもおきなかった。
この頃には僕はダンスでは部内で圧倒的なスキルを持つくらいになっていた。
だから振付も担当したし、ダンスの曲も見様見真似で部室のキーボードとレコーディング機材を駆使して製作した。
曲はめちゃくちゃヘタクソだったけど。。。
そして、それ以上はやらずにいくつかの脚本製作に並行して向き合うことにした。
大会で勝つために。
勝ってもっとたくさん舞台に立てるように。
そしてなにより、観客の感動した顔を見られるように。
優しい部長と優しい演出。
演技も動きも特に誰も口出したりせず、それぞれに任せて進んでいく。
これは先輩の舞台だから僕が口出しするものではないのだけれど
大会の時とまったく成長してない。
部活にイライラすることが増えた。
そしてそのまま迎えた定期公演当日。
観客は明らかに去年より少なくなって100人いるかいないか。
卒業したOBやOGたちも観にきてくれていたが、僕はこの舞台が不完全なものだったことでめちゃくちゃに不貞腐れてもいた。
自分主体ではないとはいえ、自分も当事者の舞台だ。
観客の微妙なリアクションは、やはり自分に刺さる。
悔しくて仕方なかった。
片付けも終わり学校へ戻って、もらった差し入れを広げて打ち上げが開かれた。
僕の彼女もわざわざ東京から来てくれていた。
「ちょっと話したいことがある。」
打ち上げの途中、彼女に言われて部室の外へ出る。
「彼氏ができたから別れて欲しい」
話を聞くと、相手は高校の時バンドを組んでいたメンバーの人だそう。
東京での新生活で、同じく東京に進学していた彼と連絡を取り合ううちによく会うようになり男女の仲になったのだそう。
東京で新しい生活を始めた自分と、田舎で高校生やってる僕とではもうあらゆることが違うんだとさ。
そこまで全力ではなかったにしても、ようやく終えた定期公演の直後に聞くにはかなり辛い話だった。
もうしばらく彼女とかいらない。
最高の舞台作ることだけ考えよう。
この後、ちくやん部長、せいこちゃん先輩、ギャル先輩の3名の引退の挨拶。
部長などの引き継ぎも行われることになった。
新部長は、、、M!
副部長は、みっちー!
あれ、俺副部長!?
部長じゃなくて?
と思っていたが、3年生が言うには
俺が部長になるとスパルタが行きすぎてみんなついていけなくなっちゃう。
でもMが部長で、みっちーが副部長の立場で引き締めてくれるなら飴と鞭がバランス良く発揮されるはず。とのこと。
なんかうまいこと言いくるめられた気がする。
ぶっちゃけ不満だった。
なにからなにまで思い通りにならない日。
でも、きっとこの日の悔しさもいつかプラスになる。
そう信じなきゃ。
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