高校1年 冬④卒業式は一瞬。春も目の前だ。
あっという間に3月。
3年生の卒業式を迎えた。
彼女は補習を繰り返し、なんとか卒業することができた。
部員みんなでお別れの挨拶を全員にした。
振り返ればこの人たちに憧れて演劇部に入ったんだった。
おかげで今はどっぷり演劇が好きになった。
本当にありがとうございました。
感謝しかない。
3年の前部長は演劇部の1年の子と付き合ってたけど、これからどうするんだろう。
彼は卒業後は地元の国立大だから遠距離というわけでもないけど、理系の彼は3年目から別なキャンパスになるはず。
世間一般の高校生と大学生の恋愛の行方はどうなんだろうな。
そんなことを考えながら卒業式後の記念撮影をしていた。
彼女は東京へ。
夢に向かって選んだ道。
きっと彼女にはこの地元や高校は小さすぎたんだと思う。
新しい環境に移ることで、自由にのびのび生きてくれたらいいな。
そんなことを思った。
そして同時に、いろんな意味で遠くへ行ってしまうことへの不安が頭をよぎった。
この頃は浜崎あゆみがめちゃくちゃヒットしていた。
なんとなくチャラい気がしてちゃんと聴いたことがなかったけれど
その頃街で流れていたこの曲がずっと頭の中で響いていた。
新入生歓迎公演までの時間も残りわずか。
感傷に浸るまでもなく、寂しさを紛らわすように僕は舞台に打ち込んでいった。
舞台がコメディで良かった。
見てくれた人が楽しいと思ってもらえることだけを考えればいい。
悲しい気持ちとか寂しい気持ちとか、そんなものと向き合う時間はない。
それを考えるのは夜、部屋の明かりが消えた時だけでいい。
今はただ、楽しいことだけを考えればいい。
それだけでいい。
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