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大学1年 春⑤"マスター、いつものやつ"と言われてみたかったあの頃

ダンスにカヌー、家庭教師にほぼ毎晩のJさんからのお誘い。

進学校だった高校時代ではなかなか味わえない充実した毎日を過ごしていた。

すべてが順調だったけど、彼女とだけが急加速で歯車が噛み合わなくなっていた。

やはり、遠距離は無理があるのか。

そんなある日

Jさんが繁華街でバーを始めると言い出した。

当時Jさんは僕の同級生(浪人で一個上)の美人と付き合っていたのだが、その美人なども含めてみんなで初めてのバーに行ってみた。

入口には「ベッドロック」と書かれた看板があり、中は赤。

生まれての初めてのバーは今まで嗅いだことのない甘い香りがした。

人足りない時はたまに手伝ってよ。

そんなことを言われて、大人の世界に足を踏み入れた感じが嬉しかった僕は即OKを出した。


それからは週に1回くらいのペースでバーのお手伝いをすることに。

オシャレなバーにしたい。

そんなんで、全然お酒も飲めやしないのにシェイカーを買ってカクテル作りを勉強しだした。

得意になったのは"ラムネ"という名前のオリジナルカクテル。

名前の通りラムネの味がするのだが、もはや作り方は覚えてない。

来るお客さんは仕事帰りのキャバ嬢がメインだった。

スタッフはJさんのほかに、Jさんと同級生高身長イケメンのTさん、そしてお二人の後輩のジャパンさん、そして僕。たまに僕の高校からの同級生のヤンキー君も働いていた。

夜に染まってないメンズたちによるバーは、やさぐれたキャバ嬢たちの楽園みたいに思われていたようでかなり人気が出て繁盛していた。

ジャパンさんがレゲエDEEJAYをやっていたので、お店ではよくレゲエが流れていた。

そこで初めて僕はダンスホールレゲエと出会うことになる。

中でもkeycoのSPIRAL SQUALLという曲がめちゃくちゃかっこよくて、家に帰ってからも毎日のように聴いていた。


そうこうしてしばらく。

Jさんの友人だというめちゃくちゃ美人な看護学生2人がお店に来た。

こんな可愛い人、この世にいるんだ!

と思うくらいタイプな女性にテンション爆上がりしていた僕を見たJさんは

さりげなく番号を交換するように促してくれた。


でも俺、地元で彼女が待ってるしな。

進展が起きるわけにはいかない。

でも、遠距離恋愛でまったくと言っていいほどうまくいっていない状況だった僕は

彼女がいることを、その子には言えなかった。


そしてその後すぐに夏休みに入った僕は

免許取得のためにまた地元にしばらく戻ることになった。

帰ってきたらまた遊ぼうね!

そう言って数ヶ月ぶりの地元へ。



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