小林賢太郎演劇作品「うるう」の話
Flash動画全盛期世代なので、ラーメンズといえば「不思議の国のニポン」だ。
そのコントを演っているのがどういう人なのか知ったのは随分後だったのでAAの印象が強い。
その後ラーメンズが解散して、それぞれが活動しているというニュースは見たし、NHKで片桐仁さんをたまに見かけると思っていた。
小林さんに関してはオリンピックの件は残念だと思っていたが、同時に個人でやっている舞台作品には気になった。たまに機会が合えばDVDで観ていたが、今回は5/30までYoutubeで無料で見られる上に見ると広告収入が能登の地震に寄付されるとかいう。見るしかないなーと、見た。
見て良かったなあと思った。
以下ネタバレ的な何か。
チェロの演奏と小林さんの一人芝居で進んでいく演出はとても面白かった。話の内容は2/29に縁のある男と少年の物語だ。
世捨て人のように生きている。木々と会話し、一緒に育てる野菜の相性を研究し暮らしている。
ある日動物を捕まえようと仕掛けた罠にかかった少年と、交流が始まる。
少年はピュアでポジティブだ。最初こそ「自分を食べるんじゃないか」と怯えていたものの、慣れてしまえばグイグイくる。男はネガティブで何度も「会った事を口外するな」「もうここにはくるな」というものの、挟まれる回想からはじわじわとした孤独が滲む。オタクとオタクに優しいギャル系のオタク向けコンテンツのアレだ…とオタクは思ってしまった。
話が進んで、男が4年に1歳しか歳を取らない事が語られる。
見た目が全然変わらないので、世間に交わり生きていくのが難しい。
好きになる人はあっという間に死んでしまう。
どうしても余ってしまう、は裏返せば結局いなくなってしまうのであれば、取り残されてしまうのであれば、「余ってしまう」とでも捻くれた方が心が楽なのかもしれない。
劇中で「まちぼうけ」と「カノン」が印象的に使われる。
「まちぼうけ」は守株という故事成語を歌にした童謡で、守株の話はそこそこ間抜けな話である。
その歌が、こんなにも哀しい時間の経過を想わせる歌になる。
最後、外見年齢が48のなった男の元に48になった少年が逢いにくる。最初の頃に「友達っていうのは同じくらいの歳の人間がなるもんだろ」というのを覚えていたのだろうか。
あの時「兎を獲る手引き」を欲しがった男に「まちぼうけ」の楽譜を渡したように。
出会い頭の「経験からも学習しろ」の警告へのアンサーなのかもしれない。
展開の端々に伏線があり、それらが気づけるか気づけないかの範囲まで回収されている。
ラーメンズのコントはそこそこよく見ていたが、それらを見た時もこう言う気持ちを感じたな、と思い出した。
思い出す事の多い作品だと思う。
機会を持てれば生で観たい作品だと思う。
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