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彼と餃子と私

愛情を込めて作る料理は、美味しくなる。
その最たるものが、餃子だ。

市販の皮を買ったとしても、中身の具材はみじん切りにする必要があるし、包んで焼くという工程にもなかなか時間がかかる。
それなのに、なぜ餃子は家庭料理としても愛されるのだろう。

私の餃子の思い出で印象に残っているのは、昔付き合っていた彼と、付き合いたての頃に一緒に作ったことだ。
スーパーで買い出しをするところから餃子作りを始める。
中に包む具材は何にするか、一緒に飲むお酒はビールにするのか、ハイボールにするのか、そんな他愛もないやりとりをしながら、スーパーの袋をかさかささせながら帰路につく。
2人横並びで立つとそれだけでスペースが埋まってしまうような1Kの狭いキッチン。
刻んだキャベツとひき肉、しいたけ、変わり種として大葉にチーズ。
初めての共同作業だね、なんて言いながら、彼は不器用で、あまり上手に包めない。
でも、そんなところも愛しいな、なんて思ったりする。

出来上がった餃子は、上手く包めていても、包めていなくても、美味しいのだ。

そんな彼はもうとなりにはいないけれど、餃子の美味しさは不変だ。

だから私は、キッチンが少し広く感じるこの家で、餃子を包むのだ。
愛情と、少しひねくれた気持ちを込めて。

※画像は焼売です。

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