事故の物損で要注意な代車費用
交通事故の被害に遭った被害者の方からすると、加害者は被害者の被害の全てを賠償するべきと考えていると思います。私もそう思います。
しかしながら、実際には賠償されるのは生じた損害の内の相当な範囲に限られており、被害者の負担した費用全てが補填されるというわけではありません。
今回は物損について、その中でも代車費用について少し掘り下げていきたいと思います。
交通事故で車両が損傷した場合には車両を修理する必要があり、その間は工場に車を預けるため乗ることができません。全損と評価されれば買い替えることになりますが新しい車が納車されるまでは乗る車がありません。
このようなケースで被害者の方は代車を修理工場やレンタカー業者から代車を借りることになります。
私の感覚では被害に遭った方の8割以上の方が代車を借りているように思いますが、いつまで代車に乗れるかという点について考えてる人はほとんどいないのではないでしょうか。
被害者だから全て払われるのは当たり前?
それであれば問題はないのですが、実際には冒頭で記載したように相当な範囲に限られてしまいます。いくつかのケースに分けて考えてみましょう。
①車の修理が可能で被害者が無過失のケース
このケースでは車両を修理している期間、修理が長引くなどの特殊な事情がない限り修理完了までの代車費用全額が加害者の保険会社が負担してくれるでしょう。このケースではあまり揉めることはありません。
②車の修理が可能で被害者にも過失があるケース
このケースでは過失割合が定まっていない場合には問題になることがあります。車の修理をしている間の代車費用について、原則的には相手の保険会社は過失割合に応じた金額で支払ってくれるでしょう。
注意をする必要があるのは過失割合が決まっていない場合です。過失割合が決まっていないということは、加害者側が負担する金額が確定しないことを意味していますので、相手保険会社は修理工場に修理費を支払えません。
修理費をもらえない修理工場は、支払われるまでの間は預かっている車両を返却しなくてもよいため、修理が終わっても車両を引き取れないという事態が起こり得ます。
修理完了後は被害者が修理費を工場に支払いさえすれば車両を引き取ることができますので、代車に乗る必要性が認められなくなります。
この場合には修理完了後の代車については被害者の意思で乗り続けたものと扱われてしまいますので、やむ得ず代車を使用したものではないことから支払われない可能性が高くなってしまいます。
③全損の場合
全損の場合には被害者の過失の有無にかかわらず代車を使用することができるのは新しい車両を購入するのに必要な相当期間のみです。
新しい車両を購入して納車されるまでどれくらいの期間が必要でしょうか。
多くの保険会社は2週間が相当な期間だと主張してきます。
保険加入手続や名義変更、ローンを組んだりすれば2週間以上かかることもあるでしょう。事故をしてからすぐに新しい車両を選べるとも限らず、2週間というのはあまりに短いと私は思います。
しかしながら、この点に関しては裁判所も一般的には長くて30日(一か月)程度が相当な期間だと示しています。
つまり、被害者の方は長くても30日以内に新しい車両を購入するなりしなくては代車費用が毎日負担になってしまうということです。
この点について私個人としては長くとも30日間というのは非常に厳しい判断であるとは思いますが、裁判所の考えでもありますので無視する訳にもいかず慎重に検討するようにしています。
今回このような記事を記載したのは代車費用のせいでかえって被害者の方が損をする可能性があることを気を付けてもらいたいからでした。
例えば修理費が40万円程の事故で、修理は完了しましたが過失割合が決まらず更に1ヶ月間粘って交渉をした結果10%あなたに有利になりました。その結果あなたには修理費が4万円多く払われました(40万円の10%分)。
一方でその間1日3000円の代車を修理完了後から1ヶ月長く乗らなくてはなりませんでした。あなたが払わなくてはいけない代車費用は12万円増えてしまいました。
代車費用については慎重に判断をしなくてはこのようにかえって損をしてしまう可能性があります。事故でお怪我をされたかどうか、ご自身の車両保険を使うことはできるか、ご自身の保険の代車特約は使用することができるかなど様々な事情を考慮する必要があります。
もし被害に遭われてこの記事を読んでいる方がいましたら、少しでもあなたの問題解決の手助けとなれば幸いです。
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