ガールズバンドクライ10話感想 許しとか家族観とか

ほぼ私の視聴態度を顧みるための文章です。

娘(仁菜)のいじめを見ないふりをして自分の体裁ばかりを気にしてた父親(宗男)を許すという回だった。「逃げる場所はないほうが本気になれる」という話をやった後に「家族と和解する=帰る場所が出来る」という話をやるとは凄い構成だ。毒親問題とかに熱心な人なら「家族だからって許さなくていい、許すべきじゃない」と言うかもしれない。実際それも正解なんだと思う。というか「許しは与えなくなっていいんだぜ!」というのは本アニメの脚本家である花田十輝が伝えてきたことでもあるのだ

 花田十輝脚本のオリジナルアニメで「許し」となるとやはり『宇宙よりも遠い場所』の11話を思い出す。ガルクラ10話をより理解する為にあらすじを少し紹介する。

 いじめを受けて(とまとめてしまうのも雑な気もするが)学校を辞めた日向は当事者だった学友を前にし許すかどうかの場面に迫られる。「許したら楽になるかもしれないけどあいつらの喜ぶ顔も見たくない」と逡巡する日向を見て、親友である白瀬は「もう日向は新しい最高の一歩を踏み出してるからあなたたちは関わって来るな」と啖呵を切り突き放す。

 普通なら人が割り切ってしまうような、もしかしたら割り切ったほうが正解にすら見える感情にもわざわざ正面から対峙するのが花田脚本の魅力だ。ではなぜ仁菜は宗男を許したのか。それはひとえに宗男が家族だからだろう。たしかに家族を過剰に特別視してしまうのは危険を孕む。卑劣な行いでも「家族だから」という言葉の下に許されてしまうことだってある。仁菜はそんな常識にこそ中指を立てて追い返してきたはずだ。でも実際に会って弱っている父親の姿を見たり、全く仁菜が求めてたわけじゃない行動でも自分のためにしてくれてるのだと思うと、どうしても突き放せなくて許してしまう。きっとこれは弱さなのだ。だから仁菜はせめてもの抵抗として、指を立てて旅立つ。

何に指を立ててるんだろう?

 「お父さんのこと許したくないし帰る場所が出来るのは弱さだけどでも元は家族のこと好きだし認めてほしくて......」みたいなごちゃ混ぜの感情にこそ「怒りも、悲しみも、喜びも全部ぶち込め」というスローガンは相応しい。

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