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ASローマ学~フリードキンのローマ再生案とは?

我々はとんだお人好しで、間抜け野郎で、現実から目を逸らして、そして誰よりもローマを信じすぎていたのかもしれない。毎年恒例の赤字が発表されても、それでも「また選手を売ることになるのか・・・」という気楽な認識を変えなかった。しかし、いよいよこの夏、ロマニスタよりも先に一部のセリエAファンは真剣に疑問に感じ始めた。

「ローマってなんでいつもお金ないのだろう?」

その疑問は当然だ。3度のスクデット経験を持つ首都のチームで、毎年ヨーロッパの大会に出ていて、必ず数人ワールドクラスの選手を擁して、メルカートでは安く連れてきた選手を天文学的な高値で売却しながら、生え抜きの選手を上手に起用するしたたかなクラブなのである。それなのに毎年多額の負債がニュースになっている・・・

新興勢力のアタランタでプレーしていたクリスタンテ、マンチーニ、スピナッツォーラは、入団会見でローマ入りを『二度とないチャンス』と表現した。古豪フィオレンティーナでスターターだったヴェレトゥもローマがステップアップであることを隠さなかった。つまり選手、スタッフといった現場レベルでローマは『ビッグクラブ』と認識されている。つまりこうである。我々サッカーファンにとって、ビッグクラブとは、輝かしいタイトルを持つ国際的な認知度のクラブである事は間違いない。だが、選手目線でビッグクラブとは、高額年俸を払うクラブ、自分の雇用を保証してくれるクラブなのである。

データで見るローマ

以下の表は今年ガゼッタが発表したクラブ別年俸総額ランキング。チャンピオンズリーグにも出ていなければ、ルカクもいないのにローマはセリエA第3位の1億1200万ユーロである。一方、昨シーズン、国内外で大旋風を巻き起こしたアタランタは4200万ユーロとリーグ11番目の低コストチームだった。

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ローマは払っている総額年俸面からビッグクラブと考えられている。その気前の良さだけは立派だが、なぜミランがドンナルンマを維持できるのに、ローマはチャンピオンズリーグ準決勝に進出した翌シーズンにアリソンを売却しなければならなかったのか。次こそローマにとって収穫期ではなかったのか。しかし、どこかでぼくたちは、高値で売ることにクラブの技術や妙技を感じ始めていた。そして、選手を売ることを『赤字だから』の一言で片付けていた。スタジアムプロジェクトを維持するための費用、センシファミリーから引き継いだ負の遺産、それは今や言い訳にもならない。

2020年6月30日に公開された財務諸表によって、ジム・パロッタのローマは連結損失額が2億400万ユーロ(クラブ単体としては1億8800万ユーロ)であることが明るみになった。これは2006-2007シーズンのインテルミラノに次ぐイタリアサッカー史上2番目の大損失である。もはやコロナだけでは説明できない状態だった。

まずはここ数年のローマの財務傾向をお伝えしておこう。
注:データはSwiss Rambleによるもの。

1..収益

緑が興行収入。2018年の最盛期2億5000万ユーロの収益が、2020年はコロナの無観客試合が影響した結果、大幅にダウンしている。ただ、ローマはオリンピコを自治体からリースしているので、そこまで大打撃ではない(というよりも元々収益の根幹部分ではない)黄色は放送権料。EL自体ホーム&アウェイの中止で試合数が減り、こちらも激減している。赤は広告収入(スポンサー)。2018年、チャンピオンズリーグベスト4の影響で2019年にスポンサーを増やしているものの、2020年はコロナの影響を受けた。青は選手を貸し出して得た収入。

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