大人のローマ速報 11月号①『クリス・スモーリングインタビュー』
まえがき
俺はやさぐれていた。
いや、狼のように飢えていたのだと言い換えてもよい。親父のガレージから拝借したパブリカ・スターレットの助手席に、いつの間にか家に居着いた元ピンク女優のSF小説家を乗せて、武蔵野台の坂下にある小さな銀行を襲撃する算段の俺だ。気分はすっかりボニー・アンド・クライドだった。
それにしても夜の首都高は光量だけなら真昼のようだぜ。ジュリーに倣い、ポークパイハットで片目を隠せば、対向車線のハイライトが左目に刺さった。
「ねえあんた、もうお止めなさいな。なんて莫迦なのかしらね」元ピンク女優のSF小説家は俺の肩を揺さぶってそう尋ねる。莫迦者だと、云わば云え。勝手にしやがれだ。それから俺たちは生産性に欠ける問答の後、ブロバリンを97錠飲み下した。錠剤の禍々しい成分が胃から染み入り、プアな下垂体に到達すると、俺はすっかりしなやかな超越者になっていた。
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