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バスタイム


わたしのお風呂は森の中にある。

淡く玉色に光る大きめのバスタブが、とりわけ大きな木のそばに置いてある。

その場所はその大きな木々のちょうど枝が途切れてすこし開けているところで、月明かりも素直に地面まで届いた。
伸び伸びとして、月明かりで光る自分のつま先を見ながら、深く息をする。

お湯にはゆらゆらと夜が映っている。
手ですくった夜は温かい。
すこしずつこぼれてなくなる夜。

眠りにつく場所を探している金色の蝶が飛んでいる。
瞬きをする直前に、はためいた羽根の裏側の鮮やかなブルーを見た気がしたが、目を開けたときには姿が見えなくなっていた。

遠くでなにかが叫ぶような声がする。
それに応える声は優しい。
夜に開く花の香りが濃くなってきた。
風が吹いて、木々の葉をざわめかす。
目を閉じて温かさを味わいながら、そのおしゃべりのような音を聴く。

誰も来ない森の奥深く。




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