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春の君

去年の春はだれと見ただろう。

同じ花を見て、きれいだねと言いあえるだれかがいないのは、なんだか心がしんとして、つぶやく言葉もポトリと落ちていく白い部屋に閉じ込められたみたい。
今年はひとり散歩で、木の下にたたずむ。


去年の春逢へりし君に恋にてし
桜の花は迎へけらしも
(万葉集より)

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ああ。
わたしにはあなたがいたのですね。

風が吹いて、ざあという音がして、瞬きをしたそのとき、吹雪のように舞うあなたがやさしく頬に触れた。


また来年も逢いにきます



わたしも、待っています。
また来年。



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