職場体験

中学生と社会をつなぐ「職場体験」の現実と理想

 先週行われた会議で、毎年行われている「職場体験」について議論が起こった。

 僕が勤務している中学校は、職場体験が2日間の日程で2年生で行われている。「職場体験」は市内の中学校全部で実施されているが、各中学校それぞれが日程を調整し、有効な期間を決めてしまうと、事業所に迷惑がかかってしまう。そんな現状から、市の教育委員会が2日間の日程を調整し各校へ通達。市内の主な事業所へも、教育委員会からあらかじめ日程を連絡をしている。

 つまるところ、現場が子どもたちのことを思い、自由に決められる裁量が小さくて、効果的な時期に効果的な期間実施できないという行事なのである。

例年行われていたこの行事に対してどんな議論が起きたのかというと…

一度、職場体験の意義を問い直し、無くすことも含めて再検討したらどうだという意見。

・生徒たちは希望した職種に行けない時もある。希望通り行く人も。

・事業所数が足りない(現在勤務する学校は1学年7クラスの大規模校)。

・障がいを持つ生徒への対応。希望したが断られる職種もたくさんある。

・準備期間に対して、2日間のみで効果が得られるのか疑問。

などが理由だ。確かによく分かる…

また、行事の意義について問い直すことは、様々なことが期待される公教育に対して、行事を精選していくという意味でもとても重要な作業だ。

肯定的な意見もあった。

・どんな職場に行こうとも、子どもたちが社会を知るいったんとなる。

・普段学校に登校しにくい生徒たちが輝く場面がたくさんある。

・普段学校では反抗的な生徒が、一生懸命に頑張っている。

・もしかしたら、ある生徒にとっては、職場体験がこれからの人生の方向性を決める出会いになるかもしれない。

などだ。

 職場体験は日本の教育と社会をリアルに反映する行事だ。

 企業は「生産性」を追求する。どの事業所も学校に協力したい気持ちはあるが、会社の生産性が大幅に下がるようであれば仕事にならない。だから、中小企業になればなるほど、受け入れられる人数であったり、生徒の状態(障がいの有無、反抗的な態度、落ち着き具合など)に条件がつけられる。

 一方で、「公共性」が大きい職場には大歓迎される。高齢者の介護施設、保育所、小学校などだ。中学生という異年齢の人との関わりを持たせることができ、受け入れる事業所側にも大きなメリットがある。

 結局、生徒たちの多くはこれらの職場に行くことになる。

 「職場体験」は「公共性」を追求している学校教育「生産性」を追求している日本社会を見事に浮き彫りにさせる。

 「公教育に求められているものは何なのか…」

生きるために必要なお金の作り方、お金はどう循環しているかなど、「生産性」に焦点を当てた内容を教育課程に取り入れた方がよいのか…

どうすれば、中学生と日本社会をよりスムーズにつなげることが出来るのか…

会議の議論を聞きながら、そんなことを考えていた。

 僕の意見は「職場体験は継続させていくべきだ」と思っている。もともと中学校の校舎内よりも外に出た方が学びが広がると思っているし、職場体験は生徒たちに多様な出会いをプロデュースできるステキな行事だ。取り組み方は、子どもたちと社会をつなぐために、もっともっと理想的なものがあるはずだけど、無くしてしまったら元も子もない。

 中学校で義務教育は終わる。中学校の卒業は同時に「日本社会への出発」でもある。卒業と同時に、自分にしかない武器を持ち、「よし、がんばるぞ」と思って、社会に出てほしい。

「職場体験」は、生徒たちにとってその大きなきっかけになるような行事にすることができると思う。

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