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感染症のリスクが高まる時代の食生活の考え方

何故か、日本において医師の教育に栄養学が含まれてきませんでした。
疾患別の食事療法などは学びますが数時間で、栄養学をじっくり学ぶのは大切さを知った医師のみという現状。多くの医師は興味がない…。私たちの体は食でできている。日々の食事が基本であるのに。

光文社新書から「管理栄養士が伝える長生き食事術」の本を出版させていただきます。
この本の内容を決めていた時期、台風が日本の各地で被害を脅かしていたころでした。
私も遠隔にて栄養アドバイスをさせていただいていたので、いきなり災害が起こってから栄養について話しても”聞く耳“はなかなか難しく、日頃からの信頼関係がいかに大切なのかを感じていた時でした。
実はあとがきにもそのときのことに触れていたのですが、初校が上がってきたころには、新型コロナウイルスが中国で猛威を振るい始めた時期で、日々の食事から免疫力を高めるためにも「私たちの体は食でできている。日々の食事が基本であること」にフォーカスするため内容を変更させていただいています。

栄養バランスが良好で、免疫力が健常であれば、たとえ高齢者や基礎疾患のある人であっても、ウイルスに感染しにくく、感染しても重症化しにくいとされています。注目すべき栄養素と免疫力を高める食材についてお話させていただきます。

〇肉、魚、卵、納豆など大豆製品からたんぱく質

私たちは酸素がないと生きていけません。常に息をして酸素を体に送り込んでいます。外部からはいる恐れのある鼻と口から喉頭までを上気道といいますが、上気道の粘膜の粘液でしっかりおおわれていることが大切です。粘液の大きな役割は侵入してきた異物や病原体をブロックし体内に入れないことです。
その主な成分はムチン。ムチンはタンパク質でできています。つまりタンパク質の摂取量が不足すれば、ムチンが不足し粘膜の防御機能が低下し抵抗力もさがる恐れがあります
タンパク質は肉や魚、卵、納豆など大豆製品などをしっかり食べましょう。

〇豚や鶏のレバー、うなぎ、卵のたんぱく質とビタミンA


粘膜にはそのほか病原体を排除する物質が含まれています。その代表格が免疫グロブリン (igA)でこれをつくるのに大事なのはアミノ酸の一種グルタミンとビタミンAです。グルタミンもたんぱく質からつくられますので、ここをしっかり摂る!豚や鶏レバー、うなぎ、卵などはビタミンAも多く含むのでおすすめです。

〇しそ、ニンジン、カボチャなどの緑黄色野菜のβ‐カロチン

ビタミンAの原料となるβ‐カロチンはしそ、ニンジン、カボチャなどの緑黄色野菜を多く含まれています。肉や魚、大豆製品と緑黄色野菜を炒めて食べてもいいでしょう。油と一緒に調理し摂取することによりビタミンAの吸収率が高ります。

〇パプリカ、ピーマン、ゴーヤ、ブロッコリーのビタミンC


ビタミン C は免疫力アップに大切な栄養素です。病原体を排除する白血球の働きを助けたり、粘膜の主なタンパク質であるコラーゲンを丈夫にします。また強力な抗炎症作用もあるため感染による炎症を抑え抵抗力を高めます。

〇鮭、メカジキなどからビタミンD

ビタミン D と言うと骨粗鬆症の予防で骨にいいビタミンと思われがちですが、免疫アップために重要です。粘膜表面の細胞をお互いに固く結びつけて丈夫にし、天然抗菌成分「ディフェンシン」の分泌も促進します。
ビタミンDを得るには、食べ物から摂取する方法と、日光からの紫外線を浴びて得る方法の2つがあります。肌の露出が多いほど、ビタミンDはたくさん生成され、逆に、日焼け止めを塗るなどガードしたところや、服などで覆われていると、ほぼ生成されません。現代人の9割近くがビタミンD不足と言われていますので食事から積極的に摂取したいですね。ビタミン D は鮭やメカジキなどに多く含まれています。
ビタミンDは熱に強く、焼く、煮る、揚げるといった調理をしても、ほとんど分解されないのも、いい点ですね。缶詰や加工食品でも栄養価がほとんど変わらないのが、忙しい人にはうれしいところかもしれません。魚は、とくに鮭やさんま、さばなどの脂肪分の多い魚にビタミンD が多く含まれます。流行りのさば缶などは手軽でおすすめです。


〇きのこ類からビタミンD

また、きのこ類にもビタミンDは含まれます。干したきのこなどは機械乾燥ではなく天日干しのほうがビタミンDが多いのですが、最近は機械乾燥きのこが多いので注意しましょう。天日干しはうまみ成分もたっぷりなので、その点を意識して商品選びをするのがおすすめです。ただ、もし機械乾燥きのこを購入しても、かさの裏を干して紫外線に当てると、ビタミンDの摂取量を増やすことができるので、試してみてください。きのこは毎日少量ずつでもいいので摂取するように心がけましょう。

〇牡蠣、豚レバーから亜鉛

亜鉛は免疫力アップの潤滑油といえるでしょう。亜鉛は体内で栄養素をスムーズに代謝させる酵素がしっかり働くための重要なミネラル。
ビタミンAは主に肝臓に貯蔵されています。体内で必要な場所に運ばれ実際に働くように変わるには亜鉛は必須になります。亜鉛が豊富な牡蠣や豚レバーがあります。

〇牛肉、まいわし、豚レバーから鉄分

鉄が欠乏すると細胞に十分な酸素が供給されず、疲労や免疫力の低下を生じます。若い女性の鉄不足は多く、特に妊娠中や産後は、女性の体の中では赤ちゃんの発育と造血のため、鉄分が必要ですから妊娠前より多くの鉄分を意識する必要があります。
動物性の食品はヘム鉄といい吸収率が高いです。レバーや肉、魚介類は鉄の供給源としてよく知られています。癖のあるレバーがどうしても食べられないという人も、赤身の魚の刺身や貝の汁ものなど、魚介類を上手に食卓に取り入れて、できるだけ動物性食品から鉄を補給しましょう。


〇小松菜、ほうれん草、豆乳から鉄分

非ヘム鉄は植物性の食品に含まれますが吸収率が低いので良質なタンパク質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで、体内への吸収率がアップします。胃酸の分泌がよくなると鉄の吸収率もよくなるといわれています。そこで、胃酸の分泌をよくする酢や梅干し、レモンなどのすっぱいものや香辛料と組み合わせて食べるのもいいでしょう。


〇わかめ、ひじき、もずくなど海藻類の食物繊維

免疫細胞のおよそ70%が腸で集中。腸内環境を整えることは免疫力を高めることに。水溶性食物繊維はほかの栄養素のように小腸で吸収されず、大腸まで届くことから腸内細菌のエサとなります。例えばわかめやひじきなどの海藻類があります。
発酵食品に含まれる乳酸菌には、腸内の善玉菌を増やし、 腸内環境を整えるというはたらきがあります。わかめの味噌汁やもずく酢納豆もいいですね。

まとめ

タンパク質は体をつくる材料になる栄養素。ここをまずベースにしっかり摂取しましょう。
日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なたんぱく質の推奨量は、成人男性は一日60g、成人女性は一日50gとなっています。肉や魚に換算すると、成人男性は一日300g、成人女性は一日250g摂取する必要があります。

育ち盛りの子どもにだって、タンパク質は必要不可欠な栄養素。とくに15歳から17歳は一日に必要なたんぱく質の推奨量は、男性は一日65g、女性は一日55gと大人より多く摂取する必要があることは覚えておいてください。

朝昼夕三食にたんぱく質をわけ、他の食材もいろどりよくいれながら目にも美しく、家族との会話も楽しみながら笑顔の食卓を囲むことも免疫力アップに大切です。

新たなワクチンや治療薬の開発には年単位の期間が必要と言われています。アフターコロナを祈りつつ、ウィズコロナのためにぜひ日々の食事を見つめなおし、自分の体を大切にすることがまわりを大切にする。そのことが社会を医療をまもることに繋がるとおもいます。収束のためにも、ぜひとりいれてみてはいかがでしょうか。  

                     管理栄養士 麻生れいみ

 


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