ガブリエルへの疑問
マルクス・ガブリエルに関する私の疑問は、彼の思想において〈ない〉と〈ある〉がどのように内的に連関しているか、という問いに集約される。ガブリエルには専門的著作と通俗的著作の二種類があるが、フィヒテの例からも明らかなように、後者は前者のエッセンスを煮詰めこそすれ、薄めたりはしない。そこで『なぜ世界は存在しないのか』と『私は脳ではない』という二つの著作を取り上げると、共に軸となっているのは〈ない〉から〈ある〉への転換である。つまり〈世界は存在しない〉から〈無数の意味の場が存在する〉