印刷が終わったら製本である
幡野広志さんの著書『ラブレター』の制作もついに最終章。本文の印刷も表紙の印刷もすべて終わったら次はいよいよ製本である。
刷り上がった紙は、決められた順番に割り付けて両面印刷されているので折ると1冊の小冊子=折丁になる。下の写真は全ページぶん、15台の折丁を重ねたところ。
活版での印刷が終わって型抜きされた表紙。
今回の本には、封筒仕様の特装版とフランス装版があるわけで、それぞれの製本を別の製本所で行うことになっている。僕がお伺いしたのは封筒仕様版の製本をお願いしている神楽坂の望月製本所であります。
どっかーんと積み上がっておりました合体ずみの本文がこちら。折丁を重ねて遊び紙と一緒にノリで合体させた完成形である。本文と表紙を紙で繋ぐときはその紙を「見返し」と言うのだけれども、今回は表紙の裏側も見せたいので、「見返し」はつけないことにしている。紙を貼っちゃうと表紙の裏側が見えなくなってしまうからね。
なお『ラブレター』には写真もたくさん入っているので、できるだけ開きやすくなるように、特殊なノリを特殊な塗り方で合体させているらしい。くっつけかたについては詳しく聞くのを忘れたので、とにかく特殊とだけ言っておくぞ。
フランス装版の遊び紙はこんな色でございます。トパーズよりもやや赤みの抜けた感じの色。落ち着いたいい色でございます。この時点で、ちゃんとページ通りになっているので、表紙がなくても本としては成立しているのでござる。もう本として読むことができるのであります。
紙を折ってつくった折丁を順番通りに重ねてくっつけた状態だと、どうしても端っこが微妙にでこぼこしてしまう。どんなに丁寧に折っても、やっぱり不揃いになるのだ。そのでこぼこを無くすために、表紙をつける前に端っこを整える作業、それが裁断である。ようするに切るのである。切ることが前提になっているので、ノリで合体された本文は、最終的なサイズよりも若干大きめにつくられているのであります。
切れる! スッと切れる! 恐ろしいほどの切れ味!! 240ページが何の抵抗もなく豆腐のように切られていく。「キレてな~い」なんてことは一切ないのだ。
これが裁断が終わった状態の本文である。さあ、賢明な読者のみなさんはお気づきであろう。長辺はぴったり揃っているけれども、よく見ると短辺は揃ってないではないか。おかしいではないか。その通りである。
今回は、手紙の雰囲気を残すために、あえて一カ所だけ、本の上側を裁断せず不揃いなまま残したのである。
これは、本の天側をカットしないから「天アンカット」というものすごくベタな呼び方をする製本パターンの1つである。
手紙って、便箋が何枚か重なっていると、ちょっとだけ端っこがずれるじゃないですか。僕たちはどうしてもあの気配を出したかったのだ。
型抜きされた表紙をどのように折るか、緻密に測定する。
製本用の型
こうしてつくられた本文に、いよいよ今から表紙がつくのである。
さて、望月製本所では、なんと専用の製本マシーンというか、この『ラブレター』を製本するための専用の型がつくられていた。下の枠に本文をぴったりはめて、上の枠に表紙をぴったり合わせて載せると、デザイナーの意図した通りに表紙と本文との微妙な差が生まれるようになっている。
ふだんから、機械が一切使えない手作業の製本が多いので、商品としての精度を高めるために、こうした型を一冊の本ごとに合わせてつくるそうだ。
表紙を折って本文と合わせていく作業はすべて手作業で行われる。じつは僕も一冊だけ製本に挑戦したのだけれども、ちょっぴり曲がってしまった。簡単なように見えて、じつに難しいのである。
みごとできあがった表紙にタイトルを刷った紙を差し込んで完成である。
いやあ、完成だよ。完成しましたよ。いざこうして完成した本を前に振り返ってみれば、企画の段階から本当にいろんなことがありました。何があったかは今ちょっと覚えてないけど。
もちろんフランス装版も同様に完成しているから、いよいよこれでみなさんのお手元に本を届けることができる。
『ラブレター』には、いわゆるカバーがないので、このまま発送したり、書店の店頭で並べていただいたりすると、どうしても表紙が傷みがちになる。
そこで、完成した本をこのあと透明フィルムでシュリンクし、その上からバーコードなどのシールを貼ることにした。ここまでの作業が終われば、ついに商品として完成である。あと少しだ。
これで7月16日から渋谷PARCO8階の「ほぼ日曜日」で開催される『幡野広志のことばと写真展 family』での先行販売にもなんとか間に合うのである。いやあ、よかった。
ネコノスの通販サイトでは、封筒仕様バージョンの予約受付は終了しちゃいましたが、フランス装版はまだまだお求めいただけるので、よろしくお願いいたします。
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