アポ・メカネース・テオス
ベルドラン宙域から離脱した円錐形の小型スパソーロフは、量子コアから排出されるエドロムを二度噴射させて転針し、アルタミラへ向けて超次元航行に入った。次元層を越えるときの薄気味悪いグロールが船内に響き渡ると、その直後にあらゆる物質が消えた。船室の壁も目の前にあったコンソールも計器パネルも、それを操作する自分自身の手も消えていた。
何もなかった。光さえない次元の中を意識だけが移動していく。
超次元航行に於いてはアウムの秩序が崩壊する。漆黒には過去と現在と未来が同時に存在したが