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3-1-0 【解説】備長炭の『爆跳の3要素』

備長炭のハネ(爆跳、爆ぜ)ってイヤですよね。突然ハネるし、うるさいし、飛び散るし。

自分がヤケドする時もあるし、お客さんにケガさせたら賠償ものです。

しかもあることを知らないと、原因の見当がつかないので対策も立てられないんですよね。

そのあることというのが、

『爆跳の3要素』。

これを理解して対策さえすれば、ハネは絶対になくせます!

輸入品でも国産品でも、炭種を問わず使える知識です。

そこで今回は炭火初心者でもベテランでも必ず理解しておいてほしい、備長炭の『爆跳の3要素』についてダイジェスト版で解説します。

きっと明日からの着火作業が楽しみになりますよ!

こんな経験や悩みのある方に読んでほしい
・突然の爆跳で、大切な食材をダメにした
・Amazonや楽天で炭を買ったら、爆跳した
・業者に言って交換したけど、改善されない

今回お伝えしたいこと
・「爆跳=炭の品質不良」ではないこと
・ 爆跳は3要素が揃わないと発生しないこと

こんなことが書いてあります
・爆跳の3つの要素(成立条件)について
・3要素は主因、素因、誘因に整理できる
・3要素は図で覚えたほうが、より効果的
・具体的な対策例は3-1-1以降で!


①そもそも爆跳(ばくちょう)ってなんですか?

ネットや本を調べましたが、いろんな定義があり正式な定義はなさそうです。

Wikipediaの定義と説明がもっとも広義で統一的なものだと思います。

爆跳とは
熱せられた木炭が突然爆ぜることを爆跳(ばくちょう)という。ひどい場合は木炭の爆発的破砕と「パーン」という鉄砲でも撃ったような大音量が周囲に響き渡るので注意が必要である。これは木炭の繊維質に閉じ込められた水分や揮発分が、急激な高温でガス化・膨張し、それが可燃性揮発分の繊維質内での小爆発を起こすことが発生原理である。

Wikipedia/木炭/爆跳


②「わざと爆跳させる実験」からわかった、爆跳に必要な条件の数は?

一般的な爆跳原因の説明
・炭の穴が密閉状態になり、そこに水分が含まれていると大きな爆跳になる
・湿気、炭質、樹脂成分、芯の赤身が原因になる
・ガス、水蒸気、加熱、未炭化が原因になる可能性がある
・老木、芯が跳ねやすい
・湿っている、未炭化、老木、急加熱

一般的な爆跳対策
・できるだけ弱火で加熱
・湿気を防ぐ、密閉保管
・ガス日ではなく、炭で着火する
・天日干し、乾燥剤

ネットや本から抜粋

一般的に爆跳原因と対策はこのように説明されますが、私はとくにこの「原因の説明」に納得がいきませんでした。

この条件の炭を着火させても、爆跳しないことがあるからです。

そこで国産品、輸入品あわせて10種類の備長炭を「あえて爆跳させる実験」を繰り返してみました。

この実験を通じて考えたのは、

・一般的原因は成立条件の1つに過ぎない
・爆跳の成立条件は少なくとも3つは必要
・ちゃんと整理しないと覚えにくい

ということです。私の頭の中ではこんなイメージ↓

3つの条件(要素)がそろってはじめて原因となる

それ以来、私が担当するお店には爆跳の原因と対策についてこう説明するようにしています。

備長炭がハネるのは3要素が揃った時だけ。
3要素が揃わないようにしてください!

③『爆跳の3要素』とは?

では、私が考える爆跳の3要素についてもうすこし具体的に解説します。

『爆跳の3要素』
爆跳の3要素とは、木炭の爆跳が成立するための3つの要素である①水分・ガス分、②炭の物性、③急加熱のことをいう。

とくに備長炭の爆跳には少なくともこの3つの要素が必要であり、1つの要素が欠けても爆跳は起こらない。構成割合が変わるだけで、ほかの木炭にも適用できる。

⚠️あくまで私説です。業界に公認されていません。

■『爆跳の3要素』を図にすると?

『爆跳の3要素』図

■主因・素因・誘因について補足説明

『爆跳の主因・素因・誘因』植物病理学から転用

■この図を使って、どのように爆跳対策を考えるの?

対策を考えるときは1つの要素について固執するとシンドイです。

たとえば、主因「水分やガス分の吸蔵」のみに固執して包装や乾燥剤にどれだけコストをかけても、水分やガス分をゼロにはできません。

また、素因「炭の品質不良」のみに固執して何度も炭を交換しても、備長炭は箱どころか1本1本状態が違うので、ハネない炭を探すことは無謀です。

不可能な対策で苦労するより、できそうな対策をいくつか組み合わせる方が結果的に爆跳の確率を大きく下げることができます。

長くなるので、具体的な対策例は来週以降で!

今回のまとめ

✓ 備長炭が跳ねる原因は特定できない
✓ 原因を強いて言うなら、3要素の組合わせ
✓ 3要素がそろわないと爆跳はしない
✓ 3要素を図で覚えて、バランスよく対策!

備長炭の着火に慣れるまでは、

図を覚えて、対策!
図を覚えて、対策!
図を覚えて、対策!

これを何回か繰り返せば勝手に体が覚えてくれるので、もう爆跳は怖くなくなります。

一度覚えてしまえば、爆跳なんて大したことじゃないですよ。


今回の解説は以上です。

※『爆跳の3要素』図は備長炭の爆跳に関連しそうな論文や業界紙、書籍を調べつくして、15年前に作成した図です。今まで公表したことはありませんが、炭火研修会や炭火勉強会などで何度か使用した際には「理解しやすい」「ネットでシェアしたほうがいい」と高評価をいただきました。この図があるだけで原因の全体像を視覚的に把握できるようになります。

対策を自分の頭で考えられるようになれば、仮に爆跳をゼロにできなくても悩むこと自体はなくなります。

じぶんの頭で考えて、爆跳のない未来へ!

説明をだいぶ省いています。わかりにくかったらぜひtwitter等でコメントをください。


次回予告

もう少し詳しく知りたい」と思ってくれた方、ぜひ3-1-1以降も読んでみてください。

次回以降は、『爆跳の3要素』について1つづつ深掘りし、具体的な対策例を提案していきます。

ではまた来週も、よろしくお願いします!



主な参考文献:

①『木炭の博物誌』岸本定吉 総合科学出版

②『わが国木炭の精煉に関する研究』岸本定吉

③『紀州備長炭の世界』紀州備長炭熊野会議実行委員会
④業界紙『木炭』全国木炭協会 1959年3月〜5月号


⑤『白炭の爆跳防止に関する研究』高知大学 小沢 一郎・吉川 正訓

⑥『5.5 植物の病気』京都大学OCW 奥野哲郎・三瀬和之・高野義孝

⑦『爆跳性木炭について』高橋憲三 国立国会図書館デジタルコレクション


Writer:

ホンダタロウ/炭火研究家 @HIROBIN

ふだんは備長木炭の生産→流通→消費のうち、
「流通」を担っています。

世界の伝統文化・アート・JAZZが好きです。

Instagram:@hirobin___taro.honda___
twitter:@sumibinogakkou

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