『羊と鋼の森』読了 宮下先生への愛と感想
宮下作品が大好き
私は、宮下奈都さんの作品が大好きだ。
好きな作家を聞かれたら、必ず彼女の名前をあげる。
残念なことに、一度も聞かれたことはないが。
タイトルにも書いたが、宮下さんの先品には、静けさと温かさが共存しているのが好きだ。
作中で良いことがあっても、悪いことがあっても、表現はつねに静か。
読者の心をぐわんと動かさずにしっとりと温める。
宮下さんの作品は、私が落ち着きたい時のよりどころだ。
一方で、物語が進むと、何かが変化している。
いつ変化したか気が付かない間に。
近所の静かな公園のベンチに腰掛けていたと思っていたのに、
気がついたら小高い山の上の高原に佇んでいた、というような。
あらすじ
高校生の外村は、偶然調律師の板鳥と出会胃、調律師を目指し始める。
悪い人がいない
悪い人が出てこないところが、心がざわつかない一要因だ。
主人公の周りには極端な個性の人物はおらず、皆平凡で、いいひとだ。
嫌味な人物はいるが、「ご愛嬌」の程度だ。
熱血成長記じゃない
この物語、表現を変えたら体育会系成長記にできると思う。
漫画『ハイキュー!』や、『ボールルームへようこそ』など、
初心者が経験者の中で成長していくスポコン漫画のように。
上記はスポーツ作品だが、ピアニストの話である漫画『四月は君の嘘』のコンクールシーンは、息を呑む緊張感とスポ根魂を感じる。
これらのように、成長記は熱血物にできるのだ。
それを、宮下さんが書くとしん、とする。
それなのに、不完全燃焼感は全くない。
気がついたら主人公が成長している。
それは、主人公が運よく成長したのではない。
物語の過程で努力を重ね、沢山悩む。
その上でも失敗を繰り返し、それでも進む。
そして、「結果」だけの成長じゃない。
精神的にも、主人公は変化する。
調律を通して、静かに、しかし着実に、主人公は変わっていく。
主人公の静かな奮闘を見守ることができて本当によかった。
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