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『そして、バトンは渡された』 親ガチャへのアンチテーゼか? ※ネタバレ注意

読了

さすがの瀬尾まいこ先生、ステップファミリーという重い題材を、あたたかく、さらりと書き上げていた。

あらすじ

高校生の森宮優子は、これまで家族の形が7回も変わった。
しかし、全然不幸じゃない。

主人公の強さ

とにかく、主人公・優子の精神力が強靭である。
親が変わっても情緒は安定しているし、友人にはぶられても何も気にしない。

捻くれ者の私は思った。
「優子の強さに頼りすぎじゃん?!」と。

確かにそんな子はいる

確かに、近年は「愛着障害」や「心理的虐待」などの言葉の普及によって、
「親ガチャ」という言葉が生まれたりと、親が悪者扱いされることが増えた。

その上で、親の言動のせいで子供の発達に悪影響を及ぼしたのだと。
その風潮は、全国の親への風当たりを強くしている。

だからこそ、ステップファミリーでも愛されていたら子供は幸せなんだよ!という意見は必要なのかもしれない。

それに、子供によって受け取り方は異なる。
環境の変化に強い子はいるし、傷つきからの立ち直りが早い子もいる。

しかしだ。しかし…。

梨花さん、やりすぎだ。

さすがに、梨花さんが破天荒すぎた。
梨花さんは、優子の2番目の母であるが、夫と離婚、再婚を繰り返し、優子を引っ掻き回す。

最終的に、梨花さんが優子のために行っていた離婚と再婚であった、というオチになっているが、読者としては、ちょっと受け入れ難い。

全て、優子の強さゆえ、美談となっているにすぎない。

この作品において、優子は全ての親から愛されていたから、リアルでも家族はいっぱい変化していいよ!とは違うと思うんだ。

これは、先天的に環境の変化に強い、優子、の話だ。
これを「親ガチャ」へのアンチテーゼとするには特例すぎると思った次第である。


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