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1月の「工作とブックトーク」の会レポート

今回のテーマは「オオカミってこわい?」です。絵本を通して「葛藤」という心情に出逢いました。

最初は、「オオカミと7匹の子ヤギ」の紙芝居。ご存知、怖いオオカミが子ヤギ達を丸呑みしちゃうお話しです。

子ども達は食い入るように見ています。よく知っているお話って、子どもは大好きですよねー。結末がわかっていて、そこに行き着くまでのプロセスを楽しむっていう感じでしょうか。

「へえ〜、トマトの味噌汁も意外と美味しいんだね!」
という新しい発見もスリリングだけれど、
「やっぱり味噌汁は豆腐にお揚げに刻んだネギだよねー」
と、定番の味にほっと落ち着く感じに似てるような。

さて次のオオカミのお話は「あらしのよるに」です。
昨年収録したものを上映しました。
2020年3月、舞台公演を予定していた「あらしのよるに」は、コロナ蔓延で延期。落ち着いたら実現させたいと願っていましたが、なかなか「その時」は訪れませんでした。

「ナラティブシアター土の子」さんにご相談して、昨年の8月収録して上映という形で子ども達に届けることにしました。

舞台公演を通して演者と来場者がリアルに出会い、場と空気を作っていくことを大事にしながら全国で活動し続けておられる「ナラティブシアター土の子」さんとは何度もご相談させていただきました。

それ以上に「土の子」さんの中でたくさん考えてくださったことと思います。そうして今回上映会が実現することができました。心から感謝しています。

子ヤギとのピクニック中にお弁当を落としたオオカミはお腹が空いてたまりません。友達になったとはいえ、目の前には「エサ」でもある子ヤギ。「エサ」なのか「友達」なのか・・・。オオカミの葛藤が、映像を見る子ども達の心いっぱいに「不安」として広がっていきます。

舞台の後半、2匹が洞穴に消えた場面。子ヤギの悲鳴でその不安がピークに達し、会場にピーンと張り詰めた空気が広がります。
お母さんとは離れた席で見ていた小さい女の子が、とうとうお母さんの席に駆け寄ってお膝に抱きつきます。お母さんは女の子をそっとかかえ上げ腕の中に抱いて一緒に続きを観ます。

オオカミと子ヤギがお互いに何者か分からない中で出会い、一緒の時間を過ごして、そしてさよならをするまで。子ヤギはエサなのか友達なのか・・・葛藤を抱えたオオカミが最後に子ヤギにかけた言葉は・・・。

子ども達がとっても大好きなあの言葉。
大人だって大好きかも!

舞台の様子


実はこのお話は、まだまだ続きがあるのです。11年の間に作品は7つとなり「まんげつのよるに」で完結となっています。一つ前の「ふぶきのなかで」の切ない結末に、読者からの反響がとても大きくて7作目が生まれたそうです。

やさしい言葉で深い真理が語られる物語に、子ども達も大人達も目を離さずにはいられなかったのではないでしょうか。

ヤギを襲って生きるオオカミ達とエサにならないように逃れながら生きるヤギ達。
それが生きるという現実。
偶然にも出会ったオオカミとヤギが、その現実を超えて友達でいようとするのですが・・・。
人間の世界に置き換えながら大人が読むとなかなかシンドイ。

きむらゆういちさんは「僕はこんなふうに思うんだ」と、静かにそして豊かに視野を広げてくれます。

「オオカミと7匹の子ヤギ」は、お母さんがちゃーんとこらしめてくれるから大丈夫という結末に身を置いた上で、プロセスを楽しむ。オオカミって怖くって、ずる賢くて、弱いものを丸呑みにする悪者だという全体の了解で成り立つ物語。善悪が明確であるというシンプルさと最後は弱いものが助かる結末の安堵感。
この予定調和によって平穏が戻ります。

一方で「あらしのよるに」は
オオカミはオオカミとしての、ヤギはヤギとしての現実があるけれど、そこを越えて仲良くなることはできるのか?
ずっと仲良しでいてほしいけれど、もし自分が子ヤギだったら、オオカミだったらできるのか?
と、心が揺さぶられてしまう。
本性とか、理性とか、矛盾とか、葛藤とか、簡単に答えの出ない物語。

そんなお話に出会いながら、優しさや強さが育まれていくのでしょう。上映会に魅入っている子ども達の後ろ姿を見ながら思い巡らしました。

工作の時間は、オオカミと子ヤギのカードを作りました。

「肩を組むヤギとオオカミ」・「待ち合わせの木と2匹」のカードを作りました。
イラストは、中学生のこのちゃんが描いてくれました
高校生ボランティアこーちゃんと6年生のお手伝い助かりました。ありがとう!

定員を超えるご参加、ありがとうとざいました。次回は、2月13日です。図書館でお待ちしています!

ナラティブシアター土の子の飯原さんからコメントが届きました。

収録にあたって施設管理の方に、コロナ対策としてどういう形で使用すればいいか相談しながら準備を進めまたことを思い出しました。飛沫の問題、換気、使用後の道具や床の消毒・・・1日かけての収録ですので、食事についても課題があることがわかったり・・・。
舞台芸術に関わる方達は、丸2年ずっとご苦労されているのだと思います。丸2年たった今でも、この感染症は未知なところも多いのですから、誰も明確なガイドラインを作ることはできないでしょう。飯原さんのおっしゃる通り「固定的に考えず、その時のベスト」を見つけながらの活動が続けておられることをあらためて感じました。生の舞台を自由に楽しめる日が来ることを願っています。


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