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【005】高速? 低速? 充電ロシアンルーレット

 車で出かけて、わざわざガソリンスタンドの場所を調べた経験なんて、それほど多くない。うっかりガス欠寸前とか、峠道に入る前に入れたいとか、特別なケースだけ。ふつうは、走っているうちに見かけたスタンドで給油したら済む。

 ところが電気自動車(EV)では、そうはいかない。ホンダeのHPによると、全国の充電器設置数は約2万1400基。減り続けるガソリンスタンドが3万カ所を切ったことを考えたら、逆転も近そうに思える。でもそれは錯覚。設置数の3分の2は普通充電器なのだ。充電に時間がかかるからドライブ中は使えない。電欠寸前の緊急時、あるいは宿泊先で夜間につなぐとか、たまには助かりそうだけど。

 立ち寄って充電してまた走り出す。といった具合に、ロングドライブで当たり前に使える急速充電スタンドは約6900基。カーボンニュートラル(脱炭素化)の掛け声の中で、充電網は整いつつあるるものの、まだまだ心許ない。なのでいまのところ、EV乗りの遠出には、充電スポット探しが欠かせない。

 しかもホンダeは街中で乗ることを想定した「都市型コミューター」。カタログ上の航続距離は283キロぽっち。日産リーフなら458キロ、テスラなんて1000キロ走れちゃう車種もあるから、それほど充電に敏感ではないかもしれない。ホンダeで街を出るのは、なぜわざわざママチャリで長距離サイクリング?みたいな感覚に近いかも。

 出先での初充電体験は、東京から訪ねた埼玉県羽生市だった。仕事終わりで電池の残量は30%台。充電しないと帰れない。さっそく、純正ナビの「充電スタンド検索」を試してみる。

 画面にタッチ。急速充電のできる場所が、車の現在地から近い順に表示される。ファミリーマート、続いて三菱と日産の販売店、イオンモール。少し離れているものの、昼ご飯がまだだったのでイオンモールに決定。ナビの案内通りにすんなり到着。簡単簡単。

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 ところがじつは、ここからがロシアンルーレット。ホンダeのナビは「急速」と「普通」だけは区別して検索する。でも、急速充電器は出力がバラバラ。低速(20kW未満)、中速(20-40kW)、高速(40-90kW)、それ以上の超高速。同じ時間で充電できる量は後者ほど多いのだが、ナビにはこの情報は入っていない。出力が低い充電器(低中速)だとハズレだ。「満タンお願いします」と入ったスタンドで「給油は半分だけど値段は一緒ね」と言われるようなもの。

 この事態を回避するには、ナビが教える充電スタンドの情報を、ネットで検索して照らし合わせればいい。複数の「EV充電マップ」が公開されていて、設置数やワット数まで丁寧に教えてくれる。だけどせっかくのEV放浪ライフ、ギャンブル気分も楽しみたい。検索は封印してイオンモールの屋上へ。これはどうやら……高速だ。当たった〜。さて、充電の間にフードコートでご飯でも食べてこよう。

(夕刊フジ/2021.9.30)

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