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こくまん

一日の半分以上女性のことを考えている。

車を運転していたら、「こくまん」という看板を見つけた。正式名称は「米のこくまん」なのだが、どうにもこうにもこくまんという響きが気になって仕方がない。

日常会話には決して出てこないこくまん。その意図は濃くなのかなのか?ストレートに言ってしまえば、まんの状態、つまり具材の状態については、その具材を見ることが許された彼氏・旦那・フレンドだけが通行可能な”関係者入り口”なのである。

そんな大事な入り口を”濃さ”で表現するのは人としてどうか?実は過去に1人だけ、関係者入り口を濃さで表現する猛者がいた。そのライオンは、地元の同級生である大林君だ。

大林君は高校進学後、直ぐに彼女(ブス)を作った仕事の早い男である。そして会う度、彼女とのラブラブエピソードを定期的に教えてくれた。当時現役バリバリの童貞だった私にとっては生きる教科書であり、優良メルマガである。

・どこどこ連れて行くと喜ぶ
・道路は自分が通路側を歩け
・たまに冷たい態度をとる
・連絡は少し時間置いてから返信する
・財布の内側に非常用のゴムを完備

今なら東京ウォーカーやSPAを見ていれば直ぐに知れる情報だったものの、童貞で情報感度が低かったことで、大林君の口から出る実体験に何度も「なるほどぉ」と頷いていた。

そして、あの日、ついに”こくまん”というワードが出てくる。

いつものよう公園で集まって話していると、途中で大林君の彼女自慢時間が始まった。そして10分程経過した頃、彼女との関係が先に進んだことを聞かされる。

厨二病らしく、アルファベットで表現するならば、今までAだったのが、BそしてC未満まで進んだという。

当然ながらそこに居合わせた童貞達は驚くばかり。そして、おパンティの向こう側、つまりモザイクの先がどうなっているかを教えてくれた。

『臭かった』

ん?え?

えええええええええ!?

夏場ということもあり、関係者入り口周辺の酸味が増していたようで、顔を近づけたら、嗅いだことない異臭だったらしい。

『チーズが腐ったような匂いだったから、途中で鼻つまんじまった笑』

いや、つまんでんじゃねーよというのはさておき、夢見ていた先は臭かったのか・・・

『濃かったね。こくまんだったわ』
大林君がそう言うと、もうそれ以上聞くものはいなかった。

しかし、私は当時から思っていた。

こくまんって何?

顔を近づけた大林君にとっては濃くて酷なという意味かなと思っていたものの、彼女さんからしても酷な体験だったはず。そしてそれを他の人に話されるというオマケ付きだ。

こくまん。こくなまん。酷なまん。

以降、私のエロ妄想は大きくトーンダウンした。高校生になって髪を伸ばし始めたのも、髪に整髪料をつけ、Yシャツの裾に香水をつけ始めたのも、全て入り口に近づくため。その目標の先がこくまんだなんて・・・

それから20年以上経過する。当の昔に童貞からの卒業はできたものの、未だに関係者入り口周辺に対する疑念が残っている。

全て、全て大林君のせいである。

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