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禅寺修行体験~二ヶ月間の得難き日々

大学4年生の時に2か月ほど禅寺修行体験をしたことについて書こうと思います。

 話が少し遡りますが、大学二年生の時に初めて家の近くのファミレスでアルバイトをしました。キッチンスタッフ(厨房)としてでしたが、当時病気療養明けだったからか全く仕事についていけず、4か月で辞めることになりました。その後も車のエンブレムに傷がないかをチェックする工場や引っ越しのアルバイトをしましたが、どれも続かず直ぐ辞めることになったのです。社会で働くということに対して挫折感を味わいました。

 大学4年になり、なんとか変わりたい、成長したいと考えていた時、父が親交を持っていた奈良の禅寺を一人でお訪ねすることがありました。その方は一人でお寺を守っている方でしたがとても柔和な笑顔に魅力を感じ、即座に直感が働き、だめで元々と思い、

「もし可能なら、修行させていただけませんか」とお聞きした所、なんと春休みになったら来いと言って下さったのです。

頭を坊主にして気合十分に2ヶ月間の禅寺体験生活が始まったのですが、始まってすぐに御老師のもの凄い、雷のようなお叱りが落ちました。確かトイレットペーパーを使った時にきちんと点線に沿って切っておかなかったことに対してです。リンゴの皮を厚く剥いて稲光が落ちたこともあります。トイレットペーパーの件では「後に使う人の事を考えろ」、リンゴの皮むきでは「物を大切にしろ」ということだったと今なら分かりますが、当時は只々稲光の激しさに驚いていました。

基本的には作務(掃除)の毎日でしたが、老師の作務は草刈りにせよ掃除機掛けやモップ掛けにせよ、とにかく早かったです。たらたらとするよりもスピードを上げた方が集中するし、質も上がるものだということを実感しました。

当時、家事などまるでしたことがなかった私がいきなり三食作ることになり、てんてこ舞いになりました。お味噌汁の出汁という存在も知らず、2か月間出汁無しのお味噌汁をお出ししてしまったことも、申し訳なく思っております。

2か月という短い間でしたが、本当に学びのある日々でした。老師以外とは誰とも関わらず、文字通り「一人」になったおかげで様々なことをゆっくりじっくり考えることができました。そして、老師から何より強く感じたことは、他人の私を成長させようと親身になって叱ってくださったことへの有難さです。後々、「叱られるより叱る方が疲れるんだぞ」と笑いながら言っておられました。本当にその通りだと思います。老師が与えてくださった教育の美しさを確かに感じていました。

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