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鹿児島県出水市の本町通り商店街での取り組みを振り返る【1/3】

テンラボが鹿児島県出水市の商店街活性化事業に関わり始めて5年。今年で6年目に入りました。
その初年度から関わっているのが、わたくし、テンラボの理事兼事務局長を務める、飯福あすみです。

ここでは、この5年間で取り組んできたことをご紹介していきます。そしてまさに今、この6年目に取り組んでいることもまた今後こちらでご紹介していきたいと思います。

【1年目】理想の商店街像を描き、小さく実践する。

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 1年目に取り組んだことは、『出水本町通り未来会議』と題して、商店街で実際に商売をする人たちと、商店街の未来を考えていくことに思いを寄せてくださった市民が集まり、ワークショップ形式で商店街の魅力・課題の洗い出し、理想の商店街の姿を想像し、そのためにできる一歩を考え、実際に小さく実践するところまで取り組んでいきました。

ここでは"小さく実践"と書きましたが、実際はとても大きな一歩だったと思います。そのくらい、皆さん一緒に踏ん張ってくれました。

 この時間を通して生まれてきた、理想の商店街像を一つの言葉にしました。それは「あきない(商い・飽きない)商店街」。その言葉の通り、商店街はそもそも商売のまち。まずは商売として成り立つこと、そして、いつ来ても飽きないね、と言ってもらえる場が生まれていること。

わたしは今もこの言葉を心にとめています。"あきない商店街"をつくるために、いま私ができることはなんだろう。シンプルだけど、実践するのはなかなか難しいです。だけど、楽しい。

【2年目】商店街にある空き店舗の改修・活用へ。

 2年目に取り組んだことは、まずは1年目の取組みを外の人たちにも知ってもらおうということで、まちづくりヒューチャーセッションと題し、前半は宮崎県日南市の油津商店街で当時商店街活性化に奮闘する木藤亮太さんに登壇いただきました。刺激とエールをいただく、60分間でした。

フューチャーセッション_1

 後半は、未来会議のメンバーから昨年の取組みのプレゼンとそれぞれの取組みを前に進めていくためのグループディスカッションを行いました。このとき、南九州市頴娃町からは観光プロジェクトリーダーの加藤潤さん、大隅・鹿屋からはリノベーションまちづくりの川畠康文さん、はるばるお越しいただいたお二人はグループディスカッションに入ってもらうだけ…という、当時の私はこのすんばらしい3大ゲストの舞台作りも、場の設計も甘く…なんと勿体ないことを(笑)

この場から始まった2年目ですが、この2年目というやつが、本当に難しい。ある意味、1年目でやり切った感も正直あったと思います。かなりご負担もかけたと思います。でもだからこそ生まれたものもあります。

 それからも月1ペースで続けていた未来会議に、商店街に空き店舗を持つオーナーさんから「いま持っている空き店舗をチャレンジショップのような形で活用できたら、と思っているんだけど…」とご相談が。その後、話を持ってきてくださったオーナーさんの物件活用には至らなかったのですが、これをきっかけに未来会議メンバーのなかで"空き店舗活用"というひとつのテーマが浮上しました。

 ある日、メンバーの一人から「ここの空き店舗、未来会議で活用してみることができるかも…!」と連絡が。それがここ、約20年前、出水の音楽発信拠点でもあった『文化堂』というレコード店跡。

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 「商店街活性化のために頑張る皆さんに使っていただけるなら…」とオーナーさんは私たちの話に耳を傾けてくださいました。もう駐車場にしてしまおうかとも考えていらっしゃったということで、本当にこれはタイミング。ありがたい話でした。

私自身も、この停滞気味な2年目にできることは…と悩んでいたのは正直なところです。決して停滞していることが悪いわけではありません、ただ行政事業として受けている手前、何もしませんでした、とは当然言えません。

まちづくりも、活性化も、ここに関わる皆さんの多くは、本業+αであると当時の私は考えていました。だからこそ、無理しないことももちろん大事なのですが、気持ち的な部分も含め、みんなを引き上げながら…そのバランスに悩む2年目でもありました。またこの感覚は3年目にも続いていきます。

 オーナーさんの理解もあり、さっそくこの文化堂を、みんなが集える場所-レンタルスペースとして活用すべく、夜な夜なDIY作業が始まりました。

改装作業_1

改装作業_2

 みんなの力が集結すると、すんごいです。材料費もほとんどかかりませんでしたし、何よりみんなでできるからスピードも速い。何かに悩んだり、迷ったときは、誰かがヒントや答えをもってる。仕事終わりの夜な夜な作業でしたが、それはあまりにあっという間で、個人的には少し寂しさを感じてしまうほどでした。そして完成した新たな文化堂はこちら。

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正面

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 そして文化堂のロゴも新たに。ロゴデザインは「コトカキ屋」の小笹雄一郎さん。私たちの想いをくみ取りながら、新たな場にふさわしいとても素敵なロゴを作ってくださいました。

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 そしてお披露目の日。2017年1月29日。空き店舗活用の第一歩、"新たな"文化堂の門出を祝いました。

お披露目会_1

お披露目会_3

新聞_1

 さて、場を作ったからには使ってもらわないと意味がありません。そして使わなくてもランニングコストが発生しつづけるのは場をもっている以上、仕方のないことです。実際にレンタルスペースとして使っていただけるよう、情報発信と活用に取り組みました。

【3年目】活動は続く。悩みながらも進んでいった結果見えてきた自分の役割。

 3年目に突入。引き続き話し合いの場を持ちながら、新たなイベントを開催するなど活動を続けていきました。

 「なんか…ずばぬけて面白いことやりたいなあ」という話から、こんなイベント。題して『商店街の小さな夏祭り~めっちゃ急な流しそうめん~』。

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 わかりますか?この急降下。シュぅっとすごいスピードで流れてくるそうめん。子どもたちは大喜び。大人も必死。いま振り返ってもこんな1日は、おそらくこのタイミング、このメンバーでしか作れなかったと思います(笑)ちなみに上から見たらこんな感じ(笑)

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 誰ですかね、こんなのを考えたのは…。ひとまず私の脳みそからは一生生まれることのないであろうアイデアでした(笑)

 しかし、このイベントはただ面白いことがやりたかったわけではなく、ちゃんと目的もありました。商店街にあるお店の一品をPRする場を、みんなが楽しめるイベントとして仕掛ける、という意図がありました。

 それがこちら。商店街で100年以上の歴史を持つ 藤本醸造店 のめんつゆ。こちらのPRを兼ねたイベントでした。

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 当日来てくださったお客さんは、まずは"めんつゆタンク"から器にめんつゆを注ぎ、めっちゃ急なそうめん流しに向かう…。なかなかにシュールな光景(笑)

 そこから商品の味を知り、購入につながったり、商店街に老舗の味噌醤油屋さんがあることのPRにつながる、きっかけにはなったかなと思います。

当時を振り返ると、いったいどれだけの効果があったのか、検証まではしませんでした。それよりも、初年度の実践のなかで始まった『商店街の小さなマルシェ』の流れに続き、『商店街の小さな夏祭り』を商店街のちょうど中心に位置する中町駐車場を会場にできたこと。

みんなのアイデアとマンパワーがなければつくることができなかった1日を、商店街でつくれたこと。その価値のほうが大きかったように思います。しかし、イベントはイベント。その日限り、となれば、もっと持続的に活性化につながる取組を考えないと…そんな焦りがあったことも事実です。

さて、長くなりましたが前編はここまで。後編に続きます。


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