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ベルリンは晴れているか


去年の今頃、どっぷり漫画にハマってしまい、ぷつりと小説を読まなくなりました。元々スイッチが入ったように本を読む時期と、ぱたりと読まなく時期があります。

それでも気になる本はチェックし、買ってもいたので積読がまだまだ…。通勤時間に読もうと、この本を引っ張り出しました。

ベルリンは晴れているか  深緑野分

初版から気になっていたのですが、その時は他に読みたいものがあったので文庫が出たら買おうと決めてました。いざ、出たのを知って購入したものの積読に。通勤時間では進みが遅い!となり、一気に読んでしまいました。

あらすじをざっくり。

ナチスドイツが敗戦し4カ国の統治下であるベルリンで、恩人の死を知った少女が、自分も容疑をかけられながら彼の甥に訃報を伝える為に出発する。何故か愉快な泥棒と共に。

というもの。ドイツ語に全く馴染みがないため(元々カタカナが苦手というのもあり)、出てくる人名や場所が覚えられなくて大変だったという本音。カタカナを文字の羅列として頭に入れてしまうため、"この並びさっきも出てきた…あぁこの人ね"みたいにページを戻ったりもしました。何故かカタカナ苦手で、高校の時も覚えられないから世界史選択しなかったなぁと思い出したり。

話は逸れましたが、テーマでいえばミステリーだと思います。2019年のこのミステリーがすごい!で第2位なので。確かにミステリーで、読み終わった時に霧が晴れ始めたような、靄から光が見えたような、そんな気持ちになりました。タイトルのような気持ちになりました。

それでも、この本を読んで1番に感じたのは"怖い"という印象。舞台が戦時下なので、戦争に対する怖さもあるのですが、人々が洗脳されていく様や差別、何より人間の弱さに怖くなります。でも人間の弱さって言ってはいけないかもしれない。自分がもし主人公の立場なら、怖くて周りに合わせてしまうかもしれない。何もされていないのに、誰かを差別し侮辱し傷つけてしまうかもしれない。そして、この物語はフィクションだけどきっと何処かで起きていた、あるいは今も起きているノンフィクションかもしれないという恐怖がありました。

恥ずかしながら、戦時中のヨーロッパについては知識不足で。ヒトラー率いるナチスドイツについては歴史で習うような知識はあったけれど、その頃の国民の生活などはほとんど知りません。小学生の時にアンネの日記を読んだ記憶があるけど、何も知らなかったんだというショックもあります。そのショックというか、衝撃というか。それすらも恐怖だった。

日本で生活して、戦争を経験していない現代に生きる中で、わざわざ知らなくていいこと、見なくていいことかも知れないけど。このまま見て見ないふりをするのは嫌だという気持ち。上手く言葉に出来ないけど。

同時に、あぁだからやっぱり私は本が好きなんだと思いました。フィクションを通して歴史を見ること、知らなかったということを知ること。これが私が本を読む根源というか、その根本にある理由なんだと改めて思い知りました。

この物語の中でも本は重要な役割をします。主人公にとって無くてはならないもので、私との唯一の共通点かもしれない。

久しぶりに小説を読み、火がつきました。また明日からも積読を消費したいと思います。

ぜひ読んで頂きたい一冊です。

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