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戦場のコックたち


「ベルリンは晴れいるか」を読み、深緑野分さんの作品が気になり。

戦場のコックたち -深緑野分

軍隊のコックって、全く知らなかったんですけど、特技兵というんですね。もちろん武器を持って戦いもする。てっきり食事は缶詰とかの非常食みたいなもの(レーションっていうんですね)だけだと思ってました。もちろんそれも食べるけど、可能であれば野戦キッチンや簡易コンロで料理もするんですね。

主人公のティムは、祖母のレシピをお守りにノルマンディー降下作戦で初陣を果たします。食べることが好きだから特技兵に。しかし、コックは他の兵士から馬鹿にされる。(食べれなきゃ死活問題じゃろがい!!と食べるの大好きな私は思った)

コック仲間のクールで感情が読めない、そして味音痴なエド、イケメンでチャラそうな狙撃手のライナス、通信兵のワインバーガー、ティムが苦手としているダンヒル。明るくノリがいいディエゴ、毒舌な衛生兵のスパーク。

そんな仲間達と日常の謎を解いていきます。日常の謎ってなんだよってなると思うんですけど、何故かパラシュートが大量に集められたり、オランダで夫婦の怪死体を見つけたり、配給品のクソまずい粉末卵が大量になくなったり。(粉末卵って何…てなった)

エドはいつも冷静で感情を表に出さないけど鋭い推理をしていきます。ティムとエドの友情には泣きそうになりました。
でも忘れてはいけないのが、舞台は戦場であるということ。最初は楽しい謎解きの感じですが、段々と戦場であることに引き戻されていきます。そして、ティムや仲間達も戦いを重ねるうちに変わっていきます。戦争は心を蝕んでいく。

気弱だけど優しい好青年って感じのティムが、殺すことを正当化していくのが読んでいて辛かった。明るく陽気なディエゴもどんどん心が壊れていく。そしてドイツへ侵攻するにつれて、ナチスが行っていた非道な状況を目にする…

ティムが家族からの手紙を受け取り、中の家族写真を見た時に不安に駆られるんですよね。自分はもうここには戻れないのかも知れない、自分がいる世界と家族がいる世界が違いすぎると。てっきり家族からの手紙で喜ぶのだと思っていたので、私自身がいかに兵士たちの気持ちが分からないのかということを思い知った。そりゃ分かるわけないんだけど。戦争を経験していないし、ぬるま湯みたいな世界で生きているんだから。

だからこそ、改めて勉強をしなければいけないと思いました。知らなければと。深緑さんのnoteでは、「ベルリンは晴れているか」の取材資料の記事があり、それを読ませていただいたのですが、凄い!の一言。

実際に現地を訪れて、当時の地図も使いながらの取材。ここまでしないと作品は出来ないのか…という気持ちと、ドイツに行きたい!という気持ちになりました。興味のある方は是非こちらの記事も読んでみてください。アウシュヴィッツを訪れた記事は、言葉に出来ないですが、読んでよかったと思いました。


(深緑さん…ファンになりました…!🥲)


fin.

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