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出会い喫茶に女性客として行ったけどビビって逃げ帰った話

初めての東京暮らし。外は好奇心をそそる誘惑でいっぱい。
岩手に住んでいた頃と違って家の外に出ても泣いたり怒ったりする家族は一人もいない。

誰も私の行動を制限する人がいなくなったから、外に出るのがめっちゃ楽しい!
今日はどこに行こうかな……

と、そんな感じで己の好奇心に忠実になってしまい身の丈に合わない遊びをした田舎者の醜態ですw

出会い喫茶とは

都会はネカフェの料金がめっちゃ安いや!最高!
(地元のネカフェ料金は都心の3割増くらいだったはず)
よっしゃ!気軽に行ったろ!
都会すげー!

……と思ってたら、フォロワーの女性が私の意表を突くことを教えてくれたのが事の発端。

あまり気軽に行くような場所じゃないけれど、という前置きをしつつ出会い喫茶の話をしてくれた。
女性は完全にタダで使えるからネカフェに行くより安上がりと言われてさっそく心を奪われた私。
まさかのネカフェより安上がりなものがあるなんていいなとワクワクしながら聞いた。

システムはと言うと、女性と男性が別々の部屋で待機し、男性に声をかけれられるまで適当にくつろいで待つ(店によっては女性から声をかけることも)。
待ってる間はタダで店に置いてあるお菓子やジュースをつまんだり、備え付けのメイクアップ用品で身だしなみを整えたりできるのでお得。
相手に声をかけられた時は何回でも断れるので、気楽にマッチングできるとのこと。
マッチングしたら男性は成約料を払って店の外に出てデート開始。

とはいえ援助○際が常態化しているので、男性側は店側と女性側双方にお金を払ってデート援だとか売○をするのが不文律。
ちなみに女性側は成約回数ごとに数千円くらいのボーナスが出る店舗もある。

まあ、システムからして安全性は良いとは言えないw
誰ともマッチングしなければ特に危険な目には遭わないんだろうけれど……たぶん。

お金がかかるネカフェではなく完全無料の出会い喫茶へ

そこそこ暑くて汗が止まらない日だった。

その日は用事があって時間に余裕を持って外に出たはいいものの、むしろ集合時刻まで時間が余りすぎて途方に暮れていた。

ひたすら歩いてひまつぶしというか時間稼ぎしてるせいで汗に比例するように髪が爆発してきてる。
そろそろどこかに避難して汗と爆発と疲労を止めたい。

でも今日はお財布事情が厳しい。ネカフェ滞在費を出すのがキツいな。
そっか。最近お金使いすぎだったんだ、私。使い道考えなきゃ。
さすがに節約しなきゃだけど、待ち合わせの時間まであと3時間もあるし……

>>やっぱ出会い喫茶しかねえ!<<

近場にある出会い喫茶を検索すると数店舗出てきた。
ホームページを見るといかにもサブカルおじさんの好物が詰まってた。
知る人ぞ知る男のロマン醸し出されていて、ベストセラー本の「売春島」がリンク集にあったのが最高にキモくてエモい。

マッチングせずに居座ることも可能ならそこまでリスクは高くないし行くっきゃないね。
店に入る前に一旦次の電車を調べるかぁ。


店の入口の前でスマホをいじってるとどこかから声が聞こえてきた。

「…と…。ねえ…っと。ちょっと……。」

ん?なんやこのおっちゃん。客引きかな?

「ちょっとだけ……ちょっとだけだからカフェに…ら…だから。」

都会の雑踏の音に紛れてなんも聞こえんけど、さすがにここは無視よね。
さっさと店入ろ。

ふと店の入口のエレベーターに目を通すと、ビルオーナーの怨念がこもったのであろう強い語気の貼り紙が。
店の前で異性に声をかける奴は容赦しないし絶対そいつは不審者だという旨だった。

あっ……(察し)
まぁ出会い系な時点で当然ではあるけど、入口に来た時点でもう治安が良くないのね。

いざ入店

エレベーターから降り、消毒と検温を済ませてレジカウンターに向かう。

おっ……???

?????????????

あれは……

カウンター前にさっきのおっちゃんいるやんけ!!!
時々来てる客っぽい素振り!慣れた手付きで無料でもらえるもん全部かっさらってる!

あっ……(察し)

なにやってんのこのおじさん……

もらえるもんはもらった方がお得だろうし、その手際の良いケチ根性は好きだよ。気持ちはわかるけどさ。
でもこれは良くないって。あわよくば料金までケチって店の前で完結しようとするんじゃないよ。
タダで居座れる側の私が言うセリフではないけどさ。

そう驚いているうちに、おっちゃんは背後にいる私には気付かないまましれっと店の奥に入った。

私もそんな強心臓がほしい。
……いや、やっぱさすがに引くわ。そんなんいらん。

いざ受付カウンターへ

さっきのおっちゃんがやってた通りに私も消毒と検温を済ませる。
ちょうど店員は他の業務をしていたタイミングだったようで、一旦カウンター内で少し待つ。

カウンター内をぼんやり眺めてみると、出禁客と厳重注意客のリストがわかりやすいところに貼ってあった。
チラチラと視界の中に入ってしまうから気になってつい見てしまう私。

女性客が男性客から金を巻き上げたり女性客数人で結託して悪さをするパターンがやたらと目につく。
きっとパパ活(パパからカツアゲ)なんだろうなぁ。

バレないようにリストをチラチラ見ていたけれど、全部見る前にちょうど手が空いた店員が来てしまった。
とりあえず、初来店なので店員さんに店のシステムを教えてもらうことに。

まずは店のプロフィールカードに簡単な自己紹介と源氏名みたいな偽名を買いて店に提出するらしい。
「好きな〇〇(○の中は自由記入)トップ3」だとか「好きな異性のタイプ」「出身地」という項目を埋めていくうちに、小学生の頃熱心に交換していたプロフ帳を思い起こされる。

ちなみに、好きな〇〇の項目には酒の銘柄を書いた。
正直に言うと危険を省みるのを忘れてて、あわよくば新宿で酒を奢られたかった。

まさに平成中期のパリピ学生に舞い戻ったようなカードだ。
というか本当に今は令和なのかと錯覚しそうになるくらい平成中期要素しかない。

なんだか懐かしい。どこか無知で傍若無人でかっこつけたがりだった頃の自分の思い出。
それは、「一番ほしいもの」という項目に✝脳を改造する機械✝と大真面目に記入し、二度と同じ中学の人からプロフ帳をもらうことがなくなったあの日……

おっと、いかんいかん。
こんなところで懐かしい✝古傷✝がえぐられて物思いにふけりそうになってしまった。

それはさておき、次は別室で写真撮影をするようだ。
俺の疼く左手を押さえつけながら、店員の案内で女性客用のエリアにいざ参ろう。

えっ?顔面土砂崩れ状態でも受け入れてくれるスタッフがいるんですか?

どうやらさっき書いたカードを持って顔写真を撮影するらしい。
ほえー、ちょっと加工アプリをインストールし直すかぁ。

と、思っていたらカメラアプリを起動したスマホを片手に店員が手招きしてくる。

って、え、違う?店員がノーマルカメラで撮影して店のページにアップするん?
マ……?

そんな……。どうすりゃいいんだ私は。
私の顔面偏差値じゃノーマルカメラに耐えきれない。
自力で加工とスタンプでどうにかできないんならかなり厳しいぞ。

しどろもどろになった私にカメラを向ける店員。
うまく撮れないからか、困った表情でいろんな角度で連写し出している。

「うーん、もうちょっと下向いてー」
「うーん」
「ほんの少しだけ顎を上に上げて」
「うーん」

……結局、試行錯誤の上に目だけ出すことにした。

出会いを求める人たち

無事(?)撮影を終わった。
私の顔面偏差値とメンタルも終わった。

どうして人類はやたらと美醜に拘るのだろうか。(哲学)
そうして私は、無料でもらえたハーゲ○ダッツとジュースを貪り食いつつ、メイクを直しながら待機しているのだけれど……。

周りにいるのは、高いヒールに綺麗に巻かれた髪にホストクラブ帰りかのような服を身にまとっている女の子だけ。

しかもここには営業相手の男性がいない空間ということで、しぐさのひとつひとつにけだるげでキツそうなオーラが全開。女の園の攻防戦と似た得体の知れない緊張感に襲われる。


つまり。

私 だ け 完 全 に ア ウ ェ ー

い か に も な パ パ 活 女 子 し か い な い


どうして(絶望)
なんかもっと、こう、例えば素人系だとかギャル系とか他のジャンルの女の子はいないの?

私は、サブカルクソジジイがうごめくアウトローな場所だと思って安心しきって素人系っぽい服装で来たというのに。
他の女の子との落差が激しくて私だけすごいみすぼらしい女になっちゃってるよ。

どうして。どうしてここだけ港区女子まみれの空間になっているの。
どうしてみんなブランドバッグを持ってるの。
どうして……

はあ、とりあえずトイレ行ってこよう。

あ、トイレに生理用品が常備されてる。良心的だなぁ。
「生理用品や備品を勝手に全部かっさらうのはいい加減やめよう(意訳)」「男性客への詐欺行為はやめよう(意訳)」とかいう注意書きがあるけど、そんなに品の悪い女の子が多いのか?

結局ビビって逃げた先のトイレには、追い打ちをかけるように治安が悪い地域特有の貼り紙にまみれていた。

普段からホストとおじさん相手に新コロポジ種激ヤバセックスしてそうな強いオーラを放つ面々しかいないし、もういろいろと察してしまった。

もう帰ろう。
待機中はマスク禁止というルールがある上にこの面々とかハイリスクすぎる。
私はまだ死にたくない。

そうして私は待機エリアでは10分もしないうちに帰ることにした。

タダがいかに怖いものか思い知らされた日だった。

―終―


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