見出し画像

2024.03.18- 白糠高校との授業連携(環境鮮麗学および総探)報告(2024.02.09実施)

白糠高校では、今年度より「身の周りにある環境について、その課題を発見したり、解決策を考えたりする『環境鮮麗学』という独自の授業を開始しました。アシルトイタ拠点では、一次産業を取り巻く環境について地域の若者達が深く理解することも重要と考え、そのサポートを行なっています。白糠高校では以前より総探の時間の中で、海洋漂着ごみを収集分析してきました。今回、白糠高校との連携の中で、海洋漂着ごみに関する学習を深めたいというご要望があったため、本学クリエイティブコラボレーションセンター災害廃棄物リサーチラボの吉田英樹先生にご協力いただき、「海洋漂着ごみ環境調査実習」を実施いたしました。以下、吉田先生からの報告書になります。(徳楽)

2月9日白糠高校での室蘭工業大学COI-NEXTプロジェクト報告

室蘭工業大学COI-NEXTプロジェクトでの白糠高校の教育(鮮麗学および総探)のサポートを下記のとおり実施しましたので、ご報告いたします。(吉田)
 
(1)実施概要
●日時:2024年2月9日(金)10:00~13:00
●場所:白糠高校
●実施内容:白糠高校1年次の皆さんの「海洋漂着ごみ環境調査実習」に関する調査結果及びプラスチックごみ全般に関するグループワークの報告、「ごみのゆくえ~プラスチック廃棄物をどうするか~」に関する吉田からの話題提供
●参加者:白糠高校1年生18名、白糠高校教諭、白糠町地域教育コーディネーター入川暁之様、白糠町教育委員会
 
(2)グループワーク報告 10:45~11:30
 ●発表 4グループ 18名
 テーマ:①プラスチックプラネット、②ごみのゆくえ、③プラスチックの生物への影響、④プラスチックの規制、⑤プラスチックとつきあう
 ●発表概要:
プラスチックプラネット 用途、なぜ使われるのか、何でできているのか、プラスチック利用の課題(資源の浪費、海洋ごみ、CO2の発生など)
ごみのゆくえ どのくらい捨てられているか、プラスチックごみはどこにいくのか、サーマルリサイクルはなにか、行方不明のプラスチックはどこに行くのか
プラスチックの生物への影響 微粒子で海や川に出て行く、分解せずに環境中に400年近く残留する、知ることの大切さ
プラスチックの規制 循環型社会形成推進基本法という法律、アメリカカリフォルニア州のプラスチック使用規制、プラスチック製品の代替物を使う取り組み
プラスチックとつきあう 作る側・売る側・使う側の立場の違い、対策にはコミュニケーションが大切(住民同士やポスターでの啓発)、高校生としての取り組み(学校での分別促進、海浜清掃ボランティアなど)
 ●質疑・意見:
・プラスチックがナフサから作られていることまでよく調べている
・燃やすとCO2が出るのはどの程度問題か
・行方不明のプラスチックは誰が捨てたものか(微粒子のプラスチックはあらゆる製品に含まれている)
・プラスチックの分解はとても長い年月がかかり、単に微粒子になって見えなくなっているだけのものもある
・欧州では包装材料へのプラスチックの規制はとても厳しい
・外出した際に出るごみは持ち帰ろう(野外で集められたごみは飛散しやすい)
・「海洋漂着ごみ環境調査実習」を体験した生徒さんの視点でのグループワークなので、内容が非常に詳しく、対策まで十分考えている
 
(3)話題提供 11:45~12:35
 ●発表 室蘭工業大学吉田英樹
 テーマ:「ごみのゆくえ~プラスチック廃棄物をどうするか~」
 ●発表概要:
私たちが出すごみのゆくえ 
家庭や産業から出るごみの処理処分
 一般廃棄物と産業廃棄物の違い(漁業のごみは産業廃棄物)、一般廃棄物は市町村・産業廃棄物は排出事業者が責任を持つ。
 白糠町では住民1人1日968グラムのごみを出していて、室蘭の1198グラムより少ない、焼却処理施設で全体の80%は燃やされている。リサイクルは20%くらい。
産業廃棄物は一般廃棄物の10倍の年間4億トンが排出されている。
プラスチックごみのゆくえ 
日本全体で約800万トンのプラスチックが廃棄物となっていて、利用率は87%で、63%はサーマルリサイクルで、マテリアルリサイクルは22%とやや低い。材質はポリエチレンが3%、プロプロピレンが24%である。この結果は、「海洋漂着ごみ環境調査実習」で多かったプラスチックの成分と一致している。サーマルリサイクルは環境に排出されるCO2を減らす効果もあるので、日本では積極的に行われている。ただし、プラスチックリサイクル率は現在やや停滞している問題がある。
プラスチックごみ問題への対策として、1)使用量を減らす、2)排出されたものを回収して利用する、3)環境に出てしまったものを回収する、というものが主となる。特に白糠高校の皆さんが、3)に関する取り組みをしていることは非常に素晴らしく、そのような経験をしている人は1)や2)への取り組みも積極的になると思う。
欧州の特徴的な取り組みとしてデポジット制(預かり金)がある。これは欧州のスーパーでは容器を使う製品には預かり金が付加されていて、スーパーの返却機械に戻すとお金が戻ってくる仕組みであり、日本もガラスびんについては行っているが、空き缶やペットボトルでは行われていない。ごみになりやすいワンウェイ容器の預かり金を高くするようなこともされており、環境への意識が自然に高まる仕組みでとても事例で、このようなしくみを日本でのプラスチック製品販売にもできないか、皆さんも将来考えてみてほしい。

(4)参加した感想とお礼
 今回の白糠高校での室蘭工業大学COI-NEXTプロジェクトでの訪問はたいへん有意義でした。生徒の皆さんが「海洋漂着ごみ環境調査実習」という海浜清掃をして、200kg近いごみを集めて、それらを分類して、さらにプラスチック問題にグループワークで考えるという取り組みは素晴らしいものでした。ごみ問題は体験からスタートすると、非常に有効に取り組みになるというのは私がこれまで考えていたことですが、高校1年生の生徒さんがプラスチック問題を身近なモノ、そして海洋環境に大きな影響を与えている点を深く考え、その結果をグループワークで発表して、お互いの考えを交換しあうという点で大きな成果を上げておられることを体験させていただきました。
 本学の環境教育でも、体験からスタートするグループワークは学生にとっても興味と知識が深まることを生かせないか、私が考えるきっかけになりました。
 最後に今回の訪問でお世話になった、白糠高校1年生18名の皆さま、白糠高校教諭の皆さま、白糠町地域教育コーディネーター入川暁之様、白糠町教育委員会の皆さま、そしてコーディネートをいただいた室蘭工業大学COI-NEXTプロジェクトの皆さまに深くお礼を申し上げます。

授業の様子
授業の様子
授業の様子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?