プー太郎日記 その5「階段の上の雲」

2019/10/06

今朝は雨だった。

日課の散歩に出る気にならず、洗濯などして過ごす。
本来は洗濯も雨の日にするものではないが、毎週日曜日に一週間分の洗濯をするのが生活サイクルになっているので止むを得まい。無論、部屋干しである。

午後になって、いつの間にか雨が上がっていることに気が付いた。実際には昼を跨ぐ前に上がっていたのかもしれない。道路が乾き始めていた。

散歩に出ることにした。
昼下がりの眠気が鬱陶しかったのだ。

ルートもいつもとは逆にしてみる。いつもの道なのに、全く違う景色に見えた。今日が日曜日で時間も午後であるというのもあって、人通りも全く違うので新鮮である。

英検か何かあったのか大学の方面から歩いてくる何組もの母子。小さな公園で少人数サッカーをする男子大学生(高校生かな?)。セグウェイで散歩する中学生くらいの少年(ちょっとビビった)。仲睦まじくウォーキングする初老の夫婦。石段に座り込み音楽を聴いている外国人......

とにかくそこら中に人がいて、ああこれが日曜日の午後なんだなと実感するとともに、この日ばかりはプー太郎の自分も何となく許されているような感じがして、ぼんやりと後ろ暗い気持ちが和らいだ。

ふと、足を止める。

目の前に長い階段が続く。そうだ、いつもは何となく下っている階段が、今日は上りになるのだ。上から見ると景色もよく、散歩コースの中でもお気に入りポイントなのだが、下から見ると絶壁である。遠いなあ...
思わず立ち止まって見上げてしまった。

そして、おやっ、と思う。

見上げた階段の向こう、視線の先の遠い空に大きな雲の塊が浮かんでいた。

厚い雲の塊は日光を遮って輪郭を光らせている。実際にはそんなことはないと思うが、僕には空を見上げること自体が随分と久しぶりであるように思えた。

秋雨上がりのしっとりとした空気に、大きな雲の光彩が映える。

いいものを見た、と思った。

まあ、本当のところを言うと、雲の下側三分の一くらいは手前のアパートに隠れていたのだけど。ちょっと表現として大げさかなって気もするけど、きっと僕の心がそこから何かを感じたかったのだろう。だからこれでいいのである。

すなはち、
働いていなくても、日曜日はいいものだ。

そういうことだ。

もちろんその後、僕はヨチヨチと階段を登りましたとさ...
めでたし、めでたし。

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