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水気

 手の平の水分の無さを日に日に感じる。指を舐める老人の気持ちが分からなくもなくなったが、それはいかんでしょうと思う。ちゅぱちゅぱ指しゃぶって、しがんで、ねぶって、そんな風に育てた覚えはないんですからね! そう言った母の顔を思い浮かべる老人。しかし母はもうとっくに他界。孫を高い高い。お袋さんよ、わしはもうお爺ちゃんになりくさってしまったよ。しかし老人の思い浮かべるあの頃の母の姿は若く、主婦。老人よりもずっとずっと若く、そんな母をとっくに追い抜いてしまったのだと思う老人だが、あの頃の老人も幼気な子供。そして遡行、赤ん坊。おしゃぶりをちゅぱちゅぱしゃぶって、しがみねぶり、よくよく考えたら子供になってもチュッパチャプスの類をしゃぶしがねぶり。大人になっても女の乳首をしゃぶしがねぶり。そしたらばよくよく考えたら遡行、おしゃぶりだけでなくお袋さんの乳首をしゃぶしがねぶる赤ん坊がいる。その母は思い浮かべたあの頃の母よりももっと若く、美しく。そして老人は今指をしゃぶる。そして後日蒟蒻ゼリーを喉につまらせて死ぬ。

閲覧ありがとうございます。サポートなんてして頂いた日にはサンバを踊ろうかと思います。