ボカロオルタナティブって何なんだ?~2023冬~
みなさんおはようございますこんばんは。
2023年ボカコレ夏デビュー組のあじあでございます!
2023年12月1日にアンチボカロオルタナティブ投稿祭2023冬というイベントが行われました。そこに参加して思ったことをここに書き残しておこうと思います。
※以下、個人の意見が多分に含まれています!
クレーム・批評など総じて受け付けますが残念ながら筆者よりもこれを見ている皆さんの方がオルタナへの理解度は高いものと予想されるため、返答は「ごめんなさい」の一辺倒になると予想されます!!!
「ボカロオルタナ」への疑問
わたしの中でボカロ界隈で「オルタナ」という言葉をよく耳にするなぁとは思っていました。
今回このnoteでは「オルタナ」を「オルタナティブロック」の略称と定義して話を進めたいと思います。
まずそもそも「オルタナ」とはなんなのか。
ということでどちらかといえば「インディーズ」とか「アンダーグラウンド」という言葉で形容されるようなロックをやっている人たちの総称というイメージでしょうか。よく代表的なアーティストとして紹介されるのは以下の通り ※個人の意見です!
高らかに歌い上げる当時のメジャーロックシーンを逆行するような「けだるさ」と「サビでの爆発」の2面性はメジャーのロックでもなければパンクでもないなにかだった。(と思う)
まるでサンプリングしたようなドラムに浮遊感漂うギター。アンビエントと呼ぶにはあまりにはっきりしすぎたドラムに、シューゲイザーと呼ぶにはクリーンすぎるギター。これこそオルタナと呼ばずになんと形容すればいいかわからない(と思う)
以上がオルタナティブロックを語る上でおそらく欠かせないであろう2つのバンドだ。これらはポップスに比べると非常に前衛的かつ商業的にも大衆に受け入れられた稀有なバンドなと筆者は認識している。
筆者なりにすごく乱暴な説明だが、ポップスに比べてオルタナは以下のような特徴があると思っている。
【音楽的特徴】
・歪んでいて攻撃的
・複雑なコード進行
・派手なフィルやブレイク
・ギター・ベース・ドラムを中心としたバンド編成
・変拍子やポリリズム
・イントロABサビといったポップス的楽曲展開との隔離
・ラップやジャズやHIPHOPなど他の音楽ジャンルとクロスオーバーする
【歌詞的特徴】
・病んでいて何かを批判しがち
・「衝動」や「不安や苛立ち」など自分の内面と向き合いがち
・時には「哲学的」な悟りな歌詞になりがち
以上が「オルタナだ」と認識していた筆者からすると、
広い目で見ればボーカロイドという音楽シーンそもそもが、ポップスというメインストリームに対する「アンダーグラウンド」であり「インディーズ」。つまりは「オルタナ」みたいなもんなんだと思っていた。
なぜなら筆者はここ10年ほどボーカロイドを全く聞かなかったのだ。
なのでボーカロイドシーンにおけるオルタナティブロックの立ち位置は一般的なオルタナティブロックと同様で
①ロックと別のジャンルが混ざり合うもの
②従来のロックに当てはまらない「新しいロック」
のことだと思っていました。恐ろしく乱暴ですが図解すると以下の通り。
※1 今回はオルタナティブロックを中心に考えていますのでロックが真ん中にあります
※2 ロックというものを恐ろしく大枠でとらえています。突っ込まないでください。
食べ物に例えると今の段階でのオルタナは「トムヤムクンラーメン」くらい尖った存在でした。好きな人は好きだけど、興味のない人は見向きもしません。
疑問の肥大化
そして11月18日にあったのがこちらのツイート
オルタナが表舞台に見つかる。
ここで筆者に「え?ボカロにはオルタナっていう独立したジャンルがあるの?」という巨大な疑問が誕生。
くりたさんが悪いとか批判とかそういう文脈ではありません!そこだけ誤解しないで!炎上したくない!やめて!
どうやらニコニコ動画、ボーカロイドという音楽シーンにおいて「オルタナ」という言葉はここ2年ほどで勢力を拡大し、1大ジャンルとなったらしい。フムフム
そうなるとオルタナティブのそもそも意味である「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」という文脈から考えるとボーカロイドシーンにおけるオルタナティブロックの解釈は先ほどの図とは違い、どこかに独立して存在しているのだと理解する。
そして「オルタナティブミック」タグを聞き漁った結果、ほとんどのボーカロイドという音楽シーンにおける「オルタナ」にはギター・ベース・ドラムのいわゆるバンド編成で構成されており、これはロックというジャンルに内包されていることがわかった。
そしてさらにポップスや変拍子やら電子音楽をたくさん含んだ独自の進化を遂げている。
つまり筆者の「ボカロオルタナティブ」はこうアップデートされた。
食べ物に例えるとこの段階でのオルタナは「麺類」くらい大区分の存在になってしまった。もはや「麺類食べに行こ?」って言っても話が大きすぎて何のこと言ってんだかわかんねえよ!とツッコみたくなるレベル。
そして筆者の中で「ボカロオルタナティブってなんぞや?」という気持ちが肥大化していった。
アンチボカロオルタナティブ投稿祭2023冬がやってきたぞ!ヤーヤーヤー!
そんなモヤモヤのなか11月27日、N●ileさんがX(Twitter)上でアンチボカロオルタナティブ投稿祭2023冬を提示する。
おそらくN●ileさんもオルタナという言葉の意味が大きくなっていることに疑問を持っていたと思う。そのマインドには筆者も大きく賛同したため作品を作ることにした。投稿祭までタイムリミットは4日。
アンチといえば言葉は強いが決してオルタナを否定したいわけではない。むしろオルタナとは何かを探す旅に出たといってもいいだろう。
※主催者のN●ileさんの熱い思いは以下のnoteに記載されておりますのでどうぞ。
アンチオルタナティブとは何なのか?
そこで作品を作ることにしたのだが最初に行ったのは「アンチオルタナティブとはなにか?」という疑問の解消であった。
そもそも「オルタナ」というものが先述の通り「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」のため何かに取り替わっているということのはずだった。
とりあえずボカロ界隈のメインストリームであるポップソングを選定した。それがこちら
メルトである。主語は大きければ大きいほどいい。
そしてこれに対してのオルタナティブという作品は以下のようなものと定義した。一部抜粋する!
シューゲイザーやポストロックの文脈をしっかり受け継ぎつつ、ポエトリーリーディングを取り入れた情緒の表現はオルタナティブだと思った。
変拍子と感情が爆発するようなサビでの複雑な感情表現が見事で、変拍子をなぜ使うのか?作者の嗜好以上に作品に活かせているのが素晴らしいと思った。
とにかく歪んだビートに浮遊感漂うオケはポップスともアンビエントとも形容できない。そして曲が進むにつれて激しくなっていくオケも感情表現もすべてがオルタナティブという言葉にぴったりだと思った。
以上のようなものをボカロオルタナティブだと定義したうえでアンチボカロオルタナティブ投稿祭2023冬に投稿する作品には2つの選択肢があった。以下の通り。
①オルタナティブの反対に当たるような王道ポップソングを作成する。
(つまり第2のメルトを作るってこと)
②オルタナティブでもなければ王道ポップソングでもない「何ものでもない何か」を作成する。
色々悩んだ結果、②「何ものでもない何か」を作成することにした
何ものでもない何か「No Categorize」
よくあるボカロ曲とよくあるボカロオルタナティブ曲にある以下の要素を排除して曲を作成。
・歪んでいて攻撃的
・複雑なコード進行
・派手なフィルやブレイク
・ギター・ベース・ドラムを中心としたバンド編成
・変拍子やポリリズム
・イントロABサビといったポップス的楽曲展開との隔離
そうして出来上がった「何ものでもない何か」がこちらの作品
耳に残るリフもなければ口ずさめるようなメロディーもない。
なんともつまらない作品になった。だからといってアンビエントのように安心して聞くにはちょっと不安定。一度提示したテーマとメロディーはそのフェイズが終わったらもう出てこないしそう意味ではクラシック的ではあるかもしれない。
とりあえずこれを投稿予約した。
アンチボカロオルタナティブ投稿祭2023冬開幕
12月1日、5曲の作品が投稿された。どれも個性的でジャンル分けすると人によってジャンルが別れてしまいそうなものばかり。
わたしがぐっと来てしまったのは主催者N●ileさんの以下の作品。
クロスフェードかと勘違いするほどの曲調の変化…割れまくったギターの音色…これはもう「オルタナ」としか形容できないではないか!結局アンチボカロオルタナティブとか言っていたのはどういう意味なんだ!と思いつつ、もしかしたら「ボカロオルタナティブ」と「アンチボカロオルタナティブ」は非常に近いところにあるのではないかと考え始める。
そして先ほど公開した「No Categorize」をどうにか「オルタナ」に昇華できないか?と模索してみることにした。
何ものでもない何かからオルタナへ
「No Categorize(オルタナver)」
ということでポップになりすぎない程度に以下の要素を取り戻し、私の考える「オルタナ」へセルフカバーを行った。
オルタナverにするにあたって取り戻したのは以下の要素
・複雑なコード進行
・派手なフィルやブレイク
・ギター・ベース・ドラムを中心としたバンド編成
・変拍子やポリリズム
・イントロABサビといったポップス的楽曲展開との隔離
そこで出来上がったのがこちら!
多少無理はあったかもしれないが「何ものでもない何か」も無事に「オルタナ」に昇華できた気がした。どの音楽の隣にはきっと「オルタナ」がいるということだ!
こうしてわたしの「オルタナとはなにか?」をめぐる冒険(約1週間)はおわった。
結論として、ボカロ界隈のオルタナティブという言葉はギター・ベース・ドラムが入ったバンド編成であとは非常に広義にわたるというふうに理解した。つまりボカロオルタナティブとはこういう概念だとわたしは結論付けた
!
どのジャンルとも隣り合っていてどのジャンルにも行き来できる。「ボカロオルタナティブ」とはめちゃくちゃ十人十色の音楽ジャンルなんじゃないかという結論に至った。
めちゃくちゃな速弾きも、
風呂場みたいなリバーブとディレイも、
轟音のパワーコードも、
すべて「オルタナ」として肯定されるべきなので12月9日‐10日に行われるボカロオルタナティブ祭2023冬でみなさんの「オルタナ」を聞けるのが非常に楽しみです。
ボカロオルタナティブ祭2023冬のTwiPlaを見たら以下の記載がありました。
きっと主催のArohさんも同じ気持ちで「ボカロオルタナ」をとらえていると信じている。
みなさんの渾身の「オルタナ」楽しみにしています。めちゃくちゃコメントしに行きます。覚悟しててください。
ボカロオルタナの未来
とにかく今流行りまくって勢いのあるボカロオルタナですが、筆者は近い将来廃れてしまう言葉なのではないかと思っています。
というのも今、ボカロオルタナはあまりにも風呂敷を広げすぎているからです。
最初はボカロオルタナといえば「トムヤムクンラーメン」くらい尖ったジャンルで愛好家たちはそのワードで好きなものにもいくらでも出会えました。
しかし今はボカロオルタナがあまりにも多様化しすぎたことで「トムヤムクンラーメン」が「麺類」くらい大雑把なジャンル分けになってしまいました。
これはかつてBUMP OF CHICKENも、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTも、ASIAN KUNG-FU GENERATIONも、凛として時雨も。
全部まとめて「ロキノン系」といわれていたころに似ている気がします。
そうなるとジャンル分けとしての意味はほとんどなくなり、最終的にはバンド名=ジャンルみたいな世界に突入すると思います。そうしてボカロオルタナという言葉は廃れていく…
きっと2‐3年後にはボカロオルタナという言葉ではなくボカロオルタナ界隈から有名Pがたくさん輩出され、ryoさんやDECO*27さんのように「名前が音楽性を表す」ようになるといいですね!いや、きっとそうなる。
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