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「地に墜ちた衛星」劉子超

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中国のノンフィクション作家・劉子超による中央アジア旅行記『失落的卫星』(2020年)の翻訳です。同作は中国で豆瓣2020年ノンフィクション部門第1位に輝き、第6回単向街書店文学賞…
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記事一覧

地に墜ちた衛星 #20=完 劉子超(ノンフィクション作家)

 旅の終わり ジャルケント:進歩の前哨基地 1  二〇一〇年夏、僕は記者としてコルガスを…

地に墜ちた衛星 #19 劉子超(ノンフィクション作家)

セミレチエ地方 1  僕は一向に変わらない草原の風景に飽き飽きした。セメイからアルマトゥ…

地に墜ちた衛星 #18 劉子超(ノンフィクション作家)

草原の核爆発 5  解説員は、僕に展示の説明をする間、何度も時計を確認していた。何か急い…

地に墜ちた衛星 #17 劉子超(ノンフィクション作家)

草原の核爆発 3  旅行会社から出てきて、僕はほっと息をついた。まだセメイの街を散策でき…

地に墜ちた衛星 #16 劉子超(ノンフィクション作家)

草原の核爆発 1  朝、バーブルは僕をテュルキスタン駅まで送った。昨晩、彼は酒をかなり飲…

地に墜ちた衛星 #15 劉子超(ノンフィクション作家)

テュルキスタンの小人物 3  僕はできるだけ早くシムケントを離れるつもりだったが、しばら…

地に墜ちた衛星 #14 劉子超(ノンフィクション作家)

第五部 カザフスタンテュルキスタンの小人物 1  中央アジアを漫遊する日々で、僕はかれこれ四度、アルマトゥイを出入りしていた。旅路の中で、この街は終始、宿駅の役割を果たしていた。ここで、僕はつかの間の安息を取ることができた。旅の目途を立て、メモのディテールを補い、ついでにいくつかの素敵な小さいレストランをめぐる。  僕が目にした中央アジアのほとんどの地域は、いまだに歴史と宗教的伝統の深みに足元を奪われ、なおかつ地政学と民族主義にとらわれて、グローバル化に踏み出せないでい

地に墜ちた衛星 #13 劉子超(ノンフィクション作家)

  アラル海を守る人 3   アラル海を目指して北上を続ける途上で、最後に現れる街がカラ…

地に墜ちた衛星 #12 劉子超(ノンフィクション作家)

アラル海を守る人 1  ブハラを離れると、緑は少しずつ薄くなり、間もなく僕はキジルクム砂…

地に墜ちた衛星 #11 劉子超(ノンフィクション作家)

失われた心を求めて 4  チョルスー・バザールの外の大通りにはかつて多くの両替商がひしめ…

地に墜ちた衛星 #10 劉子超(ノンフィクション作家)

第三部 ウズベキスタン  失われた心を求めて 1  旅は自分たちが思っている場所からはめ…

地に墜ちた衛星 #9 劉子超(ノンフィクション作家)

ドゥシャンベのポリフォニー 4  二十一歳の幸運はひょろりとしていて、顔にはニキビ跡があ…

地に墜ちた衛星 #8 劉子超(ノンフィクション作家)

第二部 タジキスタン ドゥシャンベのポリフォニー 1 〝ドゥシャンベ〟とは、タジク語で〝…

地に墜ちた衛星 #7 劉子超(ノンフィクション作家)

鄧小平通りとスライマン=トー聖山1 〝オシに行っちゃダメ〟――僕は折に触れてアリサからの警告を思い返していた。彼女自身はオシに行ったことはない。僕がビシュケクで知り合った友人の中にもオシに行った人はいなかった。 「どうしてオシに行くの?」。僕が今後の旅の予定を話せば、相手は必ず怪訝な面持ちでそう訊ねる。その度に僕は素朴な気持ちでこう訊き返したくなる。「どうしてオシに行ってはいけないんだ?」  どんなところにでも行ってみたいと思うのは旅人として自然なことだ。何故オシだけが