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Withコロナ時代の北海道ビジネス入門⑤「<オオカミの桃>と思い出ノートの街」@鷹栖町・農業振興公社&老人会

トマトのラテン語学名を商品名に
 JR有楽町駅前の北海道どさんこプラザ有楽町店に立ち寄ると、濃縮トマトジュース「オオカミの桃」を買います。美味しさもさることながら、「オオカミの桃」のネーミングが素晴らしいからです。トマトのラテン語の学名を直訳して「オオカミの桃」。鷹栖町(たかすちょう)農業振興公社が1986年から本格的に販売を始めているのでかれこれ34年になります。鷹栖町は北海道のほぼ中央に位置する人口6782人の農業の街。「オオカミの桃」とともに、良質な道産米「ななつぼし」の産地としても有名です。
「思い出」つづり脳を活性化
 「オオカミの桃」以外にあまり鷹栖町のことは知らなかったのですが、最近になって関心を持ったのは同町の老人会(約600人)に財団法人・認知症予防財団が監修した「思い出ノート」(毎日新聞社発行)が配布されたからです。「思い出ノート」は100の設問で誕生から幼少期、学校、仕事、友達、家族関係など自分の人生の記録を書くことができます。「思い出」つづり脳を活性化するわけです。私は北海道オホーツク海沿岸にある実家に高齢の父母がおり、「思い出ノート」を活用すれば、認知症の予防になると考えていましたから、鷹栖町の町ぐるみの取り組みには敬意を払っています。
ブランディングのセンス光る
 「思い出ノート」の採用は谷寿男町長の発案だったそうです。谷氏は1985年に同町役場に入庁したのでそのキャリアはそのまま「オオカミの桃」の歴史に当てはまります。鷹栖町がネーミングとブランディング、そしてPRのセンスの良さが光るのは、もともとは蛇の生息地で「蛇山(べびやま)」と呼ばれていた町の西北部に位置するシーキウシナイ山(標高299.5m)の南側にひらけた山麓一帯を“四季折々に自然の変化を生み出す丘”という意味の「パレットヒルズ」と名付けて観光資源にしたことからもうかがえます。谷氏は2012年に町長に就任し、10月13日告示の町長選で無投票3選を果たしました。
先進的なCCRC(高齢者地域共同体)構想
   鷹栖町は中核都市、旭川市に隣接するベッドタウンの顔も持っています。北海道のどこよりも早くに地方創生策として鷹栖町版CCRC(高齢者地域共同体)構想を打ち出し、町の農村部の高齢者を市街地に移し、そこの空いたところにスローライフを希望する若い人を移住させる施策を進めています。
 「鷹栖町は旭川空港まで車で40分、札幌まで1時間半で行ける好立地にある。首都圏など都会の方々は距離軸よりも時間軸で考える。コロナ禍で過密から過疎へと人の動きが変わってきている。ピンチはチャンスです」。
   こう語る谷町長の言葉には、コロナ時代のテレワークなどの働き方を見据え、都会からも人を呼び込もうとするまちづくりの青写真が描かれているように思えます。


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