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Withコロナ時代の北海道ビジネス入門①「無念の摘み取り<チューリップのひとり言>」@湧別町・かみゆうべつチューリップ公園

   北海道湧別町はオホーツク海とサロマ湖に面した漁業と酪農を中心とする人口約9,200人の街です。5月1日から6月上旬までチューリップフェアが開催され、大勢の来園者が訪れます。しかし、今年はコロナの影響で、チューリップフェアは中止され、見ごろとなった239種約70万本のチューリップが全て摘み取られました。私の故郷の出来事であり、コロナの影響が全国津々浦々まで及んでいると実感しました。

観光行政の中心 春だけでなく半年ぐらい楽しめる公園を再構想
 湧別町のホームページには<チューリップのひとり言>がアップされました。
「わたしは、チューリップ公園のチューリップです。今年はコロナという悪魔が突然舞い降りてきて、世界中の人たちに迷惑をかけています」
「来年は悪魔をやっつけて、公園で皆さんと笑顔でたくさんおしゃべりをしたり、ふれあったり楽しい時間をつくるんだ。今年の分まで一生懸命咲くから、皆さん、私たちチューリップと公園をたくさん、たくさん応援してね。今年はほんとうに、ごめんなさい」 
  ひとり言の主は、長くチューリップ公園に関わってきた石田昭廣・湧別町長。自分で言葉をつづり、チューリップの気持ちを代弁しました。極めて易しい言葉づかいである分、余計に石田町長の無念の思いが伝わってきました。
  北海道は首都圏、関西圏と並んで、コロナの感染被害が大きかった地域です。観光シーズンに入っても、北海道へのインバウンドは皆無の状態であり、地域経済は疲弊しています。
 こうした状況を石田町長はどう考えているのか。私は町長に書面インタビューしました。
 ――無念の摘み取りになってしまいました。
 「フェアの中止、閉園の告知は終わっておりましたが、公園に花がきれいに咲いていれば、国道などに車を止め、多くの方が訪れることが予想されます。これらを解決するには、公園から花をなくするしか方法がないとの結論に至りました。本当に苦渋の決断でした。その思いが<チューリップのひとり言>になりました」
 ――来年以降のチューリップ公園をどう考えますか。
 「チューリップ公園は湧別町の観光行政の中心です。いかんせん、皆さんに楽しませる期間は5、6月の2カ月ほどしかありません。(来年以降は)せめて冬期間を除く半年ぐらいは、皆さんに楽しんでいただける公園にしなければいけないと思っています」

「テレワーク」で大企業と地方のつながりの可能性
 ――今回のコロナ騒動で地方はどう対応すべきと考えていますか。
 「私たち地方は、人口減少・少子高齢化の状況は待ったなしです。それらの課題解決に向けて不可欠なのが、交流人口の増・外貨獲得・貨幣の町内循環です。そのためにも基幹産業の振興、地域観光の確立、地域経済の自立に向けて取り組んでいます。今回のコロナ騒動で各企業が取り組んだ『テレワーク』を見て、私たち地方にとっても大企業と地方のつながりの可能性を見つけられました」

 湧別町は全国に先駆けて国の「特定定額給付金」10万円の給付手続きに踏み切り、NHKの全国ニュースで取り上げられました。
 「私は、コロナにかかる国としての対応すべてスピード感に欠けると思っていました。そんな時、『特定定額給付金』の事業実施主体が湧別町になったことから、私の責任で給付できるため、湧別町民には国が遅れた分、一日でも早く手元に届けたいとの思いから、私の専決処分にて補正予算を計上し、給付事務を進めました。この結果、(5月18日)現在、町民の95%の方に給付を終えています」

 私は連載しているWithコロナ時代のアジアビジネス入門で「『安全』な日本へ中国人観光客が必ず訪れたい理由」を書きました。中国人にとって、とりわけ、北海道は最も訪れたい観光地の一つです。「今年はほんとうに、ごめんなさい」の<チューリップのひとり言>を来年こそ、「ほんとうに、ありがとう」に変えるため、北海道の各地で自分なりの思いを持って頑張っている方々を応援するため、そして、北海道経済再生のため、Withコロナ時代の北海道ビジネス入門を連載をスタートします。

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